勤続15年で変わったこと
気づいたら、15年同じ会社で働いていた。
変わらないようで、色々と変わったことを書く。
技術
技術は、ここ15年でとても進化している。
通信技術だけ見ても、テキストや写真が中心だったガラケーと3Gを経て、iPhoneのようなスマートフォンが台頭し4Gが普及した。
4Gは、想定外に自然に一気に拡大した印象がある。
当時出たばかりのスマートフォンが要求する通信性能は知れていた。YouTubeで1Mbpsも出れば快適で、3Gでも十分。けれども、デバイス性能、特に画面の解像度が上がり使い勝手も良くなった結果としてユーザのスマートフォンへの依存度が高くなり結果として通信の快適さへのニーズが高まった。
そして今、5Gが始まってきているところだ。ただ、当初イメージしていたよりも緩やかだ。スマートフォンは、案外4Gで十分だったりする。
ある程度の質の高さを持つ4Gのネットワークに対して、デバイスやアプリケーションが対応してくるのはもう少し時間がかかるだろう。以前、5Gエクスペリエンスという言葉が一瞬出たけど、いまいち浸透しなかった印象だ。
ここ最近のデジタルトランンスフォーメーションも技術的な変化点というよりは、コロナでのロックダウンによる半ば強制的な移行が契機になっている印象である。コロナで、Uber Eatsのような出前のオンライン化も進んだし、ファーストフードやコーヒーショップのオンライン注文も進んだ。これらは4Gの通信性能やキャパシティで十分耐え切れるレベルだ。古くからあるTCP/IPによる通信を大きく逸脱した要件はないのだから。
それは当然の考え方である。システム開発者は、5Gの特性を活かしたアプリケーション設計、機材選定、インテグレーションを積極的に行うモチベーションはあまりない。システムは、より幅広い条件で、しかも低コストに動作する方が有利だからだ。
5Gが浸透するのは、もう少しスマートフォンの買い替えが進むなどして5G端末やチップセットの価格が小慣れてからだろう。そうすると、これまでの3GPP標準のインフラは次第に5G対応となっていく。ここでようやく、通信キャリアなどが投資した設備を社会としてどう活かすか、リアリティが出てくる。
この時、5Gではないといけないか、という問いに対しては、「ユーザ観点では4Gでも良いだろう。でも、せっかく5Gがあるんだから敢えて4Gにする必要もないよね」という程度の重要性かもしれない。おそらく、5G特有の周波数帯(sub6やミリ波)による通信設備としての余力が5Gの方が高いことから、結果として5Gを進めないと社会が生み出すトラヒックを支えきれないと言うことになる。
総務省が掲げるような、5Gが社会を支える世界までもうちょっとかかりそうだ。
仕事の考え方
年齢を重ねてくることによるメリットでありデメリットだろうが、一つの物事に対する妄信的な執着が無くなってくる。
そもそも、会社に入った時には何故あれだけ仕事に対して責任を持とうと思っていたのか。長時間労働をしてまで会社にコミットしようとしていたのか。ビジネス書籍を読み漁り、自己研鑽に励んでいたのか。ちょっと謎である。
「最近の若手社員は・・・」と言う話はSNSで時折に聞くが、実際には昔の自分たちの働き方がおかしくて、今はそのギャップが出ている。責任は与えられた範囲の中では果たす努力をするべきだが、それらは個々の長時間労働労働で支えるべきではない。ちなみに、厚生労働省によると日本の労働時間は確実に減ってきているとのことで喜ばしい限りである (https://jsite.mhlw.go.jp/kochi-roudoukyoku/library/kochi-roudoukyoku/topics/topics222.pdf)。
また、仕事ができることは大したアイデンティティにはならないのだから、ビジネス書を読むこと自体はあまり意味があることではなかった。とは言っても、7つの習慣など、人としてどう生きていくべきかが書かれている本は役にたったか。そうではなく、表層的に仕事を効率よくやるとか、他者よりも抜きん出るとか、ビジネス的にはこう考えた方が良い、みたいものを読むべきかと言うのは悩ましいところがある。それを読んで、ちょっとしたテクニックを身につけて仕事が楽に進められるならやるべきだろう。しかし、こういった「ビジネススキルを磨くこと」に心を奪われてしまい、あまり向いてないのに会得しようとするのはちょっと大変な人生かもしれない
ちなみに、そのような考え方になったけれど、相変わらず労働時間はそこまで短縮できていない。仕事は効率的になっているのは確かで、あとはこの手のナレッジをどう周囲に伝えていくかが課題となる。
最近思うこと
技術は進歩してきているが、根本的なところは変わっていない。これは、どのような技術も一定の物理現象やモデルの上で成り立っていることに起因する。また、技術の進歩は連続的でありそれらは一足飛びに刷新されるものではない。新しい名前がついた技術がやってきても、基本を押さえていたり類似する概念を理解しておけば、ビジネスを行う上での話にはついて行ける。もちろん、そういった最新技術を最前線で実装していく人たちは、そんな生半可な感じではやっていけないのだろうけど。技術的には細分化、複雑化を辿っていることは確かで、そう言った意味では全体を広く深く理解する神のような存在はほとんどいなくなってきたはず。
ワークライフバランスは非常に大事だ。年老いた世代が、何時間も会社に閉じこもって、大した給料も得られず、よくわからない閉鎖的な企画で物事を進めていたのでは、次の世代は白けてしまう。自分の持っている技術的な知識、プロジェクト管理の考え方、基礎的なビジネススキルで次の世代の活躍を支えていけるようにならなければと思う。