②”4つの集中モード”から整理する、サッカーにおける適切な集中状態を使用できる"前提条件"とは?
前回。
前回の記事で、競争闘争理論で書かれている『サッカーで求められる適切な集中状態』について改めて整理してみました。
本書ではその集中状態を、"周りが見える(気づける)"状態である『外的集中』というように表現しています。
そして今回の記事では「外的集中を使えるようになるためには、大前提として〇〇ができていることが条件だよね?」という基礎中の基礎みたいな話をしてみたいと思います。
集中力は4つのモードがある。
ここからは『Focus 脳が冴えわたる4つの集中』という本を軸に考察していきたいと思います。
こちらの本は、『広く、狭く/内に、外に』という4つの要素から、『4つの集中力』について解説してくれています。
ーーー
「内に」:自分に意識が向いている状態
「外に」:自分の外側に意識が向いている状態
「狭く」:1つの物事に向いている状態
「広く」:たくさんの物事に意識が向いている状態
ザックリとした詳細は以下の通り!
①『外に、狭く』(入門集中)
→一般的にイメージされる集中力。
例)目の前にある仕事や勉強に意識を向け、他の情報に邪魔されることなく、打ち込んでいるような状態。
②『内に、狭く』(記銘集中)
→1つの課題に対してじっくり考え込んでいるような状態で、課題解決型の集中力。
例)ロダンの彫刻の『考える人』みたいなイメージ。自分の頭の中を整理したり、過去にあったことを思い出している時に使われる。
③『外に、広く』(俯瞰集中)
→目の前の作業に注意を向けながらも視野を広く持ち、他のことにも意識を向けることができるような状態。(1つのことに精通している人ができる集中)
例)食器を洗いをしながら部屋を見渡したり、人と話せたりするような状態。
④『内に、広く』(自在集中)
→ぼーっとしているようで、無意識に近い状態で自由気ままに考えを巡らせている状態。
例)湯船に浸かりながら色々な想像・妄想している時などに使われる。
これを『競争闘争理論』に当てはめて考えてみると、、、
①『外に、狭く』の入門集中
→『競争』で求められる内的集中
③『広く、外に』の俯瞰集中
→『闘争(サッカー)』で求められる"外的集中"
になると考えました。
そこで俯瞰集中から外的集中のヒントを得ようとしてみることに。
無知すぎる対象には
使えない俯瞰集中
本書では俯瞰集中のことを以下のように表現しています。
そして、俯瞰集中を使えるようになるための条件として以下の1つが挙げられていました。
例えば、初めて補助輪を外した状態で自転車に乗った時。
*最初の方は…
→補助輪を外した状態での運転に慣れていないので、ハンドルのコントロールやペダルを漕ぐタイミングなど、1つ1つの動作に対して意識的に注意を向ける必要があり、周りの状況を把握する余裕がない。(入門集中の状態)
*慣れてくると…
→サイクリングしながら、友達と話したり、音楽を聴いたり、周りを見る余裕も生まれてくる。また、たとえその最中に交差点から急に子供が飛び出してきても、しっかり気づき、ブレーキをかけることもできる。(俯瞰集中が働いている状態)
つまり、目の前のことで精一杯になっている時(1つのことに意識が”強く”向いている時)は、周りに意識を向ける余裕がないため、俯瞰集中(外的集中)が使えなくなってしまうとのことです。
であれば、サッカー中も目の前のことに意識が強く向いてしまっている時ほど、外的集中が使いづらいことが示唆されます。
ちなみに、俯瞰集中(外的集中)ができるようになるまでのステップとしては以下のようになると思います。
①1つのことに対して
意識を向けて取り組む(入門集中)
↓
②質の高い取り組みと
振り返りを繰り返していく。
↓
③知識と記憶が溜まり、動きに慣れてくる。
少しずつ無意識に体が動くような状態になる。
↓
④俯瞰集中が使える状態になる。
(別のことに意識を向けれるようになる)。
『無意識』が外的集中の土台。
上記のことを踏まえると、サッカーのプレー中に外的集中が使えるようになるためには『無意識』を作り出すことが重要なことが考えられます。
その1つの事例として、基本的なプレーや身体動作などを無意識に行えるようにすることが挙げられると思います。
下記の画像の選手で整理してみると、、、
ドリブルをすることにまだ慣れていないこともあってか、視線が下を向いていて、ボール(を扱うこと)に意識が”強く”向いているように感じます。
この状態だと、周辺の影響に気づく余裕がないと思うので、相手が寄せてきていることや、フリーな味方がいることに気づきづらい状況にあると思います。
(意図的に視線を下げて、相手に見えてないように錯覚させるテクニックとかもありますが。)
また、この時に腕を使って相手の位置を把握することもできますが、その際にもできるだけ無意識に腕が使えることが求められると思います。
というのも「腕を使わなきゃ!」と意識してしまった時点で、上記と同じように他のことに意識が向きづらい状況になっているからです。
一方で、ドリブルするときに、ボールにそこまで意識を向けずにプレーできる選手であれば、その分顔を上げたり、間接視野で周りに気づけたりと、周囲に意識を向けることができる(外的集中が使える)と思うので、プレーしやすくなると思います。
まぁ当たり前の話ですよね。笑
[補足]
『プレーや身体動作が無意識に行えるようになるまでの流れと、最終的に辿り着きたい天才たちの事例』
ということを踏まえ、改めてポイントを整理してみると、、
[外的集中が使えない状態]
→1つのことに”強く”意識が向いていて、シングルタスクしかできない状態。
[外的集中が使える状態]
→1つのことに”少しだけ”意識が向いていて(もしくは無意識)、他のことにも意識を向けることができる。マルチタスクができる状態。
このように言えそうです。
「自分はいつ、どんな時に
外的集中が使用できるのか?」
を整理しておく。
サッカーのプレー中に外的集中を使いやすくするためにも、『自分がどんな時に外的集中が使えていて(無意識にプレーできていて)、どんな時に使えないのか(有意識でプレーしているのか)』を整理しておくことが大切になってくると考えています。
理由は大きく分けて2つ。
①有意識→無意識への変換をスムーズにするため。
その選手によって無意識にできるプレーは様々です。
例えば、、、
・トラップ
→インサイドトラップするときに関してはボールを見ない(無意識)で止められるが、アウトサイドでトラップするときはボールに意識が向きやすい。など
・ドリブル
→フリーでボールを運ぶ時は顔を上げられるが、相手が少しでも寄せてくると、ボールに意識が向きやすくなる。など
慣れ(無意識)を作るためにも、まずは一つのことにフォーカスして取り組むことが大切だと思うので、効率的に外的集中を使える状態を構築するために、『自分が意識を向けないとできないプレーや動き』を整理しておくことも大切なのかもしれません。
②『自分にとってプレーしやすい状況を増やし、プレーしにくい状況を減らす』ことに繋がる。
例えば、利き足でボールを持っている時はボールに意識を向けなくてもうまく扱える(無意識)。ただ逆の足でボールを持った時はボールに意識を向けないとうまく扱えない(有意識)場合。
👇
「常に利き足でプレーする意識を持つ。そうすればボールを持った時に、外的集中が使える状態をキープできる。仮に逆足でボールを持たなきゃいけない場面の時は、周りの情報に気づきづらいので、シンプルに見えている味方にパスを出すようにしよう!」というようにプレーの判断を変える基準にすることもできます。
『慣れ(無意識)』は一朝一夕で習得できるようなものではないからこそ、自分ができないことを理解し、プレーの判断を変えることも大事そうです。
ということでここまでをまとめると、、、
サッカーにおける適切な集中状態(外的集中)を構築するためには、
大前提として『サッカーをする上で必要な考えやプレー、動き方などをどれだけ無意識に行える状態を作れているかが鍵』というような内容でした。
✔︎無意識を作る方法の事例
今回は基礎的なプレーや動作の習得を1つの事例として挙げてみましたが、無意識を作る方法は他にもあると思います。
例えば『行動をパターン化する』という方法も一例です。
「センターバックがボールを持った時はこっちに動く」というように、行動をパターン化することで他のことに意識を向けやすくすることもできます。
(これは常に正解を探そうとする競争的なプレイヤーになりやすいので注意が必要ですが。)
チームとして「〇〇になったら△△をする」という共通認識を作っておくのも同様ですね。
✔︎有意識を作り出してしまう事例。
また逆を言えば、『何かに(”強く”)意識が向いてしまう状況ほど、外的集中が使いづらい状態』と言えるので、、、
・トラップがズレてしまったことで、「ヤバ!」とボールに強く意識が向いてしまっている時。
・パスがバウンドしている、パススピードが速い、といったボールに強く意識を向けないとトラップしづらい時。
・新チームになり新しい守備戦術を要求され、まだ動き方に慣れていない時。「この時は〇〇に動くんだったよな?」と、自分の動き方に強く意識が向いてしまうなど。
・プレー中に気になってしまうぐらいの痛みを抱えている状況
・周りの視線や声がかなり気になってしまう状況。
・何か考え事をしながらプレーしている。
・「ヤバい、ミスしちゃった。切り替えなきゃ。」みたいに自分の心理状況に強く意識が向いている時
・息が上がっていて「キツい...」と自分の状況に意識が向いている
・めちゃくちゃお腹が減ってる。めちゃくちゃお腹が痛い。
などなど
基本的には自分がボールを持っていたり、ボールが自分の近くにあるようなオンザボールのタイミングほど、外的集中が使いづらくなると思うのですが、
この上記の事例のように、仮にボールが逆サイドにあって、容易に周囲に意識が向けられるような状況であっても、何かに(一瞬でも)気を取られている時は、外的集中は使いづらい(サッカーをプレーしづらい)ことを理解しておく必要がありそうです。
ということを踏まえると、、、
自分がプレーしやすい(外的集中が使いやすい)状況を作るためには、技術的な部分だけ無意識にできるようになればOKというわけでもなく、
体や心、周囲の環境といった部分でも”無駄な意識が向かない状態”を作っておくことが重要だと思います。
(この辺りは④で整理してみます!)
ということで今回は、周りに気づける状態(外的集中)を作るための大前提の条件について整理してみました。
次回は「外的集中が使えるようになる前提条件は分かったけど、じゃあ実際の試合中にどんな情報に気づければいいのか?」というもう少し実践ベースな話を書いてみたいと思います。
(今回の内容を踏まえても、普段の自主練や日常生活をするにあたって、意識することが変わってくると思います。
そこで自分なりに「本来はもっと〇〇を意識した方がいいんじゃないか?」という仮説を立て、現在進行形で試行錯誤しています。その一部を整理してみました。)
[ホームページ]
[世界に1つだけのスパイクを!!
スパイクを通して、共に挑戦しませんか? Ultras ]