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Valerie Carter「The Way It Is」(1996)

ジェームス・テイラーのライヴに思いを馳せていましたら、ヴァレリー・カーターの作品が無性に聴きたくなり、ここ数日、あまり聴き込んでいなかった彼女のサードアルバムを聴いております。

ハウディ・ムーンというコーラスグループのメンバーだったヴァレリーは、1974年にアルバム「Howdy Moon」でデビューします。そしてそのアルバムをリトル・フィートのローウェル・ジョージがプロデュースしたという縁から、1977年にローウェルの協力の下「Just a Stone's Throw Away」にてソロデビューを果たします。
ただ、彼女の活動の主軸はジェームス・テイラーやジャクソン・ブラウン等、ウエストコースト系SSWのバックコーラスだったような気がします。

本作は寡作だった彼女が、18年ぶりに発表したサードアルバム。日本盤は2曲多い、全12曲収録。またヴァレリーが亡くなった2017年、本作は後に発表された「Find A River」というEP型のカバーアルバムの収録曲をボートラに加えた形でリマスターリリースされてますが、ここでは元々の日本盤をベースにご紹介致します。

このアルバム、冒頭の4曲があまりにも素晴らしいのです。まずはオープニングの①「The Way It Is」。
ヴァレリーと本作プロデューサーでもあるマーク・ゴールデンバーク、ケヴィン・ハンターの共作。ちょっとソウルフルなAORでヴァレリーの愛らしいヴォーカルが妙に合っています。バックのギター、かなりいぶし銀ですが、いいと思いませんか。本作のギターは知る人ぞ知るジェイムス・ハラー。1984年のリッキー・リー・ジョーンズとのセッションで注目を集め、以降マドンナやアル・ジャロウのツアーギタリストとして活躍。デヴィッド・フォスターやリチャード・ペイジ等、主にAOR系アーチストと共演されている方なんですね。

②「Love Needs a Heart」はご存じの方も多いでしょう。ジャクソン・ブラウンの名盤「Running on Empty」に収録されていた名曲ですね。
ヴァレリー、ジャクソン・ブラウン、ローウェル・ジョージの共作。個人的にはヴァレリーのバージョンが大好き。ここでのデュエット相手は当然ジャクソン・ブラウンです。泣かせるメロディ、愛らしいヴァレリーのヴォーカル、そこにジャクソン・ブラウンの優しいヴォーカルがハモるところが堪りません。

そしてなんとEW&Fのカバーの③「That's The Way of the World」が…。これもまたいいのです。一緒に歌っているファルセットヴォイスはデヴィッド・ラズリーでしょうか。
アルバムのコーラス・クレジットにはアーノルド・マカラー、ケイト・マルコヴィッツといったジェイムス・テイラーのバックコーラス隊も参加してますね。この曲でもこの二人が参加していそうです。
あと、やっぱりジェイムス・ハラーのギターのサウンドが素晴らしい。スライドギターっぽい味付けのギタートーンが、キュートなヴァレリーのヴォーカルと相性ピッタリ。このカバーはいいですね。

トム・スノウ作のバラードの④「Blessing in Disguise」もお気に入りの1曲です。実はこの曲、不思議なことに10曲収録のオリジナル盤には未収録なんです。当時の日本盤のみに収録されていたもの。本作にはトム・スノウの作品が4曲も収録されているので、その関係で未収録となったのでしょうか。確かにアレンジは現代風なチープな感じもしますが、それにしても素晴らしいバラードです。

アルバムのエンディングはトム・ウェイツの⑫「Whistle Down the Wind」。こちらはトムが1992年に発表したアルバム「Bone Machine」に収録されていたバラード。原曲をご存じの方は、トム独特のヴォーカルがあまりにも強烈という印象をお持ちかと思います。それをヴァレリーが歌うと、実は清らかなバラードだったということに気付かされます(笑)。一定水準の曲をヴァレリーが歌うと、それ以上の真価を発揮させる力が彼女のヴォーカルにはありますね。

ヴァレリーは残念ながら2017年に亡くなられました。ジェームス・テイラーのアルバムへの参加も2002年発表の「October Road」以降はなく、晩年は体調が思わしくなかったのでしょう。ヴァレリーは実は本作発表前、1994年に佐橋佳幸さんとジョイントライヴを行ってます。その音源も彼女が亡くなった後、発表されてますね。こちらも聴いてみたい…。

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