Solo Capitalistという新しいカテゴリー
スタートアップにとって,調達における投資家の存在は欠かせません.その投資額,ネームバリュー,バリューアップパートナーとしての存在としても,投資家として招くことには非常に重要な意味があります.
投資家の区分で最も伝統があるのはVenture Capitalという形態であり,その後エンジェル投資家と呼ばれる個人投資家が出現し,さらにはスーパーエンジェルと呼ばれる人々も登場してきました.
ところが,ここに「Solo Capitalists」と呼ばれる新たなカテゴリの投資家が最近勃興しているとの記事がnext big thingで話題になっています.
スタートアップ投資家の行動変化
2019年にNotionが$10Mを調達したとき(バリュエーションは$800M),ラウンドをリードしたのはVCではなく3名の個人投資家でした.VCはラウンドに参加するだけの形で投資を行っていたのです.
2020年にFrontがシリーズCで$59Mを調達した際も,複数の個人投資家がラウンドをリードしており,CEOのMathilde Collinさんもブログで「伝統的なベンチャーファンドではなく個人のグループがリードしたのはこのサイズの調達では一般的ではない」と述べています.
これらの個人投資家がいわゆるエンジェル投資家と異なっているのは,彼らが自己資金で投資しているのではなく,自分たちで特別目的会社(SPV)を立てて,従来のLP投資家から資金を集めている点です.つまり,外部から資金を集めているのです.
他にも,従来エンジェル投資家はラウンドをサポートする形で投資していますが彼らはVCとラウンドのリード権を争っているそうです.こうしたことから執筆者のNikhilさんは彼らを「Solo Capitalistsという新たなカテゴリーだ」と言っています.
Solo Capitalistの特徴
記事で掲げられた特徴は以下のようなものです.
・ファンドにおいて各個人のみがGP(General Partner)になる
・投資チームにSolo Capitalist以外のメンバーはいない
・ファンドのブランド=個人のブランド
・スーパーエンジェルよりもファンドレイズが大きく($50M+),ラウンドでの投資額もスーパーエンジェルより大きい($5M+)
・シード,シリーズAやレイターステージでも伝統的なVCとリード投資家のポジションを競ってくる
エンジェル投資家の中では,「以前エンジェルとして活動していてその後小規模のベンチャーキャピタルファンドを立ち上げた」super angelと呼ばれる類の人たちもいるのですが,solo capitalistsが異なるのはファンドレイズするものの自分たちだけが投資メンバーであるという点でしょう.
Sole Capitalistsの例
また,記事では以下の6名の個人がSolo Capitalistの例だとして言及されています.
Elad Gil
Josh Buckley
Lachy Groom
Oren Zeev (Zeev Ventures)
Ray Tonsing (Caffeinated Capital)
Shana Fisher (Third Kind Venture Capital)
私もまだ詳しく調べていないものの,外部から資金を集め,従来のエンジェルよりも投資規模が大きく,自分だけで投資実行して,ラウンドをリードしようとする「Solo Capitalist」が出現しているのではという記事は,今後のスタートアップエコシステムのプレイヤーの変化の兆しなのかもしれません.
参照元記事:https://nbt.substack.com/p/the-rise-of-the-solo-capitalists