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-序章-プロの世界で活躍し続ける選手は何が違うのか。
✔︎導入(背景と問題提起)
*プロで活躍し続ける選手は何が違うのか?
プロサッカー選手として活動を始めて5年。まだまだ浅いキャリアではありますが、それでも様々な経験をしてきました。
実際にプロの世界に入ってみて強く感じるのは、「プロになるまでも大変だけど、プロになった先で活躍し続けることはもっと大変。」ということです。
僕自身、プロ2年目に公式戦出場が0試合で契約満了を経験した時は、プロの厳しさを痛感した瞬間でした。
しかし、そこから色々な出会いを通して、サッカー感がガラッと変わるような分岐点があり、少しずつこれまでとは違った手応えを感じる機会が増えてきました。
その結果もあってか、今年に入ってJ通算100試合出場を達成しました。この数字にはそこまで価値はないかもしれませんが、自分の中で何かが変わった証にはなりそうです。
この自分の経験から、プロの世界で活躍し続けている選手と、僕のように苦労しやすい選手の違いについて深く考えてみることにしました。
技術、フィジカル、メンタルといったさまざまな要因が考えられる中で、最近特に強く感じていたのが『サッカーIQの差』でした。
*目に見えやすいスキルでの差別化が難しい今、際立つサッカーIQの重要性
現在はインターネットの普及によって、トップ選手のプレーが見やすくなったりと、質の高い情報に誰でも簡単にアクセスできるようになりました。
その結果、サッカー選手の技術やフィジカルなどのレベルは格段に向上していると思います。日本でも大学生がプロに勝つことが珍しくないのもその一例かもしれません。
世界のトップリーグを見ればさらに分かりやすく「上手くて、強くて、速い」といった怪物のような選手ばかりの印象を受けます。
つまり、レベルが上がるほど、技術やフィジカルといった目に見えやすいスキル“だけ”では周囲と差をつけづらくなっていると思います。
しかし、その中でもメッシ選手のようにトップレベルで長年活躍し続ける選手たちがいるのも事実。
あれだけ活躍していれば、徹底的なスカウティングを受け、日を追うごとにプレーしづらくなっているはずなのにも関わらずです。
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メッシ選手の活躍を支えている要因として、圧倒的な技術や身体の使い方のうまさなどが挙げられるのは言うまでもないと思います。
しかしながら、単純に技術やフィジカルを他の選手と比較してみれば、メッシ選手よりも両足が使える選手がいたり、メッシ選手よりも身体が大きくて、足が速い選手はいるはずです。
それなのにも関わらず、単発的な活躍ではなく、“継続的な活躍”ができているのは「(その時の状況に合わせて)自分が持っている技術やフィジカルなどをいつどこで発揮するか?」と考えるような、目には見えづらい『思考(サッカーIQ)』の質が高いからだと考えました。
*なぜ思考(サッカーIQ)の質が継続的な活躍を支えているのか?
これを『道具のハサミ』に置き換えて整理してみます。
例えば、「ハサミを使って紙をまっすぐに切る」といった単純な技術勝負では、大人も子どももそれほど大きな差は生まれません。
しかし、ハサミを「何を目的に、いつどこで何に使うか」というハサミを使うまでの思考の部分では、人によって大きな差が生まれるはずです。
ある人はハサミを使って美しい紙細工を作るかもしれませんし、別の人は使い方を間違えて、危険な道具として使ってしまうかもしれません。
サッカーもこれと同様です。技術やフィジカルはここでいうハサミ(道具)であり、これらを「何を目的に、いつどこで何に使うか?」という、思考の部分によってプレーの質に大きな差が生まれます。
使い方が良ければ最高のプレーにつながるでしょうし、使い方が悪ければ自分の持っているスキルをうまく発揮できなかったり、チームに迷惑をかける可能性もあります。
ということを踏まえて、メッシ選手のように長年トップレベルで継続的に活躍している選手ほど、技術やフィジカルのレベルが質が高いことは大・大・大前提ですが、それらを最大限に活かすことができる思考(サッカーIQ)の質も圧倒的に高いと考えました。
よく「日本人は技術力はあるけど、サッカーは下手。」みたいなことが言われますが、それもここにヒントがありそうです。
*『サッカーIQ』という曖昧な概念
最近、サッカー選手の頭の良さを『サッカーIQ』と表現することが増えてきていると思います。
ネットやYouTubeで調べれば「ポジショニングがいい」「相手を見てプレーできる」「状況判断がいい」といった特徴や、具体的なポジショニングの良いプレーなども紹介されています。
ただ、忘れていけないのは、これらはあくまで結果(表面上の部分)に過ぎないということです。
本当に重要なのは、これらの行動の背景にある目的や意図、基準などを本質的に理解することだと思います。
なぜなら、サッカーは相手がいることで絶えず状況が変化するため、『教科書通りのプレーをそのまま真似すればいいスポーツ』ではなく『その時の状況に合わせて、自分で考えてプレーを変化させなくてはいけない(相手と駆け引きする必要がある)スポーツ』だからです。
表面上の部分(具体的なプレーや立ち位置)だけを切り取ってそのまま真似をしても、その時の状況に合った適切な判断ができなくなったり、レベルが上がるほどうまくいかなくなりやすいと思います。
だからこそ、答えだけを知るのではなく、自分で答えを導き出すための公式(本質)まで理解しておく必要があると考えています。
現代サッカーにおいてサッカーIQの重要性が増しているのは明らかです。しかしながら、日本サッカー界では『サッカーIQ』という言葉だけが一人歩きしていて、実際は人によって解釈が異なるような曖昧な概念として扱われていると思います。
ここ最近、サッカーIQに関する情報がどんどん増えてきていますが、このまま曖昧な状態が続けば、「何が本質的な情報で、何が本質とはズレている情報なのか」を見極めることが難しいと思います。
その結果、「もっと成長したい!」と思っているサッカー少年・少女たちが、誤った情報に惑わされ、本質とはズレた解釈のままサッカーを続けて苦労してしまう、といったことが起こってしまうかもしれません。
*13歳からのサッカーIQ
このような背景もあり、記事を書いてみることにしました!
タイトルを『13歳からの〜』にした理由はいくつかあります。
1つ挙げると、この年齢ぐらいから成長期が重なり、技術やフィジカルといった目に見えるスキルだけで真っ向勝負がしづらくなった実体験があることです。
技術やフィジカルを磨くこともとても重要なことですが、この時期から「何を考えてプレーしているか」によって、その後の選手の可能性が大きく変わるターニングポイントになると思っているので、このタイトルをつけました。
ということで、『サッカーIQ』という謎めいたものを整理するために、3章に分けて整理してみることにしました!
第1章:サッカーIQの正体
第2章:そもそもなぜサッカーIQが大切なのか
第3章:サッカーIQの具体的に身につけ方
あくまでも自分はこのように考えているという内容なので、ぜひ一緒に考えてみてほしいです!
前置きが長くなってしまいましたが、ではスタート!