Queen「Queen II」(1974)
クィーンの美学が貫かれたセカンドアルバム
非常に気品に満ちたアルバムです。
クィーンのなかでは一般的にはメジャーでないアルバムですが、コアファンの間では人気の高いアルバム。
クィーンはこの後発表されることとなるシングル曲「Killer Queen」の世界的な大ヒットで、一躍メジャー級バンドとなりましたが、この当時は本国英国でもそれほどの人気はなかったと思われます。
本作はそのメジャー級バンドとなる直前の、1974年4月に発表されたクィーンらしい名盤。ジャケットが名盤の佇まいをしてますね。
前半をブライアン・メイ(g)の作品主体の「ホワイト・サイド」、後半をフレディ・マーキュリー(Vo)の作品主体の「ブラック・サイド」とし、非常に格調高いアルバム作りとなってます。
わずか1分13秒のアルバムイントロ①「Procession」で、ブライアンのギターのみのオーケストレーションが華麗にオープニングを奏でます。そして間髪いれずにブライアン流ハードロック②「Father To Son」へ。組曲風、コーラスのオーバーダビング、これら仰々しいところはすべてクィーンらしいものですね。ライブ映像をどうぞ。
ロジャー・テイラー(Ds)作⑤「The Loser In The End」は、ロジャーらしい骨太ロックですが、ブライアンメドレーとフレディメドレーに挟まれた格好で、居心地が悪そうです。このアルバムにおいては違和感があるかもしれません。
そして問題の「ブラックサイド」。フレディ流ハードロックが炸裂する⑥「Ogre Battle」。この曲がアナログB面の1曲目ですが、1974年当時にこの曲を聴いた方は驚いたのではないでしょうか?
嵐の前の静けさのような無音、そしてクィーン流の(というかロジャーの)叫び声コーラスに続き、突然テープの逆回転音、段々と音がそこに合流していく。あとは一気に激しいギターが奏でる組曲風ハードロックへ。
この曲邦題「人食い鬼の戦い」となってますが、その様子が繰り広げられるといった感じですね。
本作で人気が高い1曲の⑨「The March Of The Black Queen」。これが完成したからこそ、後の名作「Bohemian Rhapsody」が出来たのでしょう。コーラスを駆使したボヘミアン流組曲。この曲の5分45秒以降、少しの間のフレーズは「Bohemian Rhapsody」のエンディングと同じものですね。
⑩「Funny How Love Is」はクィーンとは全く無縁と思われる60年代の名プロデューサー、フィル・スペクターへのオマージュ(と思われます)。フィル・スペクターは「ウォール・オブ・サウンド」として著名で、60年代前半にロネッツ等を世に送り出します。ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンも思いっきり影響を受けてますね。そのフィルをなぜクィーンが??この曲のアレンジは見事にロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」に似てます(もちろん曲は全然違います)。
本作では一番有名であろう⑪「Seven Seas Of Rhye」。アルバムのなかでは最後におまけのように収録されてますが、1曲を切り出して聴くと、強烈な曲。「華麗なハードロック」という言葉、この曲に見事に当てはまると思います。
アルバムをトータルで聴くことを教えてくれた重要な作品。30年以上前の、1974年当時にこういう斬新な音を出していたこと、またセカンドアルバムでこうしたトータルアルバムを発表していたこと、クィーンの意地が感じられます。とにかく驚きの連続です。