人生で初めて美術館へ行ってみた 〜 Part 1 道中編 | GO AHEAD -僕の描く夢- 第152回
2019年10月14日午後7時00分。
地元はあいにくの雨というわけでも、めちゃくちゃ晴れ渡っているというわけでもなく、とにかく中途半端な天候。こういう日がいちばん対処に困る。兵庫と大阪では全然天候も違うし、こっちでは晴れていても向こうでは雨が降っているなんてこともたまに発生してくるので、念のために折り畳み傘を入れておく。
今日は祝日ということもあり、空きコマの合間で何処かへ向かおうかということは事前に決めていた。カラオケでもいいし、街をぶらぶらしてもいい。そういうつもりだった。だが、二限の終わりにカラオケ店へ行ってみると、既に人でいっぱいだった。……これはダメだ。予定を変えなければならない。
「あっ、富野由悠季展やってたよな……」
これがすべての始まりだった。富野由悠季さんといえば、説明不要の巨匠である。機動戦士ガンダムや伝説巨神イデオンといえば、もうおわかりだろう。その方の展覧会が地元・兵庫県にやってくる。これは行くしかない。時間の都合で多くの作品は見れなかったが、とりあえず主要作品はチェックしてこの日を待っていた。他にふたコマの空きがある日といえば火曜日だが、残念なことに火曜日はたいてい月曜日が祝日で、その振替休日ということで休館日の場合が多く、下調べが出来ずにいた。そう、美術館自体が初めてなのに、それが富野さんの展覧会という非常に贅沢なことを真剣にやろうとわたしは考えたのである。
わたしは大学を出ると、阪急電車で王子公園駅へと向かった。王子公園駅と聞くと、どうしても王子動物園を思い浮かべるが、わたしの今日の目的地は真逆だ。知らない土地の、遥か彼方にある文化施設を目指し、わたしの足はグーグルマップを頼りに歩き始めた。グーグルマップは以前よりも精度が増しており、道端で「あっちじゃない」とか「こっちじゃない」と迷い始めることはほとんどなくなった。たまにぐるぐる回らないと方向がわからないこともあるが、それはご愛嬌だ。少なくとも、わたしは迷わなかった。王子公園駅からだと、目印のはずのファミリーマートが結構離れたところにあるというケースもあったから、ちょっと気をつけてほしい。阪神電車の方は最寄駅があるので、そっちを利用した方がよっぽどいいだろう。(わたしは定期券の都合で阪急電車を利用した。要するにケチったのである)
美術館までの道のりは、すごく遠かった。
アップダウンの多い道のりで、足腰に結構な負担がかかる。先日、フルマラソンで二時間を切った選手が非公式ながらも現れたが、そういったアンタッチャブルレコードと呼ばれる記録は不可能を可能にするような環境がないと出来ない。マラソンは市街地を走るので、どうしても左右のコーナリングは避けられないが、この記録を達成した際のコースはアップダウンもなく、まっすぐに走れるコースだったらしい。
そうこうしているうちに、兵庫県立美術館に到着した。
途中のオブジェを撮影したり、空や街並みをカメラに収めたりしていると、普通よりも随分と時間がかかってしまった。やっぱり、これを行き帰り(しかも徒歩)は無理があるのかもしれないと思い始めた。でも、この時は「たぶんできるだろう」と信じていた。そんなわたしは、この認識が甘すぎるということを嫌というほど館内で認識させられることになる。
それは、また次回の話だ。(このエッセイは三日に渡って続きます)
2019.10.14
Yuu
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