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エヴァを捨てよ、恋をしよう
映画「シン・エヴァンゲリオン 劇場版𝄇」を観ました。
1995年にテレビアニメーションとして始まった「新世紀エヴァンゲリオン」の物語の、最終的な作品です。
レイちゃんが村で生活して、でも彼女が普通の人間でないことが、まるで壊滅後の福島第1原発のようなネルフ基地の廃墟の前で、悲しく露わになったとき、私は泣いてしまった。
しかし、シンジくんは、傷を負った初恋の人アスカや、母の学友である時を超えたマリ、そしてカオルくんの幽霊に励まされ、運命に立ち向かう。
24年間の長きにわたり、地下鉄サリン事件の年から、9.11、アフガン空爆、イラク戦争、3.11、無数の人間の悲しみが時の流れの中で漂う中、幾度ものリビルドを経て、そのクライマックスでついに、世界の破壊者・碇ゲンドウが語り出した。
無論、世代の犠牲者たるチルドレンたちの苦悩でこの物語を終われるわけがない。
彼らの親であるゲンドウこそが、機能不全家族で育った愛着障害と自己愛性人格障害の患者たるアダルトチルドレンであることが、アニメーションでは決して上手な表現とは言えないであろう説明台詞で満たされた演出で表現される。
エヴァと使徒の戦い、人類と神の戦いだったはずが、いったん神になった人間によるセルフカウンセリングが始まる。それはシンジ(=神児)と向かい合うことだった。
それは単に親と子が向かい合うという意味ではなく、歴史と個人の関係性を改めて受け止め、そこから飛翔していくということだ。
そして、すべては虚構でした。
だからこそ、現実でした。
これは、あなたの話です。
昔懐かしいアヴァンギャルド華やかりし頃の日本映画のからくりや、唐十郎や寺山修司のアングラ演劇のような屋台崩し。
まさか、セットが、カメラが。なんと、キャラクターたちはどこかの小劇団の役者だったのだ。
しかし、現代人は、あのシーンがマイナス宇宙だったからあのように見えていただけと捉える。
寺山修司が力石徹の葬儀を開いた頃とは、残念ながら、人間の心理がまったく異なるのだ。現代人は虚構を虚構として消費するしかできない。
多くの人々が、我が事として受け取らない。「シンエヴァ考察しました!ネタバレ注意」というブログを書いてしまう。
《もう観客の人生に返された》のにである。
あれは確かに、24年間のエヴァンゲリオンの物語が、すべて「お芝居」だったということだ。
フィクションとリアルのアウフヘーベン。
超越したいのは、知らなかった穏やかな日常のため。
庵野秀明は、エヴァンゲリオンも含めて、「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」
「シン・仮面ライダー」と、過去のフィクションに《現代における説得力》を掛け合わせ続ける。
彼がかつてつくりたかった映画は、「シン・風の谷のナウシカ」だったはずだが、結果的に自らの作品であるエヴァンゲリオンをリビルドしたら、「シン・もののけ姫」になってしまった。
さんざん、アダムとイブとか知恵の実とか言ってきたのに、「新劇場版Q」と「シンエヴァ」において、《神殺し》というキーワードが登場した。
葛城ミサトはSFエボシ御前であり、碇ゲンドウは自己愛のジコ坊といったところである。
ラストシーン近くで、光りながら歩くエヴァンゲリオンはまさしくダイダラボッチであった。
タタラ場で打たれた鉄は、映画冒頭で、いきなり捻じ曲げられて武器になってしまうエッフェル塔だ。
いつの世も、若い人は犠牲者だが、生きていかなければならない。映画監督で日本赤軍兵士の足立正生は、自分たちの世代的責任を痛感しながら、若者たちに「どうぞ勝手に生きてください」と説く。立川談志は「勝手に生きてみろ」と言う。
しかし、自由を扱えるだけの安心が、ゲンドウやミサトやリツコにも、その子であるシンジやアスカにも持たされていない。
破滅願望と同化願望とマゾヒズムとサディズムとナルシシズムが履き違えられ、頭の中でこんがらがり、トラウマの原因である風景は遥か故郷に穏やかに広がっている。
ここで私たちは、力を合わせて、助け合って、大人になるべきだ。傷を互いに癒すのだ。
だって、宇多田ヒカルも、庵野秀明も、悩みながらも恋愛や結婚や家庭をちゃんとしているんだもの!
初めてのルーブル美術館は、何てことはなかった。
岡本太郎と岡本敏子が、感性やセンスが似ているだけでなく、顔までそっくりなのは、運命としか言いようがないのだ。
「僕の好きな色はねぇ、真っ赤、真っ赤、真っ赤!!綾波レイの瞳の色も、太陽の塔も、明日の神話も、真っ赤、真っ赤、真っ赤!!」
※この記事はホームページ(http://00yu10.club/)のブログのよりぬきです。