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毎日400字小説「不幸」

 彼女は生まれたときから体が大きかった。太い眉のせいで顔面もふてぶてしく、小学校入学時に六年生と間違われるほどの貫禄があった。ついたあだ名は『横綱』。しかし大らかな両親と友好的な級友に囲まれ、すくすく育った。利発的で積極的、そして明るいという彼女自身の性格もあり、皆に好かれた。毎年学級委員長に選ばれ、生徒会役員にも立候補した。あくまで『横綱』は彼女の個性を表したもので、決して揶揄するものではないため、選挙ポスターには四股を踏んだ彼女のイラストと「どすこい」という文字が書かれた。ルッキズムが非難される時代でもあった。勉強もスポーツも得意で、一目置かれた彼女が、自分の外見の醜さに気づくことはなかった。
 だから他校の男子に恋をしたときも、まっすぐ告白した。そして言われた。
「鏡見てから来いよ。きめー」
 意味がわからず、救いを求めて親友を見た。親友は気まずそうに目を逸らすばかりだった。

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