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アートが、“知らない=存在しない”に光を当てる。
「アレ、この人って… Appleの創業者、スティーブ・ジョブス?」
そう、スティーブ・ジョブスです。
最低限の荷物と、懐かしの初代Macを持ち、彷徨うような、行き場を探しているような、どこかに逃げているような…。
ジョブスは、僕らに何かを訴えかけているようにも見えます。
”難民キャンプ”に描かれた「絵」
この作品は、ストリート(路上)での表現を続ける正体不明のアーティスト・バンクシーが、フランス・カレーの難民キャンプで描いた「絵」(ウォールアート、壁画)です。
作品のタイトルは…
「The Son of a Migrant from Syria」(シリアからの移民の息子)。
![](https://assets.st-note.com/img/1655731853500-PMJZzSECmI.jpg?width=1200)
この絵が、描かれたのは2015年。
ヨーロッパが難民危機を迎えたタイミングにあたります。
ヨーロッパ難民危機とは、中東や北アフリカでの紛争や内戦を逃れ、ヨーロッパ(EU)にやってくる移民・難民の急増に端を発した「社会的・政治的危機」となります。
ヨーロッパ各国も、移民・難民に対して、手を差し伸べる必要性は理解しつつも…
受け入れる国の中で、経済的な不均衡(不平等)が生まれている等の問題により、ヨーロッパ(EU)加盟国間の対立が深まり、協調した対応が困難になってしまったのです。
バンクシーが社会に「問う」たもの
バンクシーは、難民キャンプに「絵」を描いた後、こんな声明を発表しました。
「難民は国のお荷物だっていうけれど、ジョブスはシリア難民の息子だぜ。その昔、彼の父親をアメリカが受け入れたから、年間70億ドルの税金を払う、世界に冠たるアップル社ができたんだ」
世界中の多くの人が熱狂するプロダクトを発明し、iPhoneによりスマートフォン時代を創った天才・ジョブスの誕生も…彼の父親に、手を差し伸べ、受け入れたアメリカがあったから。
(結果、税金という形で、アメリカも潤っている)
それに比べて、今のヨーロッパ(EU)はどうだ?何を争っているんだ?
バンクシーがそんな「問い」を、投げかけているように思えるのです。難民キャンプで、絵を描いたところにも、強いメッセージを感じます。
知らない=存在しない、にアートが光を当てる
ヨーロッパの難民危機自体は、複雑な事情や政治的な対応もあって、知識が不足している僕には、その評価(良し悪し)をすることはできません。
ただ、紛争や内戦という自分ではどうしようもない事情で、住んでいる国を追われてしまった人たちが、移動した先で少しでも平穏な生活が送ることができたらと思うのです。
2015年当時、ヨーロッパ難民危機のニュースは流れていたはずだけれども、僕の前を素通りしていました。(多くの残念なニュースの一つくらいになっていた)
でも、「アレ、なんでスティーブ・ジョブス?」「なぜ、彷徨っているんだ?」という違和感から、「なぜ、難民キャンプで描いたの?」(絵の描かれた場所)、作者の声明(メッセージ)から当時の社会事情を知り、僕はこの問題に思いを馳せることに至ったのです。
人は知らない限り、その問題自体が「存在しない」ことと同じです。
一つの絵を通じて、表現活動によって、感情を動かし、「存在」に光を当てるアートに、僕はとても惹かれるのです。
<追記>
バンクシー関連の記事は、こちらのnoteにもあります。
もし、気になりましたら、どうぞ!