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CREATEファネルという新しい切り口 −『行動を変えるデザイン』を読んで①

- この投稿では,Stephen Wendelの提唱した行動変容デザインに基づいてその目玉とも言えるCREATEファネルについて解説していきます.-

(今日の小言)
リモートワークになって,辛ラーメンを50食くらい食べてしまっています.

はじめに

『行動を変えるデザイン』という本を読んで,実装案を考える際の思考フレームとして自分に導入してみたのでその話をしようと思います.長くなるので複数の投稿に分けて,まずは本書の目玉とも言える部分の学びを共有させていただきます.

この本って何を書いた本?

一言で言えば”行動変容デザインとは何か伝えること”

原題は「Designing for Behavior Change」で,著者のStephen Wendelは行動科学の専門家です.自身も2社のFounderであり現在はMorningstarで行動科学研究チームのヘッドを勤めています.

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行動変容デザインとは,「ユーザーの行動を変える目的をもったプロダクトをつくるため,4つの段階で構成されたデザインプロセスのこと」とされています.4段階というのは,理解・探索・デザイン・改善を指しているのですが,少し乱暴な言い方をすれば要するに「行動を変えたいと思うならこういう手順でプロダクトを作ろうよ」という本です.

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本に書いてあるのはざっとこのような内容です:

• 【第1部】そもそも人間ってどうやって行動を決めてるの? 
• 【第2部】プロダクト開発でのWhyとWhatを上手に決める
• 【第3部・第4部】実装準備の仕方
• 【第5部】改善ループを回そう

このブログではこれらを全て説明はしません.ある程度の部分は他のプロダクト開発の本にも書いてあるような内容なので,この本で特に面白いなと思った部分を選びました.

CREATEファネル - 人はどうやって行動しているのか?

本書の大きなtakeaway(学び)の一つは.行動に至るまでのプロセスを5ステップに分解したことにあります.

Wendel氏は行動までの基本的思考プロセスをCREATEファネルという形で示し,その中でも習慣となっている行動に追加で言及しています.

行動(Execute)に至るまでの5ステップとは以下の通りです:

Cue:きっかけ
Reaction:直感的な反応
Evaluation:費用対効果
Ability:実現可能か?
Timing:今できるか?
Execute:行動!

頭文字を取ったものがCREATEなのでCREATEファネルと呼ばれます.

実例で考えてみましょう.僕はたまにランニングするのですが,直近の”僕がランニングする”という行動にCREATEファネルをあてはめると以下のようになります.

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土曜日のお昼に玄関でお気に入りのランニングシューズが目に入り,「ああ一週間走ってないからそろそろ走らないとやばいなあ」と思い,「今ならいけちゃうな」と考えて走る.その思考プロセスはこのようにきれいに分解されるのです.

各ステップで人は離脱する

先ほどの例ではランニングに至る過程を示しましたが,当然ながらランニングしないこともあります.覚えておくべきなのは各ステップが離脱ポイントになっているということであり,だからWendel氏はこれを”ファネル”と呼んでいるのです.

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今度は離脱を説明する例を考えてみましょう.

Wendelさんの著書では「メール返信をタイムリーに行うことで未読を0件にしよう」と思い立った人が,「メッセージに目を通して削除or返信を行うためのTODOリマインダー」を作った事例を考えます.

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何が起きたか?

大多数の人はリマインダーを見た が,何人かは直感的にさっとリマイ ンダーを閉じてしまった.面倒な作 業をやる気分じゃなかったからだ. その他の人たちは一瞬考えて,受信 トレイの掃除をする価値があると判 断した.(あるいは価値がないと判 断した) 受信トレイをきれいにしようと決め た人たちの,うち何人かは気力が十 分でない,今それをやる十分な気力 も時間もない,といった理由で後回 しにした.そうでない人たちは,こ の作業は重要だが,もっと急ぎの作 業の後でも大丈夫だと考えた.

『行動を変えるデザイン』より引用

さて,CREATEファネルになぞらえるとどのステップで離脱が起きているかわかりますか?例えば1行目の”大多数の人はリマインダーを見たが”という部分では,そもそもCueに気づかなかった人がいる(=Cueでの離脱)ことがわかります.この例では同様にReaction/Evaluation/Ability/Timingそれぞれで離脱する様子が描かれており,まとめると以下のようになります.

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CREATEファネルに当てはめて考えると,なぜ行動したのか?なぜしなかったのか?を分析する解像度がグッとあがります.素晴らしいことです.

離脱する・行動する例は他にもたくさん考えられますが,追加で3つくらい例を示しておきましょう.

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こんな感じで,日頃の一つ一つの行動・思いとどまったりやらなかった行動が,CREATEファネルを通じてきれいに説明できるのは結構感動体験です.

ちなみに,習慣化している行為ではこのうちEvaluationとTimingでの離脱が下がるため,習慣化させることは非常に有効(逆に,習慣化した行為を変えるのはとても大変)とも述べられています.

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何が大事なのか

私は,プロダクト開発において大事なのはCREATEファネルそのものではなく,実装するメンバーが共通言語で会話できることだと考えています.

なので,CREATEファネルを必ず使う必要があると言いたいわけではなく,このような思考フレームワークをチームで共有することで,インターフェイスや機能をデザインする際に会話がスムーズになります.コミュニケーションコストを減らせるという意味でこれこそが重要なのだと思っています.

おわりに

次のブログでは,『行動を変えるデザイン』の中から別の部分を引っ張ってきて得られた気付きを書いていきたいと思います.


最後まで読んでいただきありがとうございました.もし役に立つことがあれば,ぜひ「スキ」をお願いします!


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