マガジンのカバー画像

毎日400字小説

365
2023年10月24日~2024年10月23日 毎日1篇アップしました!
運営しているクリエイター

2024年1月の記事一覧

毎日400字小説「女友達」

 高校卒業後、フミカとマリは東京の大学へ進学し、チエリは一人、地元に残ったが、それは九月…

友直
1年前

毎日400字小説「不幸」

 彼女は生まれたときから体が大きかった。太い眉のせいで顔面もふてぶてしく、小学校入学時に…

友直
1年前

毎日400字小説「鈴木さん」

 彼の名前は鈴木といった。五十八歳で独り身で、家賃二・八万円、辛うじてバストイレがついて…

友直
1年前

毎日400字小説「いまだけ」

 ようやく寝てくれた。隣で聞こえていた話し声がだんだん途切れ、しまいには何を言っているか…

友直
1年前

毎日400字小説「親切」

 落とし物だと思ったとき、彼は体を屈めていた。到着のアナウンスが終わり、減速していた電車…

友直
1年前

毎日400字小説「どっち」

 私が会計をしている間、横でショーケースを覗き込み、顔を寄せてあれこれ相談しているカップ…

友直
1年前

毎日400字小説「夜のランニング」

 スッスッ、ハッハツ。短く鋭く、呼吸をする。スッスッ、ハッハツ。一定のリズムで腕を振り、地面を蹴る。急ぐ必要はない。ペースを守る。無灯火の自転車が追い抜いてゆき、前方のコンビニから、男女のカップルが出てくるのが見える。カップルは酔っているような大声でしゃべりながら、大きく歩道を使う。スッスッ、ハッハッ。二人にぶつからないよう、守はぎりぎり車道側に寄って、その横をすり抜ける。「テンちゃん邪魔じゃーん」背中で女のほうの声。守は顎を引いて、足を動かす。二人の笑い声は、どんどん離れて

毎日400字小説「かわいい」

「腕もシャツもびしゃびしゃで床も拭かなくちゃなんないし。なんでだろ、ほんと困る」  と、…

友直
1年前

毎日400字小説「ベンチ」

 男が一人ベンチに座っていた。ベンチから見えるのは日本最大を誇る湖の湖面で、その日の空を…

友直
1年前

毎日400字小説「夜道」

 つけられてる? と思ったのは、駅前のロータリーを抜け、路地に入り、一つ目の別れ道を左に…

友直
1年前

毎日400字小説「たまご」

「ずるい」と廊下で投げつけられた卵は見事私の額に当たってぐしゃりとひしゃげた。割れた殻と…

友直
1年前

毎日400字小説「代償」

 明日、仕事で必要なものがあるんだけどというので車を出したのに、なかったと言って買わなか…

友直
1年前

毎日400字小説「杏奈」

 小学校の入学式で初めて話したときから、杏奈は私の憧れだった。毎日遊んだ。互いの家にも行…

友直
1年前
1

毎日400字小説「駆け引き」

「どうしても戻りたい過去って、ある?」  馴染みのバーでカウンターに肘をつき、覗き込むようにして私の顔を見ながら、そんなことを言ってくる彼の真意がわからず、私は曖昧な笑みを返す。本当は答えなんか一秒で出る。三年前の京都出張。あのときお前の誘いに乗った私を止めたいに決まってるだろこのクソ既婚者が。そんな言葉を吐きつけてやったらどれだけすっきりするだろうと考えるものの、じゃあ終わりにしようと言われたらおしまいだから言うことは出来ない。好き。奥さんがいてもいい。ずっとずっとぴったり