【読書】50代からの幸せな働き方
私は今40代半ば。健康に暮らすことができたと仮定したら、ちょうど人生の折り返し地点に差し掛かる時期。人生の選択肢が狭まる中で、少しずつ、どう登っていくのかだけでなく、どう下っていくのかということも考える時期に差し掛かってきたと言えます。
同年代の方は社会人としてここまで20年~30年ほどキャリアを積んできたことになります。大多数の方は、自分なりの専門領域が定まってきていると思います。そのことは強みである一方で、変化には相応の抵抗を感じてしまうという面もあるでしょう。
本書はタイトルに”50代から”とあるように、私のようなミドルシニアを想定してはいますが、どうすれば主体的に働けるか、ひいては人生をつくっていけるかという点においてはすべての世代に参考になるものです。
そもそも、ジョブクラフティングという学問領域はここ20年くらいで急速に論文が増え、知見が蓄積されてきている比較的新しい領域のようです。世の中はメンバーシップ型の雇用体系の維持が難しくなり、リスキリングが叫ばれる中で注目されている領域ではないでしょうか。
ジョブクラフティングを本書では次のように定義しています。
「自分の仕事を主体的に捉え直すことで、自分らしさや新たな視点を入れて、やらされ感のある仕事をやりがいのあるものへと変えていく力のこと」
そもそも私たちには、「与えられる仕事をそのままこなす」という選択肢しか残されていないわけではありません。
かなりの部分がマニュアルで手順が決められていたとしても、その仕事の意味や使命を考慮して「自分はこういう風に仕事を遂行する」と自分で決める裁量もどこかに残されています。
その意味で私たちは最終的には仕事を「選択できる」存在であるはずです。
そして、その選択できる存在として、主体的に仕事を行っていくどのような方向性があるか。これをジョブクラフティングでは3つの方向性で整理していきます。
1つ目が、「業務そのもの」。作業方法を見直してみたり、自分の得意なことを活かして仕事ができないかを検討していきます。マニュアルを変更したり、段取りを工夫するという身近な小さなアクションも、立派な業務クラフティングにあたります。
2つ目が「関係性」です。これは周囲とのかかわり方を変えていくことです。ちょっとした一言で相手とのこれまでの関係性が変わる可能性はありますし、普段でない会議に出る、他部署に声をかけてみる、普段は接する機会のないエンドユーザーの声を聞きに行くなどがそれにあたります。
そして3つ目が「認知」です。自分にとって取り組む仕事の意味づけを変えることです。
これには有名な事例が2つあります。一つは、ディズニーランドのお掃除係の話。もう一つは新幹線の7分間の清掃の話。これらのほかに本書ではイベントのアンケートの手書き入力の仕事なども例に挙げています。
仕事を単なる入力作業として捉えるのではなく、来場者の特性を理解する機会と捉えるなどと自分にとって意味づけをすることでやりがいが変わっていきます。
このようなジョブクラフティングのヒントはどのように思いつくのでしょうか。本書ではその方法も具体的に紹介したり、さらに、その中で具体的に1歩踏み出す方法も提案しています。
さらに非常に実践的だと思ったのが、ジョブクラフティングエクササイズとエネルギーマッピングという2つの手法の紹介です。それぞれの手法ではSTEPをふんで具体的に実務でどのようにジョブクラフティングを進めていくのかを説明しています。
自分の意思を持たずにいると、人はやりがいを失っていくものです。その意味で、仕事を自分のコントロール下に置きなおすスキルを身に着けることは、自分の幸福感につながっていくということが言えるのではないでしょうか。
変化は誰の身にも起きることです。変化に直面した時に、しなやかに変化に適応していくというマインドとスキルを持つことがジョブクラフティングだとするならば、誰にとっても必須のスキルと言えるのではないかと思います。
最後に、本書でも勧めていますが、このエクササイズを職場でワークショップとして実践することは非常に面白そうです。実践することでお互いの仕事の内容や負荷、取り組んでいきたいジョブクラフティングの内容を知ることができ、相互理解を高めることができるはずですし、チームとして自分たちの仕事を変えていくことができれば、業務改善や心理的安全性の推進にも役立つでしょう。
是非お手にとっていただきたいです。