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「Coffee Talk」のレポ

 来る1月30日発売のtoge productions製作(パブリッシャーはchorus worldwide)「coffee talk」体験版が絶賛配信中(PC,Switch,PS4)であるので、それについてまとめておきたい。

少し前に「HEADLINER;NOVINEWS」というマスコミを体験できるゲームに関して簡単にまとめたが、同じパブリッシャーから出ているということもあり、期待がそれなりにできるところでもある。
今回の舞台はシアトル。ノヴィスタンとかアルストツカのような架空の国ではなく、アメリカに実在する大都市だ。

ただ、面白いことに人間だけでなく、エルフやドワーフ、オーク、など幅広い種族が生活しており、ヒトもその中の一種族として生活しているという設定だ。
今回はそのようなファンタジー感溢れる諸種族を制作者側はアメリカに住む様々な「人種」のメタファーとして表現しているようだ。
歴史を紐解くと、アメリカ合衆国という国は移民で成り立ってきた国である。かつてはナヴァホ族やアパッチ族などで知られる先住民族が暮らしており、イギリスのメイフラワー号に乗ってこの地へやってきた人々、その他にもフランスやオランダなどはかつてアメリカ各地にに植民地を所有しており、この地へはそれ以外にもドイツやイタリア、スペイン、中国、日本からも多くの移民がやってきている。他にも奴隷としてこの地へやってきたアフリカ系、メキシコなどの中南米からやってきた人たちもいる。よくサラダボウルや人種の坩堝と表現されることが多いこの国はまさしく、チャンスを求めてシアトルにやってきたこの「ファンタジーな」種族と重なるようだ。

さて、そんな街に夜にしか営業しないという奇っ怪な喫茶店。それが本ゲームのメインステージとなる。そして決して流行っているとは言えないこの喫茶店に一人の客がやって来る。

フレイヤと名乗るこの女性。どうやら喫茶店に通いつめる常連客のようである。見た目はかなりフランクな服装ではあるが、おそらく種族的には人間なのであろう。
さらに話を進めていくとこの人物はライターであるらしく、この喫茶店に来ては執筆活動に精を出しているという。どうやら今日は仕入れなければいけない材料が業者の都合で滞っているらしく、少し材料が少なめらしい。(キッチンを見ると確かに空きが多いように見える)
おそらく、デモ版であるために少ないのかもしれない。本編では多種多様な注文に応えるための材料が揃っているに違いない。

早速、エスプレッソを作ってみることにするのだが、作り方がよく分からない。そこで画面左下にあるマーク(何かの携帯端末の一種だろう)をクリックしてみる。

なんだかiPhoneに似ているこの端末には「tomodachill」,「Brewpad」,「The Evening Whisper」,「Shuffld」という項目が。「tomodachill」はSNSの一種か何かで、知り合った人の情報や親密度などが表示されるものだ。chillという単語は寒気とか風邪とかそんな意味だったような気がするのだけれど(英語力が皆無なので分かる方は是非ご教授ください)。
「Brewpad」はコーヒーの作り方が見られる、「The Evening Whisper」はあとでも出てくるが、新聞やニュースアプリの類い。「Shuffld」はBGMを変更することができる。

レシピを確認した後、エスプレッソを作る。このゲームの流れは、お客さんが来店してその状況に合わせた飲み物を注文し、飲み物をお出ししてストーリーが展開するという流れだ。注文に沿った飲み物を出せば親密度も上がるだろうし、沿わなければバッドコミュニケーションになるのだろう。

フレイヤという女性は先程も少し出てきたイブニング・ウィスパーという新聞に寄稿しているライターらしく、それを抱えながらも大手の出版社に売り込みをかけ、小説を書いているらしい。なんとも果敢な試みだと思うが、進捗は芳しくないらしい。

そこへ一人のお客がやってくる。

角が生えていて、肌はピンク色。少なくとも人間ではないようだが、獣人系の類いだろうか。

注文されたココアを出し、話を聞いてみると、待ち人がいるとのこと。しばらくするとまた来客が。

一見、ヒトのようだが耳が尖っている。エルフかな?
苦めのコーヒーを注文されるが、さらにここへラテアートを描いてほしいとのこと。
自慢ではないが、筆者は絵心が全くありません。中学の頃、美術の評価は5段階の2でした。お察しください。

よって、絵は割愛させていただきます。
絵の腕に少しでも覚えのある方は凝ったラテアートをやってみてもいいと思います。スクリーンショットを撮ってぜひTwitterなどに上げてみてはいかがでしょう。
そんなこんなでラテアート付きのコーヒーを出してみた。

普通に笑われた。やかましいわ。

二人はどうやら付き合っているらしく、結婚まで考えているような素振り。
「なんだ畜生、美男美女で羨ましいぞ」と心の中で思っていたが、事態は少し複雑らしい。

ここで彼らの種族が性格に判明。彼氏はエルフ。彼女はサキュバスらしい。
ここでファンタジーな種族に詳しくない方々に軽く説明すると、エルフはヒトのような姿ではあるが、神聖な力を持っており、不老不死(作品によっては不死属性が無いこともある)という並外れた力を持っている。『指輪物語』のレゴラスなどがそれに当たる。エルフ以外と交わると不老不死の力を失うなんていうこともある。
一方のサキュバスは淫魔などという言葉でも知られ、悪魔の一種である。高名なトマス・アクィナスあたりの本や習俗的な伝承にも登場する割りと有名な種族だ。明言は避けるが、ヒトとナニをする感じの悪魔。それがサキュバスだ。

エルフの両親はかなりの保守的な考えの持ち主らしく、「異種族との結婚はもってのほか」で、サキュバスを蔑むような発言をしたらしい。

結婚できない以上、別れ話にもつれ込んだ。正直、見ていて辛い。
サキュバス側の両親もあまりエルフとの結婚には慎重なようだ。いっそ駆け落ちしようという話になるが…

彼氏の方が結構重たい。というかかなり重たい。困惑するのももっともな気がする。
彼女がしばらく考えたいと店を出ていってしまう。なんとか上手くいくことを願いたいところだ。
彼氏の方が追加の飲み物を注文したので、抹茶ラテを出してみる。というか海外でも抹茶ラテは飲めるのか。抹茶のお菓子などが海外からの旅行客には人気だと聞いたことがあるが、たいした人気ぶりだなあと感じる。

異種族、人種が異なる者たちの結婚というのは昔に比べれば簡単になっているとは思うが、今もなお純血主義やそれを快く思わない価値観は存在している。どちらが正しくて間違っているのかという議論は避けるが、偏見に基づく行為は好ましくないものであると思う。一見、カップル同士のよくある結婚に関するストーリーだが、十分にこのゲームの魅力を感じる場面ではないだろうか。現代社会に存在する「人種」の問題が日常生活によくある一場面という形で顕現する一例がよく表されているし、それについて善悪を語るのではなく、プレーヤーがどう思うかという所に着地している。
説教臭くなく、かつ考えさせられるという良い作り方であると感じる。

そんなこんなで一日が終わると、次の日がやってくる。このような感じでストーリーが進んでいく。ストーリーがマルチに進行していくのか、短編小説のように一つずつ進行していくのかは分からないが、多種多様な人種が住むこの街で紡がれるそれぞれのストーリーには何か魅力があるように感じる。
次の日の新聞の見出しは、「ゾンビウイルスがアフリカからシアトルに上陸したおそれがある」という見出し。なんだかエボラ出血熱や昨今の新型コロナウイルスを彷彿とさせる。他にも、食料品の仕入れが滞っているなどのニュースがあるようだ。社会や街の情勢の変化がこの喫茶店にも何かしらの影響を与えていくのではないかと思う。「HEADLINER」ではこのような街の人に影響を与える立場であったが、今度はその影響を受ける側である。二つのゲームに直接的な関わりはないが、両方ともプレイすることで感じることや得られるものはさらに深まると思う。

ここでデモ版は終了。

時間としては少し短めだが、このゲームがどのようなものなのか、そして重点はどこにおかれているのかということを感じるには十分であると思う。

昨今はグローバリズムという価値観の変化や人種差別問題、移民の問題などがひっきりなしに取り沙汰されている。複雑で、分かりにくい問題で日頃からあまり政治的な問題に関わらないようにしている人にもこのようなゲームを体験してほしいとそう思える作品に仕上がっていると感じる。
現実が抱える問題を「ファンタジー」と「コーヒー」という触れやすいものを通して感じてみるというのも良いのではないだろうか。

『coffee talk』
2020年1月30日発売予定
パッケージ版3980円(税別)
ダウンロード版1600円(税別)

ダウンロード版安くない?めっちゃお得だ…

<リンク>
「coffee talk」公式サイト
https://chorusworldwide.com/coffee-talk-jp/

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