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リアルゴールドのように

「サロンドパルファン2024」の3日目が終了した後に、私はそのままファミレスへと向かった。

そういえば昨晩もファミレスだったなと思いつつ、昨晩とは違うファミレスで、昨晩と同様にドリンクバーでリアルゴールドをなみなみと注いだ。

ドリンクバーには「人気ドリンクTOP5」を表示するボタンがついていた。何気なく押してみると、

1位:コカコーラ
2位:コカコーラ オレンジ味
3位:コカコーラ メロン味
4位:カルピス
5位:カルピス オレンジ味

とのこと。なんと“シケた”チョイスなのだろう。ドリンクバーは、リアルゴールド一択と決まっている。自動販売機では1缶190mLしか入っていないのに他のドリンクと同じ値段の、あの唯我独尊リアルゴールドが、ファミレスのドリンクバーではなんと飲み放題なのだ。その上リアルゴールドは、この手のエナジードリンクの中では圧倒的に美味しい(と思う)。

2杯目のリアルゴールドに口をつけながら、ふと、私は幼少期からリアルゴールドを好んでいたことを思い出した。ただ、それはよく考えてみると不思議なことなのだ。なぜならば我が家には炭酸飲料を飲む習慣がなかったから。家で飲むのはだいたいほうじ茶だったし、外出時も自動販売機やコンビニで気軽に飲み物を買うようなことはほとんどなかったはず。

好奇心旺盛なちびっ子裕太が、コーラやファンタなどの“巨人”に囲まれて、ひとり缶コーヒーサイズで凛としているリアルゴールドに興味を抱き、それをある日母にねだって買ってもらった、という線が一番濃厚だが、正直定かではない。

いずれにしても私は、幼少期のどこかでリアルゴールドの味を占めた。それはハーゲンダッツと同様に、子供の時に出会う数少ない「贅沢の味」だった。


「サロンドパルファン2024」3日目の今日は、金曜日ということもあってか、香料メーカーや充填工場、容器メーカーなどの業者の方々が数多く来場していた。香料メーカーの方々には少し丁寧めに香りを紹介し、業者の方々とはあれこれ立ち話をした。

「上司からは大手ブランドではなくニッチなものをたくさん嗅いでくるように言われています」

香料メーカー勤務1年目の男性がそう口にした時、私は「そんなものより歴史の荒波の中で今日まで残り続けている名作を嗅ぐべきだ」と喉元まででかかった言葉を飲み込んだ。余計なお世話だろうと思った。


夕方以降は多くの友人が訪ねてきてくれた。久しぶりに見る顔もあってとても嬉しかった。

差し入れを持ってきてくれる方も多くいた。閉店後に店頭に立ってくれたスタッフと一緒に反省会をしながらいただいたお菓子にありつき、残りは私が持って帰った。


そういえば、母の介護をしている時も多くの方からお菓子をもらった。

あれは不思議な1ヶ月半だった。癌の治療を放棄したのに伴い我が家での在宅介護に切り替えてから、彼女がこの世を去るまでの間、私の家には毎日のように花やお菓子、その他の贈り物が届けられた。贈り主である私の友人たちのほとんどは、母に会ったことすらなかったのに。

私の中で嬉しさと不思議さが同居していた。母も同じように感じていたと思う。愛がありかつセンスのいい友人たちが選んだお菓子の数々は彼女の心をしっかりと捉え、中にはあまりにも気に入ったため後に追加で購入したものもあった。

彼女がこの世で最後に口にしたものは、友人のひとりがわざわざ家まで届けてくれた、いちご狩りで採ってきた小ぶりのいちごだった。私はこのように、母との愛に満ちた最期の1ヶ月半の間、同時に友人たちの愛に包まれていることを知った。


私はどこか、「サロンドパルファン」の会場に差し入れを持ってきてくれる多くの友人に対し、介護の時のあの嬉しさと不思議さの入り混じった感情を抱いているのかもしれない。会いに来てくれるだけで嬉しいのに、どうして手土産まで持ってきてくれるのだろう。きっとそんなふうに感じているのだ。


明日からは「サロンドパルファン2024」の後半戦に入る。この土日は間違いなくてんてこ舞いになるはずだ。

そんな中、友人やnoteの読者の方が私に会いに来てくれるというのが、どれだけ私の癒しにつながるか、きっと誰にもわかるまい。それは仕事終わりのリアルゴールドのように、私をどこか懐かしい気持ちにさせるのだ。友人はもちろんのこと、note読者が口にする「あの記事、面白かったです、好きです」を通して、私は過去の自分に邂逅するのだから。

もしこの3日間のどこかで時間があったら、ぜひ新宿伊勢丹に立ち寄って、私に会いに来てほしい。手土産はいらない(これ、フリじゃなくて本当に)。もしかしたら待たせてしまうかもしれないけれども、少しだけでも話せたら嬉しい。

ということで、会いにきてね。


それにしても、今回の「サロンドパルファン」は、前回以上に母のことを思い出すことが多い気がする。どうしてだろう。疲れているのかな、私。


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