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コップ一杯の休息と


昨日、取締役を辞任して、会社を辞めた。
創業期から4年間働いたユニラボというベンチャーだ。


自分は事業開発や経営管理を担当していた。マネタイズを考えたり、事業計画をつくったり、人を採用したり、ビジョンやバリューを浸透させたり。


めまぐるしくも充実した4年間だった。会社には心の底からリスペクトと感謝をしているし、自分が作ってきたチームやサービスへの愛情は誰よりも深い。

今回退職の相談をした周囲の経営者や友人からも「今のタイミングで辞めるのはもったいないよー」という声を多くいただいた。(相談に乗っていただいたみなさん本当にありがとうございました!)


ただ、今の自分には、立ち止まる時間が必要だった。

今日からほんの少しのあいだ、充電期間に入る。


4年間で得たものと失ったもの


立ち止まりついでに、書き出してみることにした。

4年間で得たもの
・マッチングビジネスの妙
・フリーランス集団が「チーム」になるための方法
・メンタルを壊しかけた時の立ち直り方
・スタートアップ界隈での人脈
4年間で失ったもの
・預貯金


それで、せっかくのタイミングなのでそれぞれについて振り返ることにした。長くなるかもしれないけど、このエントリが以下のような方に届くと嬉しい

・スタートアップへ飛び込もうとしているアラサービジネスマン
・キャリア選択の帰路に立つ学生や新卒世代
・20-50人くらいの会社で、組織づくりなどに悩む経営者やHRの方
・将来、渡と一緒にお仕事をさせていただくかもしれない人


得たもの①:マッチングビジネスの妙

ユニラボはアイミツというB2Bのマッチングサービスを運営している。

サービス名のとおり相見積もりが簡単にとれるサービスで、見積もりをとりたい「発注者」と、提案をしたい「受注者」をマッチングさせている。

事業における自分の主な役割は「収益を最大化する」ことと「良いマッチングを生み出す」こと。

そのために、登場人物のエネルギーを最大化させることに粉骨砕身した。


この分野において、サービスの利用開始時点でのユーザーの熱量は低いことがあたりまえだ。発注者も、受注者も。彼らのエネルギーを良いかんじに高めていかない限り、本質的に良いマッチングは生まれない。

極端な話、全ての登場人物にベッタリと営業マンを張り付ければ自ずとエネルギーは増えるが、それだとROIが合わない。

とにかくこれが難しかった。


自分は事業開発の責任者として取り組んだことを、紹介する。立場上詳しいことは書けないが、以下のような論点についてひたすら仮説検証を回し、エネルギーを高めることに取り組み続けた

・誰がマッチングの意思決定権を持つか
・誰からお金をもらうか
・キャッシュポイントを前に置くか後ろに置くか
・自分たちがいかに中立な立場を貫くか
・自分たちがどの程度の深さまでマッチングに関与するか

これらの変数をアレコレいじることで、ユーザーのエネルギーが高まったり落ちたりする。本当に難しいんだけど、これこそがマッチングビジネスの妙だろう。

人材紹介でもオンラインデーティングでも、いわゆるリクルートのリボン図に集約されるようなサービスであればだいたい一緒な気がしている。


そしてこういうことに取り組んだ結果として、サービス立ち上げから1年半で単月黒字化、3年弱で通期黒字化にこぎつけることができた。

さらに自分が退職する時点では、上記の観点について「ほぼ」最適化されたビジネスモデルを新たに考案し、構築するところまでを「ほぼ」やり遂げることができた。

ここから先は自社の作ろうとしている世界をメンバーが腹の底から信じれるかどうかが勝負だ。

なので退職直前は、残された社員一人一人と、自分が目指してきた世界について話すことに時間を充てた。


得たもの②:フリーランス集団が「チーム」になるための方法

自分がジョインしたのは2014年の秋で、創業メンバーを除くと第1号社員だった。ちなみに当初は社員ではなく、個人事業主としてフルタイムで手伝う形を取っていた(今から思うとまじ大変だったなこの頃w)


それが辞める頃には正社員20名+バイト30名というそこそこ大きな組織に成長した。オフィス移転も2回繰り返して、アパートの一室から100坪のキレイなビルに変わった

↓最初のオフィス(2014年10月撮影)


↓今のオフィス。会社ロゴ入りの卓球台は手作り(2018年6月撮影)




組織が大きくなると、歪みが生まれる。


2017年の夏、創業期から一緒にがんばってきた社員がごっそり辞めた。「30人の壁」の試練は、漏れることなく自分たちの前にも立ちはだかった。



やめた社員は自分が直接的に業務で関わっていない人が多かったが、立場上全員のリタイアマネジメントに臨まざるを得なかった。


退職の理由は人それぞれだったが、一人一人と話す中で、残された自分たちがやらなければいけないことが見えて来た。


・自分たちのビジョン/ミッション/バリューに「命」を吹き込むこと
・メンバー全員の心の壁を取り払い、「仲間」になること


詳くはユニラボのブログで代表が書いているのでぜひ読んでいただきたいが、例をひとつ挙げると、コーポレートビジョンの文言から「中小企業を成長させる」という言葉を取り除いた。


創業期から掲げてきたビジョンであり、かくいう自分も「中小企業を支援したい」という強い想いからユニラボを選んだ。

しかし当時のビジョンに対して社員の共感は決して強くなかった。古参メンバーの中には「中小企業の支援に興味がない」ということを言う社員も多くいたことを覚えている。フリーランス集団のような緩い繋がりから出発したことの、ひとつの弊害だったのかもしれない。


ビジョンとは創業者の「夢」であると同時に、社員一人ひとりの「道しるべ」でなくてはならない。


一人ひとりが力強く前に進むための「道しるべ」が何であるか。創業メンバーである自分たちが、絶対に譲れない「夢」が何であるか。これらを考え、言語化するプロセスこそが「ビジョンに命を吹き込む」ということであり、2017年のユニラボを象徴するエピソードであっただろうと振り返る。


そのほかに、2017年に自分が主導したのは以下のような取り組みだ。

・コンパス(=会社の価値観、バリュー)について全社で考える会議
・事業のOKRとコンパスの実践度を反映させた評価制度の見直し
・社員同士が本音をぶつけて心の壁を壊す、通称「破壊の夜」
・1on1対話の推進
・新入社員の紹介などをお届けするYoutubeチャンネル、通称「Unitube」
・ボードゲーム部や卓球部といった部活動制度

この時期に取り組んだあらゆる施策が、組織を強くするうえでプラスに作用した。

一つ一つついてもお伝えしたいことが山ほどあるので、どこかの機会で書きたい。


そして、こういう地道な取り組みを積み重ねた結果、ユニラボはこの年に「チーム」として再出発できた。


得たもの③:メンタルを壊しかけた時の立ち直り方

これを書くべきか悩んだが、4年間を振り返るうえで外せないポイントなので、書く。

2017年に社員が立て続けに退職したことは書いた通りだが、リタイアマネジメントをしている最中に、自分のメンタルをやりかけた。


あの当時は毎日のように退職者からの不満を聞き、残されるメンバーの不安を和らげ、経営陣の少しギスギスした空気の中に身を置いていて。いつしか自分のキャパを圧倒的に超えるストレスを抱え込んでいた。


それで、その瞬間は突然訪れた。7月のすごく暑い日だった。


きっかけは些細なことであったが、自分の中で何かが切れた。

「帰ります」とひとことチャットを送り会社を出て、病院に行くとうつ状態(うつ病の手前)と診断されて、薬を出された。


ストレス耐性がめちゃめちゃある方ではないけど、根明な性格の自分がそういう診断をされたのが、ショックだった。


その後、しばらく休んだり会社にいったりを繰り返して、完全復活するのには3ヶ月もかかった。この間、自分を信じて待ってくれていたユニラボの仲間や、支えてくれた家族友人には感謝してもしきれない。


なかなかにしんどい時期だったが、自分が立ち直れた大きなきっかけが、実はnoteだった


自分が当時読んでいたのは、Dr.ゆうすけ氏田中圭一氏のおふたりのエントリだ。

Dr.ゆうすけ https://note.mu/usksuzuki
メンタルヘルスがライフワークの医師。「死にたい」に向き合うことで「生きにくさ」を少しでも軽くしたいとおもっています。 心のケアや、ネガティブ感情とのつきあい方、小さな幸せなどについて話したいです。 好きな言葉は「勇者とは、勇敢な者ことではなく、人に勇気を与える者のことだ」(noteプロフィールより)
うつヌケ/田中圭一 https://note.mu/keiichisennsei
著者自身のうつ病脱出体験をベースにうつ病からの脱出に成功した人たちをレポート。うつ病について実体験から知識を学べ、かつ悩みを分かち合い勇気付けられる、画期的なドキュメンタリーコミック!
(Wikipediaより)



お二人とも面識はないが当時の自分にとってめちゃめちゃ支えになったし、田中氏が記事で紹介しているアファーメーションとか実際にやって復活できたので、興味のある方は上のリンクから読んでもらうといいかもしれない。



コンテンツの力って偉大だなーとこの時死ぬほど実感した。


得たもの④:スタートアップ界隈での人脈

ユニラボは、エクイティ調達をしていない。それでこの規模まで成長してきたことは本当に誇らしいのだが、VCを入れているスタートアップと比べ、外部との接点は相対的に少なかった。


そこで2017年の秋以降、体調が戻ってからは「外気に触れる」こと、そのために「社外のプロジェクトを作る」ことを意識的にやってきた。


2017年の秋、最初にやりはじめたのがtwitterでのビジネスモデル図解だ。

自分が好きなサービスとか、気になったサービスをA4スライド1枚で図解するものだ。一時期はほぼ毎日、なにかしらの図解を作ってはtwitterにアップしていた。

ZOZOスーツが発表された際のこのツイートは田端砲にも載せていただき、多くの方から反響をいただいた。



また、図解を通じて出会ったチャーリーさんハンターハンターの図解を一緒に作ったりもした。

一時は「ハンターハンター」の単名検索で2位まで上がった。結果としてたくさん拡散されたことはもちろん嬉しかったが、モノを作って世の中に投げてみるという、プロセス自体がめちゃめちゃ楽しかった。


さらに2018年の春からは、同い年の飲み友達で尊敬するPMでもあるきゅーい氏と一緒に、docoikという、家族のためのお出かけ先検索サービスを作った。

「子どもたちと週末おでかけする時に、Google検索だと良いかんじの行き先が見つからない!」という自分の課題をストレートにぶつけたプロダクトだ。

平日はそれぞれ自分の仕事をやりながら、夜の時間や週末に2人で議論を重ねたり手を動かしたりして、2ヶ月半の準備期間を経て公開した。最近もコツコツとコンテンツを増やしているので、ぜひ使っていただけると嬉しい。



生来色々なことに興味を持つ性格だったが、自分が作ったものを「良いね!」と言っていただくのは初めての経験で、それによって人の輪が少しずつ広がっているのを実感できるのが、本当に嬉しかった。


失ったもの:預貯金

スタートアップへの転職を考える友人とかからお財布事情を聞かれることが多いのであえて書くけど、お金は増えなかった。(笑)


創業期のスタートアップに飛び込むにあたり、年収が上がるケースは(少なくとも今の時代においては)レアだろう。かくいう自分も、ユニラボに入った時には前職から給料を半分近くまで下げたので、貯金を崩しながらの生活を1年以上してきた。

当時は幸楽苑にラーメンを食べに行くのを渋り、嫁と喧嘩した思い出もある。今から思うとひどいことをした。まじごめん。


ただ、その後は業績の伸長とあわせて順調に収入も増えた。

退職時の給料をさらけ出すのはさすがに控えるが、けっこうもらっていた方だと思う。某T野さんがやっている年収査定サービスを使ってみたところ「適正!」というお墨付きももらった。(笑)


一方で、次男が生まれたり長男が幼稚園に入ったりしてバーンレートも相応に上がったので、最初に掘ったぶんの預貯金はあまり戻らなかった。

自分で選んだ道だし最初からお金を目的にしていなかったから良いんだけど、金銭的なベネフィットは決して大きくない4年間だったかと思う。(現在のユニラボの給料が低いって意味ではないよ!)


さて、今日から何しよ

そんなこんなで、4年間フル稼働だった自分が、いきなりヒマになってしまった。

次のお話しもチラホラいただいたりしているが、まずはこの4年間をゆっくり棚卸しして、次に向けたエネルギーを蓄えたいなと思っている。


しばらくは埼玉の自宅で子どもと遊んだりしているので、近くまで来る方はご連絡いただけると嬉しいです。遊んだりビール飲んだりしましょう。



もちろんお仕事のご依頼も大歓迎ですし、個人的なキャリアの相談にも乗ったりします。DM返信率100%なので、お気軽に連絡ください



おわりに、ユニラボのみんなへ

4年間、本当にお世話になりました。金曜の送別会は最高すぎました。ありがとうございます。

冒頭に書いたとおりこの会社には心からの感謝とリスペクトを抱いていますし、メンバーみんな大好きです。これからも仲良くしてください。


そのうえで、自分の4年間(のほんの一部)をnoteに起こすことをご了承ください。公に出すか超悩みましたが、これがきっかけでユニラボに興味を持ってくれる人が現れても良いんじゃないかなーと思っています。

そんなユニラボの採用応募フォームはこちら!(告知)


栗山さん、石田さん、菅原さん、

4年間ありがとうございました。この4人で本当にたくさんの試練を乗り越えてこれたことが自分にとって何よりの財産です。今回は退職という形をとらせていただきましたが、どこかでまた一緒にお仕事できる機会があると嬉しいです。



これまで、本当にありがとうございました。

これからも、ユニラボの飛躍を心から祈っています。


2018年7月1日 渡 雄太

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