詩集2

・缶ビール   タブを引っ張ると爽快な音を立てる
        勢いよく一口目を飲むと喉が鳴る
        決まってゲップが漏れる
        癖になる一連のお決まりの音

・重たい    眠れない夜に頭を締め付ける重いもの
        砂がいっぱいに入った大きな麻袋が体を包むよう
        頭の内と外を締め付ける
        雲霞のような砂に手応えはなく
        退けられない重さが僕を弄ぶ

・爪楊枝    歯につっかえているものがあるから普段は使わない爪楊枝を
        今日は使ってみる 僕は一生懸命せせくった
        思いのほか集中力がいる
        大きいものが取れた時気持ちが良くって
        何もないところをつつき続けた

・舌禍     口喧嘩なんかしたことない僕が
        いつの間にか悪者になっている
        何の気無しに僕が言ったことを
        みんなは僕よりもおぼえていて
        僕が無自覚なことの間のわるさ
        僕が蒔いた舌禍の種は知らない間に育っていた
        きっと誰かが水をやってくれていたんだろう

・拈華微笑   君とは親しいと思っているけれど
        言葉が足らないと不安になる
        言葉が足りない僕とそれでも
        一緒にいてくれる君が好き
        こんな恥ずかしいこと
        面と向かって言えないから
        華を捻って見せ合って
        微笑み合ってそれでいい

・滂沱     鉄砲水に流されてしまった僕は
        身動きひとつ取れず海へ流された
        雨催いも無しに大きな雨粒の驟雨は
        忽ち洪水へと変わった
        僕が海へ投げ出された頃には
        空はすっかり晴れていて
        金色の波粒が僕を包んでいた

・対象     永遠の観察者は
        色即是空に至り
        安楽の地に逢着

        
        
        

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