
Stevie Wonder「Hotter Than July」(1980)
私が洋楽を聴き始めた頃、ちょうどこのアルバムがヒットしており、小学生の私にとって、このジャケットは妙に印象に残ったのでした。
そのスティーヴィー・ワンダーですが、彼の70年代の3部作はとにかくスゴイ作品でした。1973年の「Innervisions」、1974年の「Fulfullingness' First Finale」、1976年の「Songs in the Key of Life」。どれも才能が溢れんばかりの作品であり、その充実度合いは間違いなくソウル史上最高峰のものでした。
そして掲記の一連の素晴らしい作品発表後、4年振りにスティーヴィーは本作を発表します。3部作の楽曲はニューソウル感覚が効いた作品が多いですが、ここでの楽曲はよりモダンなアレンジが施されたような感じで、大衆音楽に迎合した感覚が一般的にはあまり評価されていないようですが、今聴き返すと、それはそれで非常に聴きやすく、なかなかのアルバムと感じます。

①「Did I Hear You Say You Love Me」からノリのいい楽曲です。ディスコブームの影響が窺えるパーティソング。ホーンなんかもEW&F的な要素が垣間見られますね。
後にエリック・クラプトンがカバーした④「I Ain't Gonna Stand for It」。この曲、大好きなんですよね。もともとはクラプトンのヴァージョンがお気に入りでしたが、やっぱりオリジナルも素晴らしい。
70年代前半に発表されていれば、もっと黒いフィーリングでやっていたであろう楽曲。ファンキーなベースはスティーヴィーの盟友、Nathan Watts。気合の籠もったドラムはスティーヴィー本人です。もう耐えられないというスティーヴィーの怒りともとれるヴォーカルもいいですね。
レゲエ調の⑥「Master Blaster (Jammin')」はこのアルバムからのファーストシングル。レゲエ界のスーパースター、ボブ・マーレーに影響されたのでしょうか? そのボブは翌年の1981年に病気で亡くなります。
タイトなドラムが心地いい⑦「Do Like You」。これもスティーヴィーが叩いてます。フィルインが実にスムーズで気持ちいい。スティーヴィーは元々ドラマーでしたからね。
このアルバムのハイライトはやはり⑨「Lately」でしょう。久しぶりに聴きましたが、やっぱり美しい曲ですね。
アルバム最後を飾るのは、これも有名な曲ですね。誕生日を祝う定番ソングの⑩「Happy Birthday」。
この曲が発表されてもう40年以上経った今、この曲がマーティン・ルーサー・キング・Jr牧師の貢献を称える意味で、彼の誕生日を国民の祝日する運動のために作られたものであるという事実を知っている方も少なくなってきているかもしれません。
アップした映像にキング牧師が映っているのはそのためなんですね。
ものすごい創造性を発揮していったスティーヴィー、80年代もビッグヒットを生んでいくことになります。