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虫取り網からデジタルカメラ
少し前にカメラを買い替えてから、写真を撮る機会がちょっとだけ減ったような気がする。画角が変わったこともあり、まだうまくそれに馴染めていないのかもしれない。
新しい相棒に慣れようと思い、少しだけ外に出る際もなるべくカメラを携えるようにしている。いつどこでどんな出会いがあるかわからない。思いがけず素敵なシーンが待っているかもしれないのだ。
そんなわけで、今日近所のカレー屋にランチに行ったときさえも片手にはカメラがあった。家からカレー屋までの15分の静かな住宅街を、私はシャッターチャンスを探しながらゆっくりと歩いた。
昨日の台風は心配されていたほどひどくなかったが、それでも今日はいわゆる「台風一過」の青空だった。これみよがしに晴れていて、日差しを遮るものが何もない、とても暑いお昼だった。
生垣をアゲハチョウがひらひらと舞っている。カメラで追いかけるが、フォーカスをするりするりとかいくぐられる。気づいた時にはもう手の届かないところへ。
坂を降りる途中、地面にはシオカラトンボ。レンズを向ける前に飛び立つ。すると今度はキタテハ。先のアゲハチョウよりものんびりしている。葉の上に止まり、しばらく考え事をした後にまた次の葉へと向かう。止まる葉はなかなか慎重に選んでいるようだ。何枚かシャッターを切ることができた。
ふと、幼少期に福岡の母の実家にいった、あの遠い日のことを思い出した。家の裏に小さい雑木林があって、そこにひとり、虫取り網と虫籠を携えて踏み入れていった。田舎だからと期待していった割にはそこまでたくさんの虫を捕まえることはできなかったが、蝶々の様々な色については、どういうわけかよく覚えている。
今でも虫は好きだ。ただ、いつのことからだろう、右手に携えているものが虫取り網からニコンのデジタルカメラになったのは。
本当は、今でも虫取り網を持っていたいのだ。ただそれを、誰も私に許してくれない。
訪れたのは代々木上原にある『幕末カリー』。オープンしたての頃から何度か食べに行っているのだが、先週伺った際になんとナスをお裾分けしてもらった。どうやらこのカレー屋の運営会社が農園をもっていて、年に何度か消費できないほどの野菜が収穫されるらしく、それを捨てるくらいなら配ってしまおう、ということだったようだ。まるまるとしたナスを2つ、蒸し焼きにして食べたら大変に美味しかったので、お礼にçanomaのお香を持っていったのだ。不思議な物々交換だったが、気に入ってもらえると嬉しい。
ちなみに、カレーにそこまで造詣の深くない私ではあるが、私の中での美味しいカレーの条件のひとつが「最後まで飽きずに食べられる」である。美味しいと評判の店であっても、ここが満たされないことが多々ある中、『幕末カリー』は最後の一口まで美味しいが続く、私のお気に入りのお店である。若干の入りにくさはあるとは思うが、ぜひ足を運んでいただきたい。
夜は池袋の新文芸坐に北野武映画『ソナチネ』を観に行った。どういうきっかけで観ようと思ったのかは忘れてしまったが、きっと誰かが好きな映画だといっていたのがトリガーだったはず。
飛び交う銃声をぼんやりと観ながら、いつの日か私の右手には、ニコンのデジタルカメラに代わって拳銃が握られるのかもしれない、と思った。
バンバンバン。
最寄駅から家に向かう途中、私は拳銃を手にした。花、月、車…いろいろなものに照準を合わせて撃ち抜く。当たったところにはくっきりと穴が空いて、赤黒い液体がとくとくと流れ出る。
どのくらいのものを撃ち抜いただろう。家まであと少しのところで、私は疲れ果ててしまった。地面に座り込み天を仰いだ。あと少しで満月にならんとする月がくっきりと浮かんでいた。
そろそろいいだろう。私は銃口をこめかみに当てて、静かにトリガーを引いた。銃弾は私の中をまっすぐに突き抜け、それによってできた筒からはこんこんと孤独が湧き出た。
その時私は、雑木林の中で虫取り網を片手に追いかけた、あの蝶々の色を思い出していた。
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