英語がすき




あれは高校生のころ。



中学までは英語なんてずっと、机の上で学んで何になるんだとか、
日本語すらままならないのになんでaとかbとか書かなきゃいけないんだ、数学にまで顔を出しやがって…ぐらいには思っていた。


たしかに話せたらかっこいいけれど、教科書で文法だけじっと学んでいてもどうにもならないじゃん、とかなり拗ねた態度でいたものだった。




高校生になって、ひげもじゃでベンツに乗ったお金持ちな先生が3年間英語の担当になり、
ドラゴンボールの登場人物は全員、野菜が名前の由来になっているんだよとか、人間なんて命が危ないと思ったらなんでもやってしまうものなんだよとか、英語以外の話が長い先生だった。
厳しいところもあったが、私はそんな先生の教え方がけっこう好きだった。


私の高校はバリバリの進学校スタイルで、勉強合宿というものがあった。
その合宿で英語は発音練習のみ。来る日も来る日も、色んな単語を口から出して、発音、発音、発音。ひげもじゃ先生のスパルタ合宿。頭がおかしくなるかと思った。


その合宿の最中は最悪な気分だったけれど、音楽が好きだった私は、ビートルズやテイラースウィフトが何を言っているのかが、おかげでほんの少し気づけるようになってきて、
ちょこっと憧れていた海外と距離が縮まった気がした。

そこから私の中で少しずつ、
英語というものが、押し込められた日常から広い世界へと抜け出すための光の橋のようなものに変身していった。


恋心とか、人生で感じた強い思いとかを、
赤裸々に楽曲に変身させ続けているテイラー。女子高生だった私は、そんな彼女の曲たちにすぐどハマりして、
授業中にもノートのはしっこで英語の歌詞を訳したり覚えたりするようになった。



英語以外の教科の授業中も平気で歌詞をうきうき書いていたし、
今考えたら普通にサボりなのだけれど、楽しくて楽しくて、遠くに行ける気がして、嬉しかった。


歌詞を覚えるだけじゃなくて、
せっかくだから現地の人と同じような発音をしてみたいと思って、何回も歌ってみた。
最初はとてもじゃないけどスムーズに歌えないから、何回も音源を聴いて、フレーズを小分けにして歌ってみて、身体に染み込ませた。
お風呂で歌うとよく覚えられた。


そうやって一番最初に全部歌えるようになったのが、テイラーのYou belong with meだったのか、ビートルズのHey Judeだったのかは、もう覚えていないけれど。



受験期の真っ只中も、ひたすら勉強することに耐えられなくなって、
携帯持ち込みが禁止されているのにこっそり学校に携帯を持ってきて、
苦しくなったらトイレでPart of your worldの英語版の動画を何回も見ていた。

(アリエルは人間の世界へ行きたいと歌っていたが、私は勉強のない世界へ行きたかったのかもしれない。)


別にペラペラ喋れるわけじゃないけれど、今いる世界だけが私のすべてじゃないと思わせてくれた英語が今でも大好きだ。
英語を口にするといつだって、どこまででも連れて行ってくれる気がする。
遠い国の言葉が私をひらけた場所へ導いてくれる。








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