John Phillips「John, The Wolf King of L.A.」(1970)
今回は私の大好きなママス&パパスのリーダーであったジョン・フィリップスのソロアルバムです。
このアルバムですが、もう15年近く前の年末、ディスクユニオンの「棚から一掴み 3枚1000円セール」より何気なく買った3枚のなかに含まれていたもの。最初から期待感がなかった分、本作を初めて聴いた際、あまりの素晴らしさに感激した次第です。
ジョン・フィリップスは皆様ご存知の通り、ママス&パパスのリーダーですね。私、つい最近まで彼等のドロドロの活動を知りませんでした。
ママス&パパス、パパのジョン・フィリップスとデニー・ドハーティ、ママのミシェル・フィリップスとキャス・エリオットの男女混合4人組。
結成は1965年。ジョンとミシェルが夫婦であり、デニーに憧れて、強引に加入したのがキャス。そしていつの間にかデニーとミシェルが恋仲に・・・。
ジョンとミシェルの仲は最悪の状態になっていくのですが、そんなかでもヒット曲を量産。
稀有なソングライターであるジョンの意地もあったのかもしれません。
以下YouTubeの映像は1967年のモンタレーポップフェスティバルに出演した際の、メンバー紹介を含めた映像ですが、そんな最悪な状態は微塵も感じさせない素晴らしいライヴ映像です。
1968年グループは解散、そして失意のなかでジョンは本作を制作するのです。それもママス&パパスとは違ったアプローチの仕方で・・・。
本作演奏メンバーはハル・ブレイン(Ds)、ジョー・オズボーン(B)、ラリー・ネクテル(Key)の私の大好きなダンヒル黄金トリオにカントリー・ジョー&ザ・フィッシュのオリジナル・メンバーであるデヴィッド・コーヘン(G)、ダーレン・ラブ・ジェーン・キング・ファニータ・ジェイムスのコーラス、ミスター・テレキャスター、ジェームス・バートン(G)、そしてこれまた私の大好きなミュージシャン、レッド・ローズ(スティールG)等が参加。レッド・ローズは元モンキーズのマイク・ネスミスが組んだバンドのメンバーで、この当時のカントリーロックのスティール・ギターといえば、殆どが彼の演奏だと思います。
そう、つまり本作、かなりカントリーロック的ファーキーな作品なんですね~。これがまた味わい深い。期待感の薄いなかで「再生」ボタンを押し、そして①「April Anne」を聴く。もうこの哀愁漂うスティール・ギターとアーシーなピアノにいきなりノックアウトです。
最初聴いた時点ではメンバークレジットを見ていなかったのですが、1曲目からベースが気になってしょうがない。妙にベース音の粒立ちがいい。これはもしや・・・、そして予想通りジョー・オズボーンでした。彼のベース音は心地よくて大好きです。
カントリー・フレイヴァーたっぷりな②「Topanga Canyon」、ちょっとアーシーでサザンソウル的な③「Malibu People」などなど、聴きどころはかなりあります。
また⑥「Captain」ではダーレン・ラブ、ジェーン・キング、ファニータ・ジェイムスのコーラスがゴスペル的で曲を盛り上げます。ジョンのヴォーカルは線が細いように感じるのですが、ここではコーラス隊に負けまいと必死に歌ってます。私の大好きな1曲です。
ハル・ブレインのドラムがヘビーな⑦「Let It Bleed, Genevieve」は、これまたジョー・オズボーンのベースがエフェクターを通しているのか、ちょっとユニークな音で魅力的です。またラリー・ネクテルのピアノも力強く土臭さを漂わせてますね。
シングルカットされた⑨「Mississippi」はやっぱりこのアルバムではポップで魅力的な曲ですね。ハル・ブレインらしいドラムに、これまたギター以上に目立っているジョー・オズボーンらしいベース。陽気なカントリーソングで、これは気に入りました。
このアルバムに対する評論家の評価は、ママパパのサウンドが頭にあるのか、陰鬱なアルバムといったものが多く目にしますが、それはカントリー独特の寂寥感から来るものであり、決して陰鬱といったものではありません。グラム・パーソンズほどカントリーしてないし、むしろジョンらしいフォーキーななかにカントリー色が漂っている名盤だと思います。あともちろん黄金トリオの演奏も十分堪能できますね。
後に恋敵のデニー・ドハーティもファーストソロを発表しますが、このアルバム、殆ど演奏メンバーは被っていないですね。黄金トリオ他メンバーも気を使ったのかもしれません。