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差別って、なくなるのかな。
1週間弱のパリファッションウィークの中で、印象に残っていることはいくつもある。そのほとんどはポジティブなものだが、ひとつだけ私の心に大きなモヤモヤを残していったものがある。
今回は東京のcontext、京都の乙景、そして岩手のkuneの3つのお店のバイイングに同行した。どれもçanomaの取扱店でもあり、気心知れた仲だ。
折り返し地点の3日目夜に訪問したショールームは、Professor.Eという台湾のブランド。その日はバイイングの他にショーをふたつも観た私たちは疲労困憊、ショールームに早めにいって少し休憩させてもらえないか尋ねてみることにした。
アポイントの1時間前に到着し、ショールームの人に事情を説明すると、二つ返事でOK。「椅子がないけど、気にしないんだったら床に座っててください」とまで言ってくれた。
私たちが座るのをためらっていると、デザイナー現れて、自ら床に腰掛けた。それを見た私たちも安心して座ることができた。
こんなに優しい対応は通常であればありえない。ショールーム側もアポイントが相当詰まっているので、そもそも予定通りにしかショールームに入れてもらえないし、ましてや床に座って休憩なんてもってのほかだ。これができるのはひとえに、先の3店舗とブランドが素晴らしい関係を構築できているからに他ならない。
休憩後にバイイングが開始された。結構な量の服を、ひとつひとつ丁寧に見ていき、気になるものは着用、写真撮影をする。マテリアルやパターン、そしてインスピレーションソースや背景の説明を聞く。
ちなみに、Professor.Eのショールームを取り仕切っている台湾人の男の子は、流暢な日本語を話す。日本の大学を卒業し、現在も日本在住だ。それもあって、そのショールームでは通訳の必要もなく、私もあれこれ試すことができた。欲しいものがいくつもあった。素敵なブランドだった。
その後、我々はProfessor.Eチームと共にレストランへ移動した。context、乙景、kuneのそれぞれのバイヤーと、Professor.Eのデザイナーとその彼女、ショールームの運営をする台湾人の男の子とその彼女の中国人、それに私を加えた8人の大所帯だった。中国語、日本語、英語を織り交ぜながら、とても楽しい時間がすぎていった。
もちろん、これはブランドとバイヤーの間の仕事という文脈での会食だった。ただそこにはビジネスを超えた親密さがあったように私には感じられた。そういう関係を作れているブランド、そしてこれら3店舗は本当に素晴らしいと思う。
そんないい雰囲気の中、店を出たところでそれは起こった。
Professor.Eチームのタクシーを待ちながら全員で外で待っていた時、だいぶ酔っ払ったフランス人らしいおじさん3人がお店から出てきた。
そのうちのひとりが、私たちに絡んできた。何かを口にしているが、それは具体的な発話ではなく、どうやら彼なりに中国語を真似て、意味のないことを発しているだけのようだった。
それにどう対処していいのかわからず、私たちはしばし困惑していた。ひとしきり“音を出した”後、おじさんは仲間に「何やってるの?」と呼ばれて私たちから離れた。そして仲間に向かって、「あいつら中国人だ」とフランス語で叫んでいた。
人種差別的な行いだ、と言いたいところだが、私は「人種差別」というワードを使うことには慎重でありたい。その言葉は日本で思われている以上に重みがあるし、またそれが本当に人種差別な行為なのかどうかはわからない。
とある日本の有名人が、パリのレストランであまりよくない席に通されたことに対して人種差別だと腹を立て、「あちらのいい席にしろ」と捲し立てた結果、そちらの席に移動させてもらえたことをSNSに投稿し、それに対して概ね称賛のコメントがついた、というニュース記事を目にしたことがある。
その記事を読んだ時、それは本当に差別的な行いだったのか、それに対するその有名人の言動は適切だったのか、と考えずにはいられなかった。あるいは本当に人種差別に基づくものかもしれなかったが、想像されるそれ以外の理由が多すぎて、当事者であったとしてもそれを人種差別的行為と断定するのは難しかったはずだ。
そして、差別的行為に対し、どのように対処するべきかに至っては、私の中ではまだきちんと答えが出ていない。私は“毅然と”対応することにも疑問を覚える。差別的な行為をする人に対して下手に反発すると、次のヘイトを生み出しかねないように思うのだ。結局のところ、無視するのが今のところの最善策であるような気がしている。腹立つけど。
あの夜のことを思うと、唯一フランス語を話せた私には、もっといい対応があったのではないか、と後悔の念が湧き上がる一方で、無視することを皆に促すという、私がとった行為以上の回答は、今のところ思いつかない。
どうするべきだったのだろう。
私にはわからない。
いつか差別がなくなればいいと思う。そして、そこに至るまでに、なるべく血が流れなければ、なおいいであろう。
そんな日が、くるのかな。きてほしいな、本当に。
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