マガジンのカバー画像

ポパイと千夜千冊のあいだ

8
読んだ本を雑に、不定期に振り返ってみる。
運営しているクリエイター

記事一覧

2025年1月に読んで面白かった本5選

マイケル・ライアン、メリッサ・レノス『映像分析入門』フィルムアート社凄く面白い。「映画がなんとなく好きなんだけどもっと深く考えてみたい」と思ったことがある人は絶対に読んだら面白い。技術的な分析と批評的な分析の2部構成になっていて、どっちからでも、目次を読んで関心のあるところから読んでも面白い。 例えば自分が好きな映画の1つに「マージン・コール」というのがある。この映画で不良債権の大量保有が発覚し、その対処についてエレベーターの中で2人の行員が議論するシーンがある。なんとこの

2024年12月・年末年始に読んで面白かった本5選+α

12月・年末年始ベスト5ウォルター・シャイデル『暴力と不平等の人類史』東洋経済新報社  以前noteにも書いた『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』ともリンクする一冊。もしかしたら本文中で言及があったかもしれない。人間社会は戦争・革命・崩壊・疫病によって階層や格差が是正されてきたということを古今東西の歴史的な出来事を参照しながら明らかにしている一冊。日本の第二次世界大戦後の事例にも触れられているのでそういう意味では見た目(かなり分厚い)の割にすんなり読める。  そして現在は再び

2024年11月に読んで面白かった本10選

読書の秋、面白い本が豊作すぎた。どうにか「5選」でやろうと思っていたのに早速2倍にしてしまった… 先月、10月の5選はこちら 人文書ジョン・ロールズ『正義論』紀伊國屋書店 言わずと知れた現代哲学・倫理学の名著。正義とはなにか?について考えるあらゆる本や論文で絶対に参照されていると言っても過言ではない。そしてこのロールズを批判的に引き継いだのがみんな大好きマイケル・サンデル。正直サンデルよりもロールズの方が本としては面白い気がする。 斎藤環『イルカと否定神学』医学書院

2024年10月に読んで面白かった本5選

先月、9月の5選はこちら 10月の本5選ヨハン・ノルベリ『資本主義が人類最高の発明である』News Picks Publishing 資本主義がテーマで、翻訳が山形浩生という最高タッグの本。問題は、反・資本主義を自称する自分にとってどこまで許容できる内容なのかというところ。結論、かなり説得されてしまった部分が大きい。最近特に、インパクト投資やソーシャルビジネスにかなり関心と期待を個人的に高めているのも影響していると思う。 本書はつまるところ、手放しで資本主義がいいんだ!

2024年9月に読んで面白かった本5選

上半期の40選はこちら 村上春樹『1Q84』新潮社かなり今更という感じではある。というのも8月の頭くらいから村上春樹にハマっている。既に『風の歌を聴け』、『1973年のピンホール』、『羊をめぐる冒険』、『スプートニクの恋人』、『海辺のカフカ』やいくつかの短編集とユリイカの特集を読んだ。そして今月中旬、1Q84を読み終えた。 総じて村上春樹作品はイキった青年が年上女性とああだこうだあってセックスする話。という印象がある。ただし、そこまでの過程がとんでもなく重厚でページをめく

2024年上半期 読んで面白かった本40選

2024.9.10更新 24年上半期のテーマは大きく、「民主主義」、「効果的利他主義の倫理」、「資本主義」(柄谷行人の反動)3つだったと思う。色々読んだり積んだりした中から、「今後も読まれ続けるであろう本」、「単純に凄く面白かった本」、「参考になることが多かった本」を中心に、社会学や哲学、サイエンス、ビジネスまで40冊を選んでみた。 後半以降、面倒くさくなってコメントを入れなくなった。気が向いたら加筆する予定。 社会学フェイ・バウンド・アルバーティ『私たちはいつから「孤

なぜデータ主義は失敗するのか?

 『なぜデータ主義は失敗するのか?』は、北欧の戦略コンサルティングファームの創業パートナーによって書かれた本。  近年、小島武仁氏や中室牧子氏のような実社会のデータを用いる経済学者らによって、経済学的手法を用いた政策の立案や企業の制度改革などが進められている。いわゆる「エビデンス・ベースド(Evidence Based)」の動きは、政治や民間企業に留まらず様々な領域(*1)に広がっているが、本書はそうしたデータ主義に異を唱える一冊と言える。  筆者はデータに基づいた分析や

22年12月に読んだ(読んでない)本

 2022年12月に読んだ本を備忘録的に雑感とともに列挙。基本雑レビューなのでご容赦ください。読んだ(読んでない)は文字通り、読んだかもしれないし、読んでないかもしれないという意味です。本当はあと2冊(「教養としての認知科学」と「エスノメソドロジー」)あるけど感想も出てこないほど読んでないので1月に。 ◯Niklas Luhmann ドイツの社会学者、Niklas Luhmannの著作。特に面白かったのは「プロテスト」。全く無意味とは言わないまでも社会運動がオルタナティブな