Ron Wood「I've Got My Own Album to Do」(1974)
ロン・ウッド…、容姿や佇まいを見ていると、憎めないお人柄のような感じ。
1974年に発表された彼のファースト・ソロ・アルバムを聴いていると、より一層、その思いが強くなります。なんせ邦題は「俺と仲間」ですからね(笑)。
この当時、ロンはまだフェイセズに在籍しておりました。フェイセズは1973年に「Ooh La La」を発表しますが、そのレコ―ディングにロッド・スチュワートは顔を出すことが少なく、ロニー・レーン主導でこのアルバムは制作されました。そのことに批判的だったロッド・スチュワートに残りのメンバーは憤り、ロニーは脱退。ロニーの後釜に山内テツが加わるというバタバタの時期にこのアルバムは制作されたことになります。フェイセズとしての活動も思うがままに進まなかったために、ロンはソロアルバム制作に踏み切ったのでしょかね。結局はこのアルバムが、ロンとローリングストーンズのミック・ジャガーやキース・リチャードとの絆を深め、ロンはストーンズとの活動に軸足を進め、フェイセズは解散に至るのですが…。
それにしても本作は非常に聴き所満載の作品に仕上がってますね。ミックやキースとの共演、ロッドとの共演(ロンは決してロッドと仲違いしていたわけではないんですね)…、ジョージ・ハリスンとの共作、ロンのギター&作曲センス…、いろいろあると思いますが、私的にはアンディ・ニューマーク&ウィリー・ウィークスのリズム隊のグルーヴに今更ながらにカッコいいなあと。
なので先に本作の中では異色作、亜流ともいえるインストナンバーの⑪「Crotch Music」をご紹介致します。
しかもこの曲、ベースのウィリー・ウィークスの作品。ですから主役はロンですが、明らかにウィリーとアンディが目立っております。でもあまりにもカッコいいので、こちらからご紹介すること、ご容赦下さい。
アップしたのは恐らく本作をリリースした直後のツアーの模様。ロン、キース、ウィリー&アンディに、イアン・マクレガン(Key)といったレコ―ディングと同じ布陣。キースがこんなフュージョンライクなプレイをしているなんて、ちょっと驚き。ロンの多彩なプレイはもちろん、ウィリーのグルーヴィーなベース、そしてこちらも凄いグルーヴ感のアンディのドラム。どれも素晴らしい。特にアンディって、こんなにカッコイイ方だったんですね…、ドラム・ソロも最高です。
一般的には「Crotch Music」より、こっちが好みの方が多い筈(笑)。オープニングは①「I Can Feel the Fire」。
ミック・ジャガーがバック・コーラスで参加。いや、バックというかリード・ヴォーカルに聴こえる(笑)。やっぱりミックって超個性的。ロンの単独作品なのに、ミック&キースが参加していることで、まるでストーンズの曲。後にロン・ウッドがストーンズに参加することになるのですが、これを聴いただけでも、ストーンズのセカンドギタリストはロンしかいないよなあって感じです。
独特のスカ的なリズムが魅力ですが、これはアンディのリズムワークが大きな効果を生んだ結果と思います。
ミックの代わりにキースが歌うライブバージョンもどうぞ。
そしてこちらはジョージ・ハリスンとの共作の②「Far East Man」。
ロンの方が少し早くリリースされたのでしょうか。実はジョージのバージョンはリズム隊がウィリー&アンディなのに、こちらはドラムはアンディですが、ベースはなぜかクレジットはミック・テイラー。このスタジオにウィリーはいた筈なのに…なぜ?? のちのロンのインタビューでもベースはウィリーと語っていたようですが。
1曲目とは一転、スローで渋いナンバー。ジョージはスライド・ギターで参加。このスライドも味わい深いです。
④「Take a Look at the Guy」はロンの作品ですが、ロッド・スチュワートがヴォーカルで参加。
ロッドが歌うせいか、まさに曲調はフェイセズが得意とするロックンロール。
こちらも前掲のライブからの映像をどうぞ。白黒とカラーを織り交ぜ、かつメンバーを満遍なく映し出すカメラアングルも素晴らしい映像です。ロンにロッド、キースにイアン、ウィリー&アンディ、豪華メンバーが一堂に会した素晴らしいバンドですね。
こちらもアンディのリズムワークが光る⑦「Shirley」。
楽曲は気のせいか、フュージョン時代のジェフ・ベックを連想させます。ギターとシンセがトーキング・モジュレーターっぽい。アンディのタムショットもアクセントになっていてカッコいい。ロンのヴォーカルは決して上手くはないですけどね(笑)。
よく考えたらこのアルバム、ロンを中心にローリングストーンズのメンバー、ビートルズのメンバー、ロッド・スチュワートといったブリティッシュ・ロックの中心人物達にアンディ&ウィリーの米国東海岸の強者がリズム隊の凄いアルバムなんですよね。
ちなみにアンディは本作制作の前年にあのスライ&ザ・ファミリーストーンに加入し、一躍有名人に。スライのツアー中にロンと知り合ったらしい。そしてウィリーは現在はなんと軽井沢在住。そういう余生の過ごし方っていいですね~。