わたしの、たくさんの憧れ
憧れているものが、いくつかある。
「憧れ」とは理想とする物事や人物に強く心を惹かれること
と辞書にはあり、いわゆる「好き」と言う言葉に近いが、より自分の手に届かない、理想に対する気持ちを表現する言葉らしい。
例外なくわたしの場合も、自分が持っていないもの、あるいは持ち得ないと思われるもののお話し。
ひとつは、くりんくりんのカールヘア、柔らかい毛質で、さわるとフワッと感じるようなもの。
わたしは生まれたときから、ストレートの黒髪なので、全く違う。
ずっと昔から、カールヘアに憧れていた。
3歳年下の従姉妹がカールヘアだった。母親に抱かれてる幼い彼女の後ろに回っては、肩にゆれるフワフワに触れ、彼女が眠りにつくと、おもちのように白いおでこの産毛が、一つ残らずくりんくりんとしているのに見惚れた。
彼女の場合は、あまりにもカールヘアなので、髪が伸びても伸びても、しばらく肩ににはつかず、フワフワとやわらかく広がり、わたしには不思議なほど魅力的に映った。
多分、この感情を憧れと呼ぶのだなと、今になるとわかる。
その後、健やかに成長し、勉強にも、部活にも励むようになった頃、
彼女は、突然ストレートパーマを当ててしまい、それ以来、以前のようなくりんくりんのヘアには戻らなくなってしまった。
彼女には言えないけれど、私は、正直に、残念でたまらかった。
名門大学を卒業し、立派な社会人になっている彼女に会うたびに、惜しいような、少し切ない思いにになってしまうのは、
仕方のないことだと思う。
近所のおばさんが、挿し木にしてみなさいとくれたバラが、
ほんとうに蕾をつけてくれた。
(2020/7/2 五月晴れの日に)
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