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大阪国際空港(伊丹空港) ITM/RJOOの航空管制を聴いてみよう!✈
本稿の目次は次のとおりです。
はじめに
趣味で大阪国際空港のTWR(飛行場管制席)管制をよく聴くため、航空管制官を目指している方だけでなく、これから航空無線を聴いてみようと思っている方、あるいは航空無線の魅力を知らない人に少しでもその良さを知ってもらおうという趣旨で執筆しました。
大阪国際空港の管制を一通り網羅しています。航空管制の一般論には極力立ち入らないようにしたため、地域特性などを反映させた結果、少なからず一般性を失っている可能性があること、ご了承ください。
筆者も勉強しながら書いているため、誤りがあればご指摘ください。
航空無線、どうやって聴くの?
筆者自身は、「LiveATC」というアプリで聴いています。Web版もあります。あるいは、YouTube上で「ITM SKY CAM」というチャンネルが24時間航空無線を流してくれています。空港周辺のライブカメラもあるため、視覚的に分かりやすく、お手軽かもしれません。メインはTWR管制ですが、サブでGND・DEP・APPの管制も聴くことができます。
本稿で出てくる専門用語の解説
アルファベットの読み方
航空管制においては、Aを「エー」、Bを「ビー」…と読まず、NATOのフォネティックコードを使用します。
慣れないうちは非常に厄介ですが、慣れればスラスラ読めるようになります。航空管制を聴くうえでは必須の知識なので、必ず習得してください。
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例えば、「JA09MY」を読む際は、「ジュリエット・アルファ・ゼロ・ナイナー・マイク・ヤンキー」となります。
IFRとVFR
IFRとは、Instrument Flight Rulesの頭文字をとったもので、日本語では「計器飛行方式」と言います。VFRとは、Visual Flight Rulesの頭文字をとったもので、日本語では「有視界飛行方式」と言います。
原則、定期航空運送便はIFRで飛行することとされており、管制官の指示に従って飛行する方式です。一方、ヘリコプターやプライベートジェットの場合にはVFRで飛行することもあり、パイロットの判断により飛行する方式です。
QNHとQNE
QNHとは、
セクターごとの基本的な交信
以下、交信例を示す際は、○が航空管制官、●がパイロットの発話を示すこととします。
全セクター共通の管制
①交信の始め方
必ず「呼び出し先、呼び出し元」の順番でコールサインを発話します。
●:Osaka TWR, IBX055.
○:IBX055, Osaka TWR, go ahead.
IBEX55便が大阪タワーを呼び出しているシーンです。呼び出し先・呼び出し元の順番になっていますね。
大抵、用件を付けなかった場合は、返答で「go ahead」(どうぞ)と言うことが多いです。
②高度計規制値の更新
〇:All stations, Osaka TWR, new QNH 29.93, QNH 29.93.
※ここで、"All stations"とは、簡単に言えば「この周波数を取得している全航空機へ」という意味になります。stationとは、無線を発する局のことを意味し、これはつまり航空機のことを指すということですね。
③交信が混み合っており、先に別の航空機に指示を出したい場合
一続きの指示の中で"break break"と言えば、「指示先を変更しますよ」という合図になります。
●:Osaka TWR, JAL17, approaching C1.
〇:JAL17 standby break break. ANA777, wind 270 at 3, RWY32L cleared to land.
※この場合は日本航空17便が大阪グランドからハンドオフされて、待機位置のC1に近づいていることを報告しているシーンです。一方タワーでは、グランドトラフィック(離発着機)が溜まっており、混み合っている状況を想定しています。日航機に指示を出す前に、全日空に指示を出したい意図です。
クリアランスデリバリー(CLR)
出発承認を行う部門です。
従来の交信例①:
●:Osaka DEL, JAL124, good afternoon.
○:JAL124, Osaka DEL, good afternoon, go ahead.
●:JAL124, to Tokyo, FL270, Spot17.
○:JAL124, cleared to Tokyo airport, via ASUKA 4 DEPARTURE, SHTLE TRANSITION, Flight Planned Route, maintain FL160, expect FL270. Squawk 3327, read back.
●:JAL124, cleared to Tokyo airport, via ASUKA 4 DEPARTURE, SHTLE TRANSITION, Flight Planned Route, maintain FL160, expect FL270. Squawk 3327.
○:JAL124, read back is correct. Contact Osaka GND 121.7 for push back.
●:GND 1217, JAL124.
従来の交信例②:
●:Osaka DEL, JAL2209.
○:JAL2209, Osaka DEL, go ahead.
●:JAL2209, Spot22, to Sendai, Flight Level 330, Departure Runway 32L.
○:JAL2209, 32L copy. Cleared to Sendai airport, via MINAC 3 DEPARTURE, NAGOYA TRANSITION, Flight Planned Route, maintain FL160, expect FL330, Squawk 3334.
●:JAL2209, Cleared to Sendai airport, via MINAC 3 DEPARTURE, NAGOYA TRANSITION, Flight Planned Route, maintain FL160, expect FL330, Squawk 3334.
○:JAL2209, read back is correct. Contact Osaka GND 121.7.
●:1217, JAL2209.
基本的に、交信内容は定型文の読み上げとなるため、近年はCPDLC(Controller Pilot Data Link Communications)と呼ばれるチャットのようなもので飛行承認を行っているようです。
グランドコントロール(GND)
地上管制においては、①プッシュバック(スポットから自走できるようにトーイングカーに引っ張ってもらう作業)と②タキシング(現在地から滑走路まで自走する作業)に大別されます。
①プッシュバック
●:Osaka GND, JAL12, good morning. Spot 22, information B, request push back.
○:push back approved RWY32
②タキシング
continue taxi to holding point C-1
タワーコントロール(TWR)
まず、大阪国際空港の滑走路構造を理解することが大事です。滑走路は2本で、A滑走路(1,828m)とB滑走路(3,000m)の平行滑走路があります。A滑走路の長さが中途半端な理由はこちらを参照。
特殊な場合
逆ラン運用
上で述べたとおり、大阪国際空港ではRWY32が主たる運用滑走路となっていますが、稀に(年に数回程度)逆側のRWY16を用いることがあります。これを逆ランと言います。
空港北側は山地になっており、RWY32のように直線的なアプローチができないため、RWY32方向に進入し、旋回しながらRWY16にアプローチをかけます。
VFR機の取り扱い
ここでは、VFR機の取り扱いについて述べます。
先述したとおり、VFR機はパイロットの判断により飛行するものの、TWRの管制圏(飛行場から半径5ノーティカル・マイル=9km、地表面から3,000フィート=900mの範囲)を通過するか、ヘリポートに離着陸をする場合には管制官の許可を得る必要があります。
①離陸時
●:Osaka TWR, JA110H, information J.
○:JA110H, Osaka TWR, go ahead.
●:JA110H, request departure from heliport.
○:JA110H, rojer. Report when ready.
●:JA110H, now ready.
○:JA110H, wind 260 at 8, cleared for take off from heliport.
●:Cleared for takeoff from heliport, JA110H.
・・・
○:JA110H, report leaving control zone.
●:Report leaving control zone, JA110H.
・・・
●:Osaka TWR, JA110H, leaving control zone.
〇:JA110H, rojer. Frequency change approved.
●:Frequency change approved, JA110H.
②着陸時