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選別を行う珈琲豆屋の持続性のための「欠点豆を考慮した原価計算・母比率の推定の導入可能性」


選別前のお豆

1. 『はじめに』

昨今の深刻な価格上昇問題によってサービスや財にかかる金額は概ね増していく一方ですが、

こと農作物を取り扱う事業者の中で、とくに"焙煎前から選別を行う珈琲店”にとっては、むしろ気候変動の影響による全体の質の高低やばらつきの大小の方が問題になることもあります。

選別にかかる時間やそれによって減ってしまう量の計算が、

ひいてはお店の継続性に繋がってくるため、私が普段行っている欠点豆の推定を書いてみたいと思います。


2. 『小数を用いた概算と分数計算の差』

例えば1000gから100gの欠点豆が見つかった場合「10%減少」とも見えるかもしれませんが、

元の購入代金に戻す場合は10%ON(×1.1)とはいかず、×10/9(×1.11111…)になります。

もし選別工程が増えれば増えるほど、この変化は大きなものになっていくと考えます。


ですので、選別工程/回における計算手段として以下のようなものを考えます。

1000gをX円で購入し、焙煎前選別でYg減った場合の1000gあたりの金額

→ X*{1000/(1000-Y)}


具体的に「X円/1000gの豆を購入し、生豆時点の選別で10%減少→水分で10%減少→焙煎後に10%減少」というケースを想定すると

A:X×1.1×1.1×1.1=1.331X円
B:X×10/9×10/9×10/9≒1.371X円

AとBの差はおよそ4%とその差は大きく、これは高い豆を使うほど(Xの値が大きくなるほど)この4%の差が大きくなります。


実際には各工程10%減少で済むことは常ではなく、大きなもので30-40%の減少が見られることもあります。

また、本来であればサンプルから逆算するのではなく仕入れたロットを全て選別した方が確実に原価の計算を行うことができますが、

実際には一回あたりの購入ロットが大きい方が販売価格も抑えられることもあり原袋(数十kg単位)での購入がほとんどです。

そうなると母集団全てを選別して…ということはなかなか現実的ではありません。


3. 『母比率の推定』

全部(または十分に大きい量)を選別する時間に余裕がない時ほど、そうした試行回数や時間を計算で補うこともできるかもしれません。


「そのために、100gの生豆から24gの欠点豆が出てきたけど、60kgの麻袋から1.44kgの欠点豆があると考えていいのだろうか…」

実際には工数も時間もかかりますし、欠点豆の比率に上振れの可能性が考えられます。

標本(ここでは100gの生豆とします)の数は大きい方が良いですし、確実性が高まるだけで確かではないですが、

例えば、生豆時のハンドピックで100g中10gの欠点豆が見つかった時は、


標本比率:0.1(ここでは100gに占める欠点豆の比率)
95%信頼区間:±1.96(99%信頼区間なら±2.58)
標本の大きさ:ここでは100とします。
P:母比率(100gから10g欠点豆が取れたということは、全体からどれだけの割合の欠点豆が見つかりそうか)


0.1-1.96√0.1(1-0.1)/100⪳ p ⪳0.1+1.96√0.1(1-0.1)/100
0.1-0.0588⪳ p ⪳0.1+0.0588
0.0412⪳ p ⪳0.1588

結果:およそ4.1%〜15.8%の欠点豆比率が考えられる


※√を用いた計算であるので、近ければ近似値を用いるか、より正確には累乗根計算ソフトを用いる方が良いと思います。

※実際には標本も100gだと小すぎるはずです。



ただの通りすがりの珈琲豆屋であり、現在学生の身分でございます。
厳密な考証を欠いた議論になっていること予めご了承くださいませ。


そしてこれは自戒も込めてですが、選別を行うお店が少しでも体力面だけでなく経済的にも持続することができるように、今回このようにまとめてみました。


そしてどこかにいる、この投稿が響くような方々と出会うことができたら嬉しいです。



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