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「青少年読書感想文全国コンクール」といえば
「青少年読書感想文全国コンクール」と聞いて、連想されるこのシンボルマーク。夏休みに書店へ行くと、一等地の売場にはこのラベルが巻かれた本が山積みにされていますよね。
これは、ギリシア神話に登場する羊飼いと羊の群れを監視する牧羊神(Pan/パン)が笛を吹く姿を表しています。牧羊神は二本の角、山羊の脚、アゴヒゲが特徴で、陽気で智恵を有しているそうです。牧人の好む葦笛アウロスはパンが創ったとされ、パン自身も好んで吹奏し2本同時に演奏できたと伝承されています。
このシンボルマークの歴史をたどってみましょう。
実は、第1回コンクールから使用されていたのではありません。『青少年のおおどか(おっとりしているさま、おおらかなさま)』な読書を称え、第15回コンクールを記念して選定されました。昭和44年(1969年)、具象彫刻家である桑原巨守さんが読書感想文コンクールのシンボルマークデザインを依頼され彫刻作品を制作したのですが、実際のところ笛を吹くパンをモチーフに選んだのか、その選定理由は不明と言われています。
一説として、パンが太陽神アポロンと音楽対決をした際に、周囲はパンよりも地位の高いアポロンを称賛するなか、ミダス王だけがパンを褒め称えたそうです。この逸話から、青少年読書感想文全国コンクールのシンボルマークには「他者の意見に振り回されず、あなたが心から良いと思ったことを良いと書きましょう」という願いが込められていると考えられています。
また、桑原さんの出身地であり桑原さんの作品を収蔵している渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館(群馬県渋川市)の学芸員・須田真理さんは次のようにお話をされています。
「絵画や彫刻などのモチーフとして、牧羊神はたびたび登場しています。読書を通じてそうした芸術作品の創造性につながっていくことを期待したのではないでしょうか」
以上より、青少年読書感想文全国コンクールのシンボルマークには「他者の意見に振り回されず、あなたが心から良いと思ったことを良いと書きましょう」、そして「読書を通じて創造性を育みましょう」という主催者、書店員、学校の先生方の強い願いが伝わってきますね。
次回は、<課題図書や自由図書などの選書方法>についてです。