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Photo by
misakimochi
毎日400字小説「レギュラー」
誰かの垂れ下がった鼻のようにせり出したカーブを曲がると、海が太陽を反射してきらきらと輝いていた。クークーと、姿は見えないがかもめが鳴いて、砂浜には小さな子どもを連れた女が、まるで絵はがきのようにぴったりはまって立っていた。それにつられたわけではないが、おれは道のでっぱった部分に自転車を止めて海を眺めた。二年のうちにきつくなった制服のズボンから裸足のくるぶしがのぞいて、その部分に風があたってひんやりする。真面目にやってたあいつがレギュラーに選ばれたことに、ムカついているのではなかった。この世は所詮実力主義だと、どっかで思っていた自分に腹を立てているのだった。海は静かで、だけど一時も止まらず水面をきらめかせていた。鼻の下を腕で擦ると、少し潮のにおいがした。今日みたいなことは、この先何回だってあるのだろう。もちろん逆も。赤縞の服の子が母親のほうに歩いて行くのを眺めながら、そんなことを考えた。