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連載推理小説「20人殺し」

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200年に一度必ず起きる20人殺し事件が今年もやってくる。朝比奈雅美シリーズ第二弾。不定期更新。悪しからず。
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#小説

20人殺し《03》

20人殺し《03》

 日本を代表する朝比奈不動産(詳しくは「蝉が一匹、力無くジーと啼いた」をご参照ください)。その跡取り息子である雅美は、朝食をとりながら妄想に浸っていた。
 というのも、新聞の広告欄にデカデカと尋ね人が出ているからであった。

【尋ね人】
御名前 田上 慎吾
御年齢 26歳
連絡先 喜多川法律事務所
    03-1234-5678
    弁護士 喜多川啓介

「ねえ、郁さん、コレ見て? 今どき尋

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20人殺し《02》

20人殺し《02》

 20人殺し。ことの顛末はこうである。

 元和8年(西暦1,622年)2月20日、風神権蔵が突然発狂した。というのも、さよが昨夜のうちにいなくなってしまったからである。さよは権蔵が村外れから拐ってきた娘である。権蔵は拐ってきて土蔵に格子部屋を作りそこへ監禁した。そして毎日自分の欲求を満たした。しかし、それが叶わぬものとなったことを知ると、突然のように猟銃を握って村中を巡り、
「どこへ隠したぁ」

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20人殺し《01》

20人殺し《01》

二神(ふたがみ)村。
村名の由来は諸説ある。神社に祀った土着の神、御魂と荒魂を合祀しているからとも、
あるいは、古代に治めていた地方豪族の二見氏が訛って二神になったとも言われる。
ただ、一つ言えることは、おおかたの村民が、二大勢力である風神家か雷神家に経済的依存をしていることから、今では皆がなんとなくこれが村名の由来であると思っている節がある。

さて、もともとは風神家も雷神家もそのような姓を名乗

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