そう、心って重いの。
ソフィーの言葉。
最後のこの言葉で私は全てを認められたような気持ちになっていた。
物語とは全く関係の無い私の傷んでいた心が救われた気がした。
鬱という、いつ始まっていつ終わるのか輪郭が見えない掴めない悪夢の中で、気付いたら2年が経っていた。
その間私は苦しいことから徹底的に離れてやっと人間の形をしていられるだけになった。
周りの人に苦しみの原因になるものを分けて、支えられて。
それに対しても死にたくなるほど自分を責めた日も沢山あったし、簡単には書きたく無いほど死の淵を歩いた長くて深い夜があったね。
眠っているのも苦しくて、じっとしている事も苦しくて。
苦しさが私の中から溢れてしまって抱えきれなくなっていた夜。
真夜中に家を飛び出して、信号さえ消えた暗い道路を必死にペダルを漕ぎながら進んでいた。
私はこの世界のこの場所から遠ざかることは出来ないんだ。
必死に必死に逃げても何も変わらないんだ。
ペダルを漕ぐたびに涙が溢れ出てきて、ボロボロと流れては止まらなかった。
すれ違う人もいない。
私が真夜中に泣きながら自転車を漕いでいる事なんて誰も知らない。
…とても辛くて苦しい。
もう嫌なんだ。生きたいよ…
その時、死にたいが表す、私の本当の心が現れて、その瞬間に涙が温かい事に気が付いた。
気づいてしまったらもう、泣き止むことが出来なかった。
もうこれ以上、苦しみたくない、私はただ、ただ生きたい。
当たり前に、辛いことなんか無く、悲しむ事も自分を責めることも無く、ただ私のままで生きていたいだけなんだと。
その暗闇を最後に、私の本音を生かしてあげようと思った。
自分に素直にわがままに、生きて、好きな時に死んでしまえばいいんだ。
それくらい無責任でないと命を生かすことが出来なかった。
だけどそれは、弱くて醜くて頼りのない、
私だけに見える確かな光のようだった。
私は死ぬ事、生きる事。どちらも救いでどちらも地獄なのだと思う。だけどその瞬間の私は死にたくなるほどに生きたかった。だから、どんな形でも存在してもいいんだって私が許し続けないと、ここにはいないと強く感じる。
なによりも自分が自分を1番にしてあげないとこんな地獄を真顔で歩いて行けるわけがないよね、相変わらず無力なままかもしれないけれど、ここまで生きている事が奇跡だと言っていいんだと。
私が決めたから。
ただ、今ここに生きていることは本当に色んな環境とタイミングによって偶然、保たれている。
生とはそんなものだから、私には誰かに、あなたに、届きますようにと願うことしかできません。
どうか、どうか。たった一つのどんな理由でもいいからそのつらい夜を、越えられる光を。
あなたのそばにも。どうか。
今は一人でも 明日は限りない
夜に潜む 優しさ。