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恋と愛の違い

恋愛の話ではないのだけれども。


今日は誠品生活日本橋店でのトークイベントだった。

イベントタイトルは、『愛をひもとく』。世田谷は羽根木の眼鏡屋『緑青』の店主宮川さんと共に、90分間愛について語り続けた。

イベントのタイトルは早々に決まっていた一方で、細かい内容についてはあまり話し合っていなかった。ざっくりと「好きを仕事にしたふたりによる仕事論的な話でもしましょうかね」という程度にとどまっていたのだ。

イベント前夜、お風呂に入りながら何を話すかについてつらつらと考えていた。

考えた結果、「愛」という切り口で話を進めていこうと思った。どのように眼鏡や香水との愛を育んできたのか、愛した延長線上でどのように結婚したか(仕事にしたか)、結婚生活(愛したものとの仕事)はどうか、といった形で進行していくことにした。


イベント当日の朝、何を着ていくかを悩んでいたら家を出るのが遅くなってしまった。会場に到着したのはイベント開始の20分ほど前だった。ゲストの宮川さんはとっくに到着していた。悪いやつだ、私は。

そんな悪いやつである私は、何食わぬ顔で挨拶をして宮川さんの隣に座り、世間話をはじめた。そして出された烏龍茶を啜りながら、手渡された台本に、ちょこちょことメモ書きをした。

読めるだろうか?きっと読めないだろう。

私にも読めない。

ただ、この読めないメモ書きによって、私の頭の中はクリアになった。


司会が開会を告げ、私たちに自己紹介を促す。私、宮川さんの順番で自己紹介。そこからもう勝手にやってくれ、という指示が運営側から出ていたので、まずはこう口にする。

「台本いただいていますが、ガン無視します」

そして、

「宮川さん、今回のテーマは『愛をひもとく』なので、このトークイベントも、『愛』をキーワードにしながら話していきたいと思っています。私たちは好きなことを仕事にしているので、眼鏡や香水とどのように愛を育んだか、仕事という形で結ばれたきっかけは何だったか、今の“結婚生活”はつつがないか、といったイメージです。ところで宮川さん、愛が始まるためには、何が必要でしょうか?」

かわいそうな宮川さん。緊張しているところに、私からの意味不明なぶっ込み。困惑しながらも、とりあえず何か回答を絞り出したところで、私は言う。

「違いますよ宮川さん、愛が始まるには、まず『恋に落ちる』ことが必要でしょ?宮川さんは、何がきっかけで眼鏡と恋に落ちましたか?」

私の意図はこうだった。「好き」と一口にいっても、その程度はさまざまだ。「何気なく好き」から「好きが高じて仕事に」というパターンまである。後者である私たちにおける「好き」というのは、「恋」という一時的な感情ではなく、「愛」という中長期的に育まれたものであるが、その始まりは「恋」のような初期衝動であったはず。それがどのような始まり方で、どういう変遷で「愛」というより普遍的なものへと変化していったのか、ということを語るのは、「好きという感情とどう向き合っていけばいいのか」という問いに対してのひとつの示唆になるのではないか、と思ったのだ。

突然の問いかけに面食らっていた宮川さんも、途中からだんだんとペースを掴み、最終的には予定されていた90分話し続けてもまだ話し足りたいくらいに盛り上がった、話している側は。聴いている側を置いてけぼりにしていなかったことを祈るばかりだ。


今回のトークイベントの中で明らかになったのは、宮川さんも私も、恋に落ちた後に、その恋が深まるきっかけがあった、ということだった。宮川さんにおいてはロールモデルとなる眼鏡屋店員との出会い、私の場合はとあるニッチフレグランスとの邂逅がそれにあたる。ただ好きだったものが愛へと変化していく“変曲点”のようなものがあったのだ。それが一般的に愛するために必要なのかは定かではないものの、少なくとも私たちにおいては不可欠な体験だった。


それにしても、やってみるまでは90分のトークイベントがどんなものか全く想像がつかなかった。そんなに話し続けられるか、正直不安だった。

それが蓋を開けてみると、まぁーーー喋ること喋ること、私。口先から生まれてきた、とはまさにこのことかと、自分で自分に呆れてしまった。イベント終了後、「いやー、まだいくらでも話せますよー」と運営側に宣っていたくらいだ。

喋りすぎる男はきっとモテない。そう、私は、モテない男…

ただ、ポジティブに考えてみると、意外と喋ることに関して才能があるのかもしれない。そういう才能があるなんて考えたことはなかったが。そういえば宮川さんは終始それなりに緊張していたようだが、私は一切の緊張がなく、ゆるゆると喋り続けていた。それもあるいは才能の一部なのだろうか。

そのうち、YouTubeだかPodcastだか、挑戦してみようかな…ただ、ひとりで喋り続けるというのは聴いている側にも負担になりそうなので、一緒にやれる人がいたらいいなぁ、と思う。誰かいるかなぁ。


それにしても…私、字汚すぎ…?


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