カフェ・フローリアン ヨーロッパで最古のカフェ
今は観光客の多さにベニスの町は沈みかけているのだそうな。人々の交流は果てしなく、この町はどれだけ潤ってきたか。それはベニスの文化を高め花開かせたに違いない。
ベニスはヨーロッパにおいてコーヒー・ショップ、つまり今で言う喫茶店第一号ができたところとして知られていますが、このエピソード自体がこの町がどれだけ豊かだったかを物語っていると思います。
わたしたちもその店に行ってみました。サンマルコ広場に連なるアーケード街の一角にあるのですが、今、人がカフェ・フローリアンと呼ぶところがその店です。
アーケードの回廊のデザインもさることながら、このカフェも何とも味のある外観です。こじんまりした店内は今では観光客ばかりなのでしょうか。カフェ・フローリアンの内装やウエイターがあまりに素晴らしく格好良くて普段着の観光客が浮いて見える?わたしたちも旅行中のカジュアルさで出かけてもいいのでしょうか?そこへ座り込んでもいいのか、と思ってしまったのでした。
あるガイドブックには世界最古のカフェとありましたが、最古のものはやはりイスタンブールのものでしょう。カフェ・フローリアンが創業したのは1720年、そして当時はアッラ・ヴェネチア・トリフォンテと言う長い名前で呼ばれていたのだとか。意味は「勝ち誇るヴェネチア」なんだそうです。その頃、ヨーロッパ内で戦争が多発していたという背景からこのような名前になったようです。
しかしながら、カフェの名前がカフェ・フローリアンに代わるのに長くはかからなかったようです。この店名はフロリア―ノ・フランセスコーニから来ているとか聞きました。
このカフェは歴史が長い分、様々に人の話題に上るべきお話がある様です。例えば、今、私たちがちょっと気分を変えてコーヒーを飲みたいときに注文するラテを発明したのはこのカフェだそうです。ただのブラックコーヒーを提供巣rだけではつまらない、と新しいドリンクを模索し、その中でミルクで割ったカフェ・ラテがおいしいということに気が付き、カフェ・ラテが誕生した、と言う話です。
当時は存在しなかった「カフェ」をこのように作り出し、人々が交流を楽しめるカフェ・フローリアンは大きなブームになり、多くの有名人がここを訪れたようです。ただコーヒーを飲むための場所、それだけの目的の場所ではなかったということです。社交の場として仲介所としての役割をここは持ち発達していった喫茶店です。
人々はそこで交流を深めるほか、世間の情報について交換したり討論したりしていたのです。特に、イギリスロンドンにオープンしたコーヒーハウスは多くの人のたまり場となり、最終的には政治結社の集会場のような役割間d寧なっていったそうです。また、郵便物や新聞の集配所にもなったとか。
作曲家のワーグナーはたいそうカフェ・フローリアンが気に入って、朝食を食べに来ていたそうです。その他にも『クリスマス・キャロル』を書いたルイス・キャロル、『赤と黒』を書いたスタンダール、画家のモネとモナ、哲学者のニーチェ、『ハメルーンの笛吹き男』のゲーテなど、名前をあげていけばきりがないほどの名の知れた人々がここを訪れていたそうです。そんな人たちに会ってみたかったですね。
そンな人の中で絶対的にこの人は!と思ったのがカサノヴァです(先日も『カサノヴァ』という映画を見たが、もちろん部隊はベニスでした)。彼は1000人を超える女性と関係を持ったことで知られていますが、これってほら話でしょうか?カサノヴァはカフェ・フローリアンの初期からの常連客であり、コーヒーにアルコールを入れて楽しんでいたと伝えられています。女性との出会いを求めてこのカフェに来ていたとも。
実際、あらゆるタイプの人間がカフェ・フローリアンを訪れて交流することで、お互いに刺激を与え合い、文化的な発展に寄与したということでしょう。
金持ちを目当てに多くの娼婦たちもこのカフェに来ていたという話もあります。コーヒーを楽しむ人以外も多く滞在するようになったなった町、そんなベニスのカフェでは売春やとばくが横行、全く映画の中の世界と同じになっていったのです。そのため、政府は度々カフェに対する規制をするようになりました。そして、国内全体のカフェ撲滅作戦が2度も実施されたのです。それほどベニスのカフェの状況は荒れていました。が、市民はカフェを残していたかった・・・市民の抵抗により、カフェ文化は生き残ったそうです。
カフェ・フローリアンは1800年代から内装や装飾がほeとんど変わっていないのだそうです。ほとんどが1800年代に活躍した職人の手によって作られたもの、それがそのまま使われています。いかにも19世紀のヨーロッパ風といった金色の壁には、そこが美術館でもあるかのようにたくさんの絵画が飾られているのです。誰かが言っていました。「カフェ・フローリアンでコーヒーを飲むと、まるで美術館の中でコーヒーを飲んでいるかのような気分になる」と。現在でも、現代アートの展示会がカフェの一部を使って行われることもあるようです。
このカフェでは、パスタ、サンドイッチ、サラダなどの食べ物も供されます。人が多すぎてなんかゆっくりコーヒーを味わう・・・という雰囲気ではなかったような気もしますが、こじんまりしたコーヒー・ハウスはそれなりの雰囲気を醸し出していると思います。
ところで、coffee と言う言葉の語源、由来はですが、アラビア語でワインの意味があるカフアが影響しています。カフアはワインを意味するのでコーヒーと関係ないように感じるかもしれませんが、コーヒーにはワインと似たような覚醒作用があるので、それも影響して由来になったと考えられています。
イスラム教ではお酒を飲むことがタブーになっていますが、似たような興奮作用を持つコーヒーを代用品として飲んできた歴史があり、その流れがコーヒーの由来にも大きく影響を与えているのです。
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