お茶屋さん。かろうじて、お菓子をほどほどに食べる
(おはなし)
「お茶屋さん。かろうじて、お菓子をほどほどに食べる」
ギンザと呼ばれる海底からややも上がったところにある港町の居酒屋で、筋肉自慢をする為にムキムキの男と女がアームレスリング競争をしていた最中、そこから三件離れた場所にあるお茶屋さんは今日のシャッターを降ろしています。
そこに妖怪のアカナメが現れて、「お菓子をください」と言いました。
お茶屋さんは、「もう閉店です。それにここはお茶を売るお茶屋さんですよ」と言いました。
すると、アカナメは少し泣きそうになりました。今の今までつらいことがあったんだと思います。
そんな夜、お茶屋さんは、ケーキを作り始めました。
がちゃがちゃ、ぐるぐると、台所のお鍋や色々なものを使って、一人前のケーキを作ることが出来ました。
ファッツアーユードゥーイング、と、テレビから付けっぱなしになっていた番組から聞こえてきて、自分が夜更かしをして朝に光が差し出したことに気付いたお茶屋さんは、今日のお店を開くための準備を始めました。お掃除をしなくてはいけません。
それで一旦テレビの電源を止めたお茶屋さんは、朝ごはんにケーキを食べることにしました。フォークの小さいものを持ってきて一口食べるととても甘い香りの優しい味わいがするのでした。
飲み物はホットの麦茶にしたとあります。
そして間も無く開店し始めたお店から、30分ほど過ぎた頃、再びアカナメがやって来ました。そして再び「お菓子はありませんか?」と尋ねたので、お茶屋さんは昨日作ったケーキの残りをアカナメにおすそ分けしました。「ありがとうございます」そう言うとアカナメはケーキをペロペロッと食べました。
外に出てお掃除をしてみると、近くの居酒屋ではアームレスリングの決勝戦を告知するポスターが貼られていました。鳥が道端の何かをつついていました。
海は広がりながら、波は静かでした。
お茶屋さんは一息、タバコをふかすと、息をふうと吹きました。
空はどこまでも遠く薄水色なのでした。
完