『すてきな三にんぐみ』
子どもの頃、『すてきな三にんぐみ』という絵本が大好きだった。
幼稚園に置いてあったその本は、カラフルで可愛らしい他の絵本の中で一冊だけ異彩を放っていた。
表紙は不気味で、それでも何故か手を伸ばしてしまう不思議な魅力があった。
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泥棒である三にんぐみは、お金持ちの馬車を襲っては宝を奪い取る。
ある日馬車を襲うと、馬車の中にはみなしごのティファニーちゃんが乗っていた。
ティファニーちゃんを隠れ家に連れて帰ると、ティファニーちゃんは今まで貯めてきた宝の山をみて、「まあぁ、これどうするの?」と聞く。
考えたこともなかった三にんは考え、そしてティファニーちゃんのような孤児たちを集め、それぞれにお揃いの家と服をプレゼントする。
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私はこのお話が大好きだった。
ずっと、ティファニーちゃんになりたかった。
私もすてきな三にんぐみとたくさんの子どもたちと暮らしたかった。
いじわるなおばさんの家に向かうより三にんと一緒に行くと決めたティファニーちゃんのように、辛い状況から抜け出せるチャンスとそれを選び取る勇気が欲しかった。
小学生になっても見かけるたびに読み返し、成人した今もたまに思い出す。
そしてやっぱり、ティファニーちゃんになりたかった、当時の自分がティファニーちゃんになれたらどれだけ救われたのだろうと思う。
もう私は大人で、三にん組がいなくても自分でどこへでもいけるようになった。
身の回りのことは自分でできるようになった。
暴力に泣いて怯えるだけではなくなった。
自分の気持ちを認められるようになった。
今の私なら、ティファニーちゃんに憧れるんじゃなくて、三にんぐみの仲間になれるだろうか。