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「班長と渋沢栄一」/2024デタ作文アワード応募作品


※この記事はデタリキの生配信「皆さまのおかげで5周年 デタリキZ公式生放送」内にて開催される「2024デタ作文アワード」に応募するのんびり班長によって制作された作文です。
プレイヤーID【236455017】

本文

 2019年11月12日、デタリキはサービスを開始した。この年は令和で表すところの元年、平成天皇の約200年ぶりとなる生前退位が話題になったのも記憶に新しいだろう。そんな時代の転換点である初年度に発表されたのが新紙幣の発行だった。

「新しい日本銀行券及び五百円貨幣を発行します※1」

 そう見出しを載せた文面を財務省のホームページから見つけた。2019年4月9日のものである。内容は新紙幣に変更する理由の他に紙幣の新しいデザインや規格といったものだが、やはり目を引くのは新紙幣に選ばれた方々のご尊顔に違いない。千円札に北里柴三郎、五千円札に津田梅子、そして一万円札に渋沢栄一だ。
 装いを新たにした紙幣達だがその発行日は2024年7月3日、この作文が披露されてる今となっては新紙幣を手に入れるといった楽しみも薄れ、日常に溶け込んだと感じる人も多いのではないだろうか。私たちが愛するデタリキが5周年を迎える年に誕生した新紙幣はこのわずか4か月で見慣れたものとなり、5年もすれば新紙幣ではなく呼び名は紙幣に変わる。そんな泡沫のイベントにどこかコンテンツが飽和する現代の在り方を感じては、淋しさに似た不安を憶えるのであった。
 
 そんな折、私はある記事を目にした。「新一万円札は祝儀に不適切」。検索すればすぐにヒットする記事だ、TVの情報番組でもネタにされたため知っている人もいると思う。かいつまんで説明すると、「女好きで正妻を持ちながら妾や愛人が多数いた人間(渋沢栄一)のお札を結婚式のご祝儀にするのはマナー違反ではないか」というものだ。
 私は頭に「はてな」が浮かんだ。初めはマナーという一種の制限が増えるような感覚に耐え切れず受け入れ難いと判断したためだった。しかしいつものようにデタリキを遊んでいると、どうもその感覚以外に引っかかる何かがあったから「はてな」が浮かんだことを頭が理解し始める。私はなぜあの記事に関心を持ったのだろう。少しして気づいた。それは班長の生き様を見てわかったのだ。班長は渋沢栄一と同じ「女たらし」、(班長の場合は天然の女たらしと言ったところだが)多くの女性に慕われる「艶福家」という共通点がたまらなくおかしかったから私にとって印象深い記事だったのだ。
 
 渋沢栄一、91歳で生涯を終えた彼は、生まれの地である埼玉県深谷市のホームページ上に存在する「渋沢栄一デジタルミュージアム※2」から引用すると、「栄一は、銀行を拠点に企業の創設・育成に力を入れて生涯に約500もの企業に関わり、約600の社会公共事業・教育機関の支援や民間外交に尽力しました。」とあり、「近代日本経済の父」という唯一無二の二つ名を冠している。しかしこうした功績があればあるほど、半生を語れば語る程、下半身はまるで班長という点において私は親近感を感じざるを得ないのだ。
 私は今後一万円札のご尊顔を拝する度に班長を思い出すに違いない。そしてそれはおよそ20年ごとに発行される新紙幣の誕生によって一万円札の肖像が変更されるまでは続くことになるだろう。
 私は生きていて淋しさに似た不安を憶えることがある。だが私とデタリキが今後約20年間に渡り渋沢栄一(一万円札)を介して繋がることができたのは、そんな泡沫のイベントのおかげというなんとも珍妙なオチなのであった。
(ちなみに渋沢栄一の命日は11月11なのだが、デタリキ誕生日の前日にあたる点も班長に転生したような気がしてくるので少し面白い。)

引用元


※1 https://www.mof.go.jp/policy/currency/bill/20190409.html
※2 https://www.city.fukaya.saitama.jp/shibusawa_eiichi/index.html


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