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KISS「Love Gun」(1977)
KISSは2019年1月から、彼らの最後のライブツアー「END OF THE ROAD WORLD TOUR」が今も開催中で、日本には一昨年12月に公演を行いました。当時、私は名古屋にて単身赴任中でしたので、日本での最終公演、12月19日のドルフィンズアリーナに参戦しました。今のコロナ禍を思うと、観に行って良かったなあと…。
KISSといえば「Destroyer」や「Rock And Roll Over」なんかが名盤として挙げられますが、それらの発表が1976年。そしてその勢いも冷めやらぬ中、1977年に発表されたのが本作。KISS全盛期に発表された本作を名盤として挙げられる方も多いのではないでしょうか。
当時はパンク・ブームで、KISSの音楽はもはや古いものと見做すリスナーもいたようですが、ポール・スタンレーがセックス・ピストルズへのアンサー・ソングでもある「Love Gun(Sex=Love、ピストルズ=Gun)」を作り、その曲を軸に爽快なロックアルバムを発表したのです。
本作はポール・スタンレーが3曲、ジーン・シモンズが4曲、エース・フレーリーとピーター・クリスがそれぞれ1曲ずつ、カバー(これはポールの趣味)が1曲の計10曲が収録。どれもが聴き所満載のアルバムです。プロデューサーは前作に続いてエディ・クレーマーです。
アルバムトップはスピーディーなナンバーの①「I Stole Your Love」。邦題「愛の謀略」。後にポールはパープルの「紫の炎」から影響を受けた楽曲とコメントしております。
めちゃめちゃポップな②「Christine Sixteen」。ピアノはプロデューサーでもあるエディ・クレーマー。当時は無名な存在だったエディとアレックスのヴァン・ヘイレン兄弟が、この曲のデモバージョンに参加しているらしいですが、未だに陽の目を見ておりません。このデモをベースにキッスはアップした音源(スタジオ録音)を収録しました。エースはエディのソロを忠実に再現した…らしいのですが。ちなみにジーン・シモンズが彼等を発掘した…というのは有名な話ですね。
④「Shock Me」はエースが作った曲で、リードヴォーカルも彼が務めております。ステージではお馴染みの1曲となりました。アップした映像もライブバージョンを。ジーンやポール、クリスと比較してしまうと、そのヴォーカルは一歩も二歩も劣ってしまうのは止むを得ないですね(笑)。
あまりにも素晴らしい出来の⑥「Love Gun」。イントロのスネアの連打とギターリフは銃声を表現したもの。この曲のギターソロは(恐らく)当時のギターキッズなら誰でも弾きこなしたことでしょう。
アップした映像は2014年の演奏シーンなので、リードギターはトミー・セイヤー、ドラムはエリック・シンガーでしょうか。トミーはブラック・アンド・ブルーのメンバーだったんですね(あまりにも無知ですみません)。ブラック・アンド・ブルーってLAメタルブームの一躍を担ったバンドですね。エリックは、2代目ドラマーのエリック・カー(ピーター・クリスが過去、2度目と3度目の復帰に際して脱退、
知っている人は知っているジーン作の⑨「Plaster Caster」。何のことかって⁇ 明らかにCynthia Plaster Casterさんのことを歌った曲であり、彼女についてはググッて頂ければ直ぐ分かります。
意表を付くクリスタルズのカバーの⑩「Then She Kissed Me」。先頃亡くなられたフィル・スペクター・サウンドで有名なポップスですが、私はビーチボーイズのカバーで知った曲です。キッスのポップな一面は、ポールに拠るところが大きいと思いますが、これはポールらしいカバーで、キッスらしいアレンジに仕上げてます。
実はこの「Love Gun」、彼らにとっては6枚目のオリジナル・アルバムですが、ジーン、ポール、エース、ピーターの4人で収録した最後のアルバムなんですよね。長いキッスの歴史の中で、本作は初期に発表したアルバムですが、実はオリジナルメンバー4人で収録した最後のアルバム。次作「Unmasked」ではピーターは実質解雇状態。そういった意味では本作はオリジナルメンバーによる最後の輝きだったのかもしれません。