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Esxenceはピザが美味い
私は今、ミラノのホテルにいる。昨日はニッチフレグランスの展示会「Esxence」を視察し、今日はミラノ市内をあちこち回った。
明日の夜のフライトでパリに戻る予定だ。本当であれば明日の早い時間にひとつ重要な用事があったのだが、諸事情によりキャンセルされてしまった。今日の午後からイマイチ体調もよくないので、明日は少しゆっくりしようかと思う。
さて、昨年同様に、Esxenceの雑感を書こうと思う。今年も滞在時間は2時間ほどで、ぐるっと会場を一周したにとどまったので、あくまでも表面的なレビューしかできないが、率直に感じたことを書いていこうと思う。
昨年の記事はこちら。
全体を見回しての最初の感想は、「ブランド数、減った…?」だったが、昨年が360ブランド(参照1)に対して今年は383(参照2)とことなので、一応増えている。
ただし、私のその印象には理由があると思う。昨年以上に、ひとつのブースを複数ブランドで使っているケースが増えているように感じたのだ。だから出展ブランド数は増えている一方で、ブースの数そのものは減っているのかもしれない。これについては確認していないので、私の勘違いかもしれないが、いずれにしてもブランド増加数も近年では一番小さかったのではないかと思料する。入場料を取るようになったことがこの件と関係があるのか、気になるところだ。
ちなみに、入場料を取るようになったことと関係があるのかはわからないが、これまでは最終日だけしか入れなかった一般参加者が、今回は初日から入場できるようになった。これによって各ブースにインフルエンサー的な人たちがわらわら押し寄せてきて、商談に支障が出ている、なんて話も耳にした。
ブースを共有する背景は出展コストを抑えること以外にも、そもそもブランドとして単独では立ち行かなくなったところが、小規模なグループを形成して存続に活路を見出している、ということもあるいはあるのかもしれない。この辺りの事情についてはあまり明るくないのであくまで想像だが、最近身売り先を探しているブランドも結構な数あると聞く。
香りやブランド作りに関しては昨年同様まだ強いトレンドは見出せていないようだったが、ヴィヴィットな色のブースがかなり増えたように思う。いわゆる“ビタミンカラー”と呼べばいいのだろうか。そういった明るい配色を選択するというのは、中東マーケットに向けたブランド作りが本格的に終わりを告げていることを象徴しているように感じられた。中東のどこかしらの金をあしらった装飾ではなく、より欧米、あるいはアジア好みの色彩になっているように思われたのだ。
ブースの作りで面白いと思ったのが、ブランドのサイズとブースの大きさの関係性が薄れてきたことだ。以前であればブランド規模が大きなところが立派なブースを出すのは当然のことだったが、今回に関してはお金を持っているはずのブランドが小ぢんまりとしたブースに収まっているというケースが散見された。「あんまりコストはかけたくないけど、とりあえず出るか」程度のテンションなのだろうか。
新しいトレンドとしては、アジアブランドの出展が増えたことだろう。特に韓国の新興ブランドをいくつも目にした。中国も何ブランドかあった。
コスメのようにフレグランスにも韓国の波が来るのか、と思っている人も多そうだが、しばらくはないのではないか、と私は考えている。コスメと違って、フレグランスは韓国ブランドがトレンドセッター的な立ち位置になれていない、というのがその理由だ。ブランドのあり方も香りも、今までのヨーロッパを中心としたニッチフレグランスの流れを汲んでいる。もしそこにグローバルでヒットする韓国オリジナルのトレンドを作れば、その資本力とPRのうまさで、マーケットを席巻する存在にはなれるだろうが、まだそこまではいっていないように感じる。最近ロレアルのファンドが投資をしたBORNTOSTANDOUTも、好調そうに見えるものの、その点においてこれからが勝負であるはずだ。
全体としては、ここ数年で一番前年との変化が少ないイベントとなったような印象を受けた。それがニッチフレグランスマーケットの“終わりの始まり”を示唆していないことを祈るばかりだ。
出展者の何人かに率直な意見を伺ったところ、「そろそろ出展するのやめようかな」とこぼしたところもあった。この世の中、そもそも合同展示会というあり方がもはや難しくなってきているのかもしれない。
考えてみると、これまでのニッチフレグランスブランドは“深さ”よりも“広さ”を求める戦略をとっていた。つまり、ひとつの国や地域でしっかりと展開するというよりかは、とにかく各国のディストリビューターを捕まえて、闇雲に取扱店舗数を増やすことを成長ドライバーとしてきたのだ。そのせいか、ブランドとしてのアイデンティティはしっかりと確立されず、「なんかよくわからないけど、あちこちにあるね」という印象を与えているような気がする。
ミラノの香水ショップや百貨店をいくつか回ったが、Esxenceに出展している新興ブランドの取り扱いはほとんどなかった。昔から取り扱いのある、良くも悪くも変わり映えのしないラインナップなのだ。Esxenceとミラノのフレグランス売り場とのギャップこそが、今のニッチフレグランスの矛盾をよく表しているように思う。
思いついたことをあれこれ書いてみた。繰り返すが、今回も各ブランドをしっかりと見たわけではないし、私の想像や感想がほとんどなので、鵜呑みにはしないでいただきたい。間違ったことを書き散らしているだけかもしれないし、全く違う意見を持っている人も多いことだろう。
「ふーん、こんな考え方もあるんだー」程度に受け止めていただけたら幸いです。
いずれにしても、また来年も私は顔を出すことになるだろう。出展することは今のところなさそうだ。ただやはり、マーケット全体のトレンドを把握するにはとてもいい場所だし、ミラノに滞在することで思いがけない発見がいくつもあったので、Esxenceを口実に、またピザを食べに来ようと思う。
美味しかったなぁ…
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