虎の上に乗ったガチョウの飼い主の鬼

(おはなし)
「虎の上に乗ったガチョウの飼い主の鬼」

つめたい山奥の登山客が白骨化しそうな洞窟に、一匹の虎が電子レンジでチャーハンを温めていました。
「ねえ、まだなの?」と、その虎の子供の虎は言いました。
「はいはい、もうすぐですよ」
あと残り3分でした。

そこへ一匹のガチョウが、音も立てずに、ポストの中へ手紙を投函したんですね。ああ、このガチョウは郵便配達屋さんです。
それでいて、お腹が減っていたのでした。
毎晩続く飲み会で気の小さいそのガチョウは、あまりものを食べることが出来なかったからです。

ばたーん!と音がしました。
なんだろうと虎とその子供の虎が見ると、ガチョウが倒れていました。
「ねえ母さん、このガチョウさん、具合が悪そうだね」
「そうねえ、ここは救急車に連絡した方がいいかもしれないわね」

そして呼び出した電話先で、鬼のお医者さんがやってくる事になりました。
鬼のお医者さんはガチョウを見るなり「やや、これはわしのガチョウのポンポロではないか」と言いました。
「知り合いなの?」と子供の虎が聞くと、
「知り合いも何もわしの家で一緒に暮らしとるガチョウじゃあ」と言いました。

「あら大変、このガチョウ、虫歯があるわね」と、虎のお母さんは言いました。お母さんの虎は虫歯に詳しかったんですね。
それでたしかに鬼のお医者さんもそのガチョウの虫歯を確かめると、
「ううん、歯の磨き忘れにちがいない」
と言いました。

そういうすったもんだがあった後、お母さんの虎はガチョウを担いで、その開いた口の中の歯をお医者さんの鬼が治療し続けました。
3分ぐらいでした。

虎の子供はひとり、色々終わった後の夜眠る時に思いました。
チャーハンが美味しかったことと、あのガチョウには歯というものがあったんだな、ということ。
あれ?鳥には歯があったのかな。それとも、お母さんと鬼には分かるようなものがあったのかな、とか、思いながら、だんだん眠くなりゆきました。

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