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Cheap Trick「Heaven Tonight」(1978)

パワーポップというジャンルが認知されて注目を集めるようになったバンドがバッドフィンガーラズベリーズチープトリック辺りでしょうか。当時、熱心にこのテのバンドを聴いていた頃は、「パワーポップ」などという括りはなかったのですが…。なので後付けですが、パワーポップ系バンドは大好きです。

バッドフィンガーやラズベリーズはこちらでも以前ご紹介していたので、今回はチープトリックを。
私は少し後追いで「In Color」と「At Budokan」のLPを購入し、この2枚を夢中で聴いてました。チープトリックって当時は米国ではそれ程の人気はなく、むしろ日本で人気がありました。日本武道館でライブをするって相当なステータスを感じますが、それだけ日本での人気が高かったんでしょうね。
当時のこのライブは日本のファン向けに収録され、日本のみでそのライブ盤が発売されました。それがなぜか米国で(輸入盤として)人気を集め、急遽本国である米国でも発売されたという曰く付きの1枚。で、今回ご紹介するサード・アルバムは、この来日に合わせて発売されたもの。米国では最高48位…。「At Budokan」のブレイク直前ということもありますが、それにしてもこの名盤が48位とは…。かなり驚きです。

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プロデュースは前作に引き続きトム・ワーマン。後にギターで、中心的な存在のリック・ニールセンは、初期のアルバムはやりたいことが出来なかったような発言をされてますが、本当かなあ。結構リック節が炸裂しているアルバムのような気がします。
リックは好きなバンドとして、ビートルズ、キンクス、ザ・ムーブを挙げている通り、ブリティッシュ・ロック好きな少年だったようです。確かにチープ・トリックってキッスのように根っから明るいロックというよりも、ブリティッシュな香りのするところもあったりして。あとグラムやパンキッシュなところもあったり、ごった煮ですが、それらをうまくポップな感じでまとめているところが凄いなあと思います。

ちなみにこのジャケットの左側はこんな感じ。ヴォーカルのロビン・サンダーとベースのトム・ピーターソンのイケメン組、ドラムのバン・E・カルロスとギターのリックのコミカル組、この対比もユニークでした。

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彼等の代表曲といえば①「Surrender」ですよね。
当時の来日公演でも披露されたパワーポップの名曲。イントロからちょっと緊張感のあるコード展開ですが、メロディが始まると見事なポップチューン。歌詞もティーンエイジャー目線のもの。歌詞は大雑把に言うと、ママもパパも説教じみたことをいろいろ言うけど、やることやってるんだな~って感じですか。ボクのKISSのレコードを聴きながらイチャイチャしているって歌詞、KISSが登場するところもちょっと笑えます。
あとこの曲のバックに流れているキーボード、AORではよく名前が出てくるJai Windingがゲスト参加してますが、本作全体でもJaiのキーボードが効果的に使われてます。

ダークなチープトリックとポップなチープトリックが楽しめる名曲②「On Top of the World」。
イントロからスリリングでいいですね~。リックのギターが暴れまくってます。それにしてもヴォーカルが入るとどうしてこうもポップになるんでしょう。そんな明暗織りなすパワーポップ、素晴らしい楽曲です。中盤以降、エンディングにかけての優しいコーラスもチープトリックらしい。

ジェフ・リンが在籍していたザ・ムーヴのカバーの③「California Man」。
ロックンロール・チューンですね。ジェフ・リンの曲ではなく、敢えてロイ・ウッドの曲を採り上げているところにリックの嗜好が表れてます。このカバー、誰も気づかないと思いますが、途中の間奏では同じくムーヴの「Brontosaurus」って曲のリフがさり気なく挿入されてます。

本作中、私の一番お気に入りはポップな「Surrender」ではなく、ダークな⑤「Auf Wiedersehen」(ドイツ語でサヨナラという意味)なんです。邦題「サヨナラ・グッバイ」ですね。歌詞にも「サヨナラ」「ハラキリ」「カミカゼ」と日本語が登場してきます。実は歌詞は自殺をテーマとした厭世観漂うもの。そしてイントロではトムの12弦ベースが唸りを上げてます。ベーシストの方ならチープトリックのトムが12弦ベースを使っていることをご存じと思いますが、レコーディングではこの曲で初めて12弦ベースを使ったとのことです。
この曲にはアメリカンな陽気さは皆無。ブリティッシュロックな香りがします。ファーストでも「Elo Kiddies」っていうダークな名曲が収録されてますが、その曲に通じるものがあります。実にカッコいいナンバーかと思います。

チープトリックらしい超ポップな⑩「How Are You?」。
前作収録の「I Want You to Want Me」っぽい楽曲。こうしたツービートなグルーヴのチープトリック流ポップスが好きな方も多いと思います。この曲なんか聴くと、とても「Auf Wiedersehen」を演奏している同じバンドとは思えませんね。
アップした音源の最後のライブ音源は次トラックで⑪「Oh Claire」。日本語で「こんにちは!」って言ってますね。

やっぱりいいアルバムですね~。
チープトリックは今も現役。但しドラムのバン・E・カルロスは名前だけメンバー扱いですが、ステージングではリックの息子のダックス・ニールセンが叩いてます。トムも一時脱退した時期もありますが、今もチープトリックの一員。最近も新作を発表しておりました。

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