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トムビッケさん
(おはなし)
「トムビッケさん」
緑色の羽を持つトムビッケさんは、眼鏡を直しながら、新聞を片手に持ち、二階に住んでいるカモメたちにご飯をあげてから、自室に戻ってコーヒーを淹れました。
そうしてから、やがて眠くなったので、一旦辞書を置いて、鳥たちの鳴き声がゆーるゆると聴こえてくるまで目を閉じました。
テレビでは「鬼ヶ島三兄弟」が放映されていました。
この「鬼ヶ島三兄弟」という物語は、鬼ヶ島の脇に作られた、鬼ヶ島の別荘地が舞台で、そこで繰り広げられる鬼たちの就職活動を描き出した社会派のドラマなのでした。
トムビッケさんが眼鏡をかけた頃、その番組は終わっていて、「最後の料理」というバラエティ番組に変わっていました。
それで、ピンポーンとチャイムが鳴って、あらやだ、誰がきたのかしら、と思ったトムビッケさんは、自分がパジャマのままであることに気付きました。
こうしてトムビッケさんが衣服を着直している間に、ぶるるるるるとバイクが立ち去る音がして、もうチャイムを鳴らした人が配達員であったことと、自分が出遅れたことが分かりながらも、ポストを開ける為、外に出ました。風は少し冷たいものです。
木の葉がひとつ落ちていました。
トムビッケさんは思いました。そうだ、これからは早めに朝、散歩をして、料理もしよう。
そうすれば、配達員にもご挨拶できるかもしれない、と思いました。
そうして、ご不在連絡票に書かれた電話番号に電話して、さっきはすみませんでしたね、と言いました。
これから伺います、とのことでした。
完
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