Hiroaki Yutani

読んだ本のこととか聴いた音楽のことを書きます。

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    モジュラーシンセ初心者によるモジュラーシンセ関連のメモ

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意味のない文章を書きたい。

相づちのポイントは、何も言わないことにある。 俺は関西人なので、相づちの音は文字にすると、 「おん」 みたいになる気がするけど、正直なんと書き表せばいいか興味がない、ほどに相づちは意味を持たない。相づちは、実質何も言ってないからこそ無限の可能性があるし、未来にパスをつなげる戦略的な一手だし、くるりは君の弱さを探せる。 文章もそのようであるべきだと思っている。意味のあることを書いてはいけない。いや、意味のないことを書け、と言っているのではない。我々は、うっかり意味を踏み

    • 無職になって3か月が経った。

      「9月は行き詰まりの月だった」と前回書いたけど、10月はいわば刈り取りの月だった。行き詰まったので、新しいことはいったんストップして、とりあえず確実に成果が出ることをやろう、という、安心だけど退屈な月。 ということで、ここ 5 年くらいの集大成的なものをつくったり、すでにそこそこ作りこんでるけどあまり宣伝してなかったものの説明スライドをつくったりしていた。 まあ、真面目に応募すればグラント取れるようなネタだとは思っていて(応募したことないからよく知らない)、意味はあるんだ

      • 同意ボタン、尋問、中動態

        國分功一郎『中動態の世界』に「尋問する言語」という言葉が出てくる。 その急先鋒を行くのが、ウェブサービスの同意ボタンだ。われわれは日々、「同意しますか?」と尋問されている。利用規約に、Cookie の利用に、データの第三者提供に、尋問されてはやむを得ずボタンを押している。でも、そのボタンを押すとき、はたして人は何に同意しているのだろう。同意する、というのは一体全体どういうことなのだろう。 先回りして「あー、はいはい、利用規約よく読まずに同意しちゃう問題ね」という声に答えて

        • ツイッターが爆発四散したときの連絡先など

          おれが、おれたちが、インターネットだ! みたいなことを言うとき、おれたちは別にインターネットではない。むしろ、もっと上位の概念を参照して、ただそれを指す適切な名前がないから、仮に「インターネット」と呼んでいるにすぎない。それは、ぴかぴかした、希望に満ち溢れたもので、この汚くてどろどろした具体的なインターネットの向こうに透かし見える抽象的な概念だ。おれたちはインターネットではないが、「インターネット」という言葉の向こうにあるその大それたなにかの一員だ。だった。 「ツイッター

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          無職になって2か月が経った。

          なんか先月書いたのが不用意に暗いトーンになってたらしく、いろんな人から「元気?」という連絡をもらったけど、まあ元気は元気ですよ。むしろ、自分にプレッシャーをかけるために無職になったみたいなものなので、もっと元気じゃなくなってもらわないと困る。困ってる。と書くと、またぞろ困窮感が醸し出されてしまってニュアンスが難しい。ただの生存報告なので、なるべく淡々と書きたいですね。それではいってみましょう。 左手の肌荒れが限界だったので皮膚科に行った。そろそろ完治して料理とかお菓子づくり

          無職になって2か月が経った。

          最近聴いた曲(2024年8月後半~9月)

          折坂悠太 - 正気8月15日に公開された演奏動画。折坂悠太は、なんか食わず嫌いというか、今さら聴くのミーハーな気がしてなんとなく聴けてなかったけど、ぐっと引き込まれるきれいな歌詞だった。「そんな話はしていない 私は本気です」という、正気の人があまり言わなそうなセリフを真顔で言ってくることに度肝を抜かれた。正気でいると、正気でいるからこそ、正しさを貫き通さないといけなくて、それがために狂人のように扱われてしまいそうになる、その危うい空気が伝わってくるようで。正気を保つことの難

          最近聴いた曲(2024年8月後半~9月)

          幸田文『台所のおと』

          この本の表題作『台所のおと』は、鷲田清一の『「聴く」ことの力 ― 臨床哲学試論』という本で〈ふれる〉と〈さわる〉という概念の違いについて説明する中で、題材に使われていて知った。『台所のおと』について紹介する前に、まずはこの鷲田の『台所のおと』の紹介を紹介したい。とてもぐっとくるので。 「ふれる」のと「さわる」のはどう違うのか。ここで鷲田はもっと多義的な、厚みのある説明をしているが、平たく言えば、「ふれる」というのは相互に干渉がある(「ふれあい」)が、「さわる」はさわる側とさ

          幸田文『台所のおと』

          ハリー・パーカー『ハイブリッド・ヒューマンたち 人と機械の接合の前線から』

          アフガニスタン紛争で地雷を踏み、両足を失った作家の人のエッセイ。あるいはノンフィクション小説。なんと呼べばいいか難しい。端的に言えばこの読書感は SF なのだけど、フィクションではないので、SF からフィクションを取った残り、サイエンス、ということになってしまう。でも、サイエンスというよりはテクノロジーの話で、なによりもこれは、ヒューマン、についての話だ。SF が常にそうであるように。 みたいなストレートな書評は、この人の記事が素晴らしいのでこっちを読んでほしい(何を隠そう

          ハリー・パーカー『ハイブリッド・ヒューマンたち 人と機械の接合の前線から』

          無職になって1か月が経った。

          生きてます。それはそう。 最終出社日は6月末だったので、何も仕事をせずに過ごしてる日々は+1か月あるけど、野に放たれたのは8月から。昨日でもう1か月が経った。無職になれば何か面白いこと起こるかな、と思って無職になって、何も起こらないまま、1か月が経った。 机の上に積み上がっている本はぜんぜん減ってない。もう限界がきている帆布のショルダーバッグも縫い直せてない。小麦粉はお菓子にならず冷凍庫で眠っている。福岡に人に会いに行くのは予定が立たないまま。ラズパイピコは机の上で埃をか

          無職になって1か月が経った。

          最近聴いた曲(2024年7~8月)

          toe - NOW I SEE THE LIGHT日本のポストロックバンド。意外と曲ちゃんと聴いたことなかったけど、アルバム通して聴いたら、きれいなポストロックだな、って感じでよかった。 さらさ - 祝福NakamuraEmi の曲にさらさが出てて興奮してたら、なんと8月20日にアルバムが出るらしい。もう有名になってしまうんだろうな… Floating Points - Key1032019年に出たアルバム『Crush』の曲の MV も、この MV と同じく中山晃子が担

          最近聴いた曲(2024年7~8月)

          三宅夏帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んだ感想のメモ

          おれは働いていないのにいまだに本が読めないんですけど、どういうことなの?、と思って読んでみた。もちろんそんなことは書かれていない。 本全体の感想としては、たしかに切り口は面白いし鮮やかだけど、「その時代を代表する本」の数冊から数行を引用しただけで「この時代はこういう時代でした」とばっさり言い切ってしまっていいものなの?、というあたりが気になってしまった。これは個人的にこういう本に抱きがちな感想なので、この本が悪いとか不誠実とかそういうことではなく、単におれにはこの一冊だけで

          三宅夏帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んだ感想のメモ

          町田康『入門 山頭火』

          町田康の本で一番好きなのは?、と聞かれれば、名作『告白』を迷わず挙げる。 『告白』は、「河内十人斬り」という殺人事件の犯人が、なぜ十人斬りをしなくてはならなかったのか、という人間の深淵に迫っていく本だった。町田康の著作は、小説からエッセイまで幅広いが、その中でも『告白』は異彩を放っている。古典の現代語訳も面白いけど、またこういう社会派ドキュメンタリー小説も書いてくれないかなあ… と思っていた人は、この俳句の読み方の入門書のふりをした社会派ドキュメンタリー『入門 山頭火』を

          町田康『入門 山頭火』

          最近聴いた曲(2024年5~6月)

          2か月だけだけどなんかいっぱい聴いてた気がするのでメモっておく。今回は割とアルバムで聴いてたのでアルバムの名前で書いておく。 Broadcast - Spell Blanket - Collected Demos 2006​-​2009Broadcast の未発表曲集。Broadcast は大学生のころに聴きまくっていたのでつい聴いてしまう。思い出補正みたいなところあるけど、まあでもこういう未完成な感じが Broadcast のわりと好きなとこなのでいい感じな気はする。

          最近聴いた曲(2024年5~6月)

          樋口恵一郎『良いFAQの書き方──ユーザーの「わからない」を解決するための文章術』

          はじめに書いておくと、この本、タイトルを見て「おっ、面白そう、買ってみようかな」と思う人はそこそこいそうだけど、書かれている内容はたぶん多くの人にとっては直接は役に立たない。この本は、そこそこの規模のFAQを念頭に書いていて、「チーム内のノウハウ共有のためにちょっと FAQ を作ってみようかな」という程度の気持ちではちょっと取り組めないレベルのものになっている(し、たぶん相手がユーザーなのとチームメンバーなのとでは取るべき態度も違ってくる)。 でも、だからこそ、普段は接する

          樋口恵一郎『良いFAQの書き方──ユーザーの「わからない」を解決するための文章術』

          カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

          (これは、2017年に昔のブログに書いたやつをほぼそのまま移してきたものです) という本題とはまったく関係ないところで出てくる一文がなぜか印象に残った。 この本は「存在しないはずの問題」について語る本ではない。存在しないはずの問題は存在しない。人間とは、とか、平等とは、とか、そういう小難しい問題は、この本の中には出てこない。 主人公たちに不利な社会の仕組みは、当たり前のものとして存在していて、ことさらに解説されたりはしない。彼女たちは、その社会を、待ち受ける死を、当たり

          カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

          ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』

          (これは、2016年に昔のブログに書いたやつをほぼそのまま移してきたものです) ある本を「読む」というのはいったいどういうことなのか、という命題を掘り下げていく本。冒頭でバイヤールは、「読んでいない」という言葉に対して切り込みを入れる。 こうしてバイヤールは、「読んでいない」を擁護するばかりではなく、「読んだ」という概念に揺さぶりをかけていく。 本は、著者の意図通りに読まれるわけではない。さまざまに読まれ、あるいは読み飛ばされ、解釈され、伝聞され、さらには忘れられ、記憶

          ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』