真っ直ぐな褒め
「一度見たら忘れられない顔ですよね」
そんなことをよく言われるようになったのはいつの頃からだろう。ブランドを始めて以降のような気がする・
それ以前も、「キャラが濃い」等のことを言われることは多少はあったが、直接的に顔のことについて言及されるようになったのは比較的最近のように思う。
ちなみに、私の顔には現在髪の毛よりも長い髭が鎮座しているが、冒頭の一言が投げかけられるようになったのはその登場以前だ。ちなみに、登場以降はそう言われる頻度がさらに増えたことは想像に難くないだろう。
この一言の困るところはふたつ。私自身にその自覚が全くないということ。そしてその言葉が賞賛なのか謗りなのかがイマイチわからないということ。
前者に関しては自分の顔だからしょうがない部分もあろうが、それにしたって今の今までこれといって特徴のない顔だと思って生きてきた節があるので少々困惑している。多少彫りが深いが、そんな人はきっとたくさんいるし、それ以外には特別なパーツはない。もちろん、残念ながらさしてイケメンでもない。そんな私の顔のどこに人々は“引っ掛かり”を見つけるのだろうか。不思議でならない。
後者はさらにややこしい。それを言われてひどく傷つく、ということはないものの、言われる側はやはりどこかにネガティブなニュアンスを感じ取ってしまう。言ってる本人にそういう意図はサラサラないのだろう。ただ、それをどういうニュアンスで口にしているのか問いただすと、「いやいや褒めてるから」と口では言いつつ、実際は褒めているとはいえないような顔をしている。私はそれを見逃していない。
ところで。
ここまで長々と書いてきたが、今日の本題は、この「一度見たら忘れられない顔ですよね」というフレーズについてではない。あれやこれやの評価を受けながら日々生活しているが、この歳になると、褒められることがほとんどないのではないか、とふと気づいた。
それに気づいたのは、最近ある人に“間違いなく”褒められるという出来事があったからだ。
一年半ほど前から通っている歯医者での治療がおおかた終わった。10年ほどほぼ歯医者に赴かなかった私の口内に巣食っていた大小いくつかの虫歯はお陰様ですっかり姿を消した。あとはインプラントの歯を作成しはめ込むだけとなった。
その処置は年明けあたりにすることになるらしい。それまでは1ヶ月に一度ほどの経過観察と定期検診を受けることになる。
先日、その最初の定期検診があった。
歯科衛生士さんが歯をチェックした後にきれいにしてくれた。歯がきれいになるととても気持ちがいい。今までなんで歯医者を嫌っていたのだろうか。もっと早くからちゃんと行けばよかった。これを読んでいる、歯医者に行くのを躊躇っているそこのあなた、行くなら今ですよ!行きましょう!
「以前よりも歯の状態がとてもいいですね。ブラッシングもかなり上手になっています」
それは思いがけない一言だった。特段何か変えたことはない。ただ、歯科衛生士さんによると、上の前歯の表面と下の犬歯の裏側に若干の磨き残しがある程度で、あとは奥まで含めてきちんと磨けていたようだ。
こんなにダイレクトに“褒められる”のが久しぶりすぎて、私はまごついてしまった。なんと返答すればよかったのだろう。「ありがとうございます」は変な気がするし、「へへっ…そうですか…」だと気持ちが悪い。適切な言葉は意外と出てこないものだ。
褒められることが少なくなったのか、それとも褒めを素直に受け止められなくなったのか、どちらなのだろう。もしかしたらその両方かもしれない。
歯医者さんの椅子の上で久々の褒めを浴びながら、もっと人を褒めるべきなのかもしれないし、また私も褒めをもっと素直に捉えるべきなのかもしれない、なんて考えていた。
真っ直ぐに褒められるというのはやっぱりいいものだ。これからもブラッシングを頑張ろう、と柄にもなく思っているほどだ。
それにしても…「一度見たら忘れられない顔ですよね」は、褒めなのだろうか。それについては、まだ私は素直に褒めだとは認められない。
どうなのだろうか…
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