鼻血にはじまり鼻血に終わった今日をただ綴る
朝目が覚めた私は、ぼんやりとだが身体の異変を感じていた。そのまま動かずにしばらくすると、鼻の左穴の奥から柔らかい液体が徐に流れるのを感じた。穴に指をあてると、先が赤く滲んだ。
ティッシュで穴をふさぎ、しばらく布団で横になっていた。久しぶりにしっかりと睡眠がとれた朝にも関わらず、あまり心地よい滑り出しとはならなかった。なんとなく身体もだるかった。
仕事に差し障りのないギリギリの時間までその体勢を維持し、10時少し前に諦めて布団から這い出た。友人からもらった美味しい柿をひとつ食べ、少し作業をした後、仙台出張の準備に取り掛かった。
水曜の午前中に仙台のローカル番組に軽く出演することもあり、どんな服を持っていくべきか、迷いに迷ってしまった。着ようと思っていた服にほつれが見つかり、直しに出さなければならなかったことも、私の迷いに拍車をかけた。
家から洋服の直し屋、銀座を経由して東京駅へと向かった。途中いくつかのバスや電車を目の前で逃した。なんとか駅に辿り着き、夕方4時前の新幹線に乗った。
ひどく眠い。
仙台到着の10分前あたりに目が覚めた。途中駅でも起きなかったほどに深い眠りだった。外は真っ暗になっていた。
思いがけず疲れていたようだ。
歩いてホテルまで向かいチェックイン。本当は少し仕事をしようと思っていたが、諦めて休むことにした。
夜8時過ぎに予定されている仙台三越での「サロンドパルファン2024」の設営前に夕飯を済まし（不思議な店だった。雑居ビルの2階にあるカウンターだけの牛タン屋で、客は私ひとり。注文したものが提供された後、店主らしき男性は、テレビを観ながらタバコを吸っていた。食べながら私は、彼と一緒にそのテレビを眺め、そこで芸人の「どぶろっく」が佐賀出身であることを知った。なお牛タンは普通）、仙台三越近くのミスタードーナツで設営までの時間を潰している。
現在夜9時。設営開始時に連絡がくることになっていたが、音沙汰なし。まだ設営には入れないようだ。
レジ近くの席で、お客さんと店員のやりとりをぼんやりと見ていた。結構な数のお客さんがポケモン関連のドーナツを所望した。やはり人気のようだ。
普通のお客さんがほとんどだったが、不思議な人がふたりいた。
ひとり目はウーバーイーツの配達員らしき人。背の高い、坊主頭の中年男性だった。
ウーバーイーツ用に袋に入れられたドーナツはレジとは別の棚の上に置かれていた。店員はその男性に向かって、「番号を確認してあちらからお取りください」と言った。
それに対して男性が、何やら文句を言い始めた。身体に対して声は小さかったので、何を言っているのかよく聞こえなかったものの、威圧的な雰囲気は伝わってきた。
どうやら「あちらからお取りください」の「あちら」が、はじめて来るからよくわからん、その言い方は不親切だ、という“イチャモン”だったようだ。
店員さんは刺激しないように平謝りしていた。わりと長いこと揉めていたが、結局その男性はドーナツを受け取らずに立ち去った。きっと彼は、世の中のありとあらゆることに不平やら不満やらを抱えながら生きていることだろう。
もうひとりは、お酒の入った中年サラリーマンだった。「おすすめ教えて。持ち帰りで」と店員に言い放ったのだ。
ミスタードーナツで店員に「おすすめ」を尋ねるお客さんというのはどのくらいいるのだろうか。確かにたくさんの種類のドーナツがあるから迷う人も多いのかもしれないが、ミスタードーナツにおいては各人が“推しドーナツ”を持っているイメージだった。ちなみに私の“推しドーナツ”はオールドファッション。
「ポン・デ・リングなどはいかがでしょうか？」
女性店員が尋ねる。
「よく分からないんだよね。娘へのお土産で」
その後女性店員はあれこれ質問をした。男性は「よく分からない」を連発しながらも、最終的にドーナツを4つほど選んだようだ。何を選んだかまでは私のところからは分からなかった。
「なんか手間かけちゃってごめんね」
「いいえ、喜んでもらえますように」
今日唯一心温まる出来事だった。
結局設営に入れたのは夜9時半ごろだった。ちょっとしたトラブルがあったらしい。
私は例によってサクッと設営を終え、10時すぎに仙台三越を後にした。そこまで寒くはなかったものの、来る時に軽く降り始めていた雨が本降りになっていた。
商店街の屋根を使ってなるべく雨を避けながらホテルまで戻る途中、コンビニに立ち寄った。どういうわけだか寂しくて、その寂しさを埋めてくれるあたたかい食べ物を探した。迷った挙句に「カップヌードル カレー」を購入。ホテルに帰ってひとり啜ったら、少し気持ちが楽になった。
noteを書いていたら、またしても鼻血が滴り落ちた。朝よりかは量は少なかったが、止血に少々時間がかかった。今日はどうやらそういう日のようだ。
そんなわけで、今日の記事は表題の通り、鼻血ではじまり鼻血で終わった今日という1日を、ただひたすらに綴ってみた。展開もオチもない、日記のような内容だが、読み返してみるとこれはこれで悪くない…と思う。
明日から今年最後の「サロンドパルファン」が仙台で開催される。私の店頭接客は明日水曜、そして土曜から来週火曜までの合計5日間。
今日はご覧の通りのパッとしない1日だったけれども、この“パッとしなさ”は今日に置き去りにして、明日からの1週間、駆け抜けようと思う。
ぜひ来てね。待ってます。
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