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Boz Scaggs「Moments」(1971)

ボズ・スキャッグスが60年代後半に高校・大学の同級生だったスティーヴ・ミラーのバンドに在籍していたことは有名な話。そしてボズは同バンド脱退後、1969年にソロデビューを果たします(ボズは1966年にスウェーデンのレコード会社からアルバムを1枚発表してますので、こちらはセカンドということですが、ファーストは本国米国では未発売なので、やはりこちらが実質的なファーストということです)。このソロデビューは、ローリンズストーン紙の編集長がアトランティックに口添えしたことが契機となったようです。

ということでこのファーストはアトランティック・レコードから発売され、かつマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで録音された筋金入りのサザンソウルなサウンドでした。そして次に発表されたアルバムが今回ご紹介する「Moments」。アトランティックが居心地が悪かったのか、もしくはサンフランシスコに拠点を移したかったのか、CBS移籍後の第一弾となったアルバムでした。

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新たなスタートを切るような象徴的なジャケットが素晴らしい。プロデュースはスティーヴ・ミラー・バンドを手掛けたグリン・ジョンズ。グリンはこの後、イーグルスを手掛けることとなります。
バンド・メンバーは当時のベイエリア界隈で活動していたミュージシャン達。キーボードにはスティーヴ・ミラー・バンドでも一緒だったベン・シドラン、パーカッションにはサンタナにも参加していたコーク&ピート・エスコヴェード兄弟が参加。他、ゲストにジョン・マクフィーがスティール・ギター、リタ・クーリッジがコーラスで参加。こうしたゲストからも想像できるように、本作はサザン・ソウル一辺倒のサウンドではないんですよね。後のAORのボズを彷彿させるような仕上がりになっております。④⑥⑨以外はすべてボズの自作曲。

オープニングから軽快なナンバーの①「We Were Always Sweethearts」。
ラスカルズの流れを汲むようなブルーアイドソウル。サザンソウルというよりも、やっぱり所属していただけあってアトランティック・ソウルの香りが凄いですね。
このアルバムからの当時の映像はないかなあと思ったら、有りました!
ホーンを従えた豪快なバンド・サウンド。かなりグルーヴを感じさせる演奏ですね。長髪のボズ、そして華麗なボズのギタープレイにも注目。

②「Downright Women」はなんとボッサです。上の映像の長髪スタイルのボズからは想像出来ないようなオシャレなサウンド。
ドラムは完全にボサノバスタイルのリズムをキープしてます。アクセントのように鳴り響くヴィブラフォンはベン・シドランのプレイ。もともとR&Bが大好きだったボズも、ベースにこうした洒落たサウンドの好みがあったんですね。この曲なんかは、後のAORサウンドを彷彿させるものを感じます。

③「Painted Bells」は悶絶しそうなスウィート・ソウルです。
イントロから甘味なストリングスが…。ボズの決して力強いとはいえないソウルフルなヴォーカルが、こうした曲にはピッタリ合ってます。メロディも素晴らしい。このアルバム、①~③の流れがあまりにも素晴らしいですね~。

アルバム・タイトルの⑦「Moments」も素晴らしいバラードです。
この曲を象徴するようなリタ・クーリッジのコーラスがまた素晴らしい。この曲のサウンド・プロダクションは壮大なイメージを持ちますが、このコーラスが大きなポイントですね。ちょっとゴスペルタッチなリタの唄法が光ります。

R&Bが大好きなボズらしい楽曲が⑧「Hollywood Blues」。
R&Bフィーリング溢れるダイナミックなナンバー。こういう音楽はやっぱりライブですね。ちょうどライブ音源があったので、そちらをアップしておきます。

エンディングはインストナンバーの⑩「Can I Make It Last (Or Will It Just Be Over)」。
ちょっとオリエンタル・タッチなアレンジ。当時はまだ泥臭い曲を専門にやっているイメージのボズですが、エンディングにこんなイマジネーティブな、しかもインストナンバーを持ってくるところに、かなり本作に対して挑戦的な意気込みを感じます。

名盤「Silk Degrees」発表まであと5年。でも本作には確実にその萌芽が見られますね。この時代のボズの作品も非常に魅力的ですし、最近はAORのボズよりも、こちらの時代のボズをよく聴いてます。

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