お金という制約条件
先日、YouTubeでとある討論番組を観ていた際、登壇者のひとりが、
「たまに仕事関連の話で、『ざっくばらんに相談させてください』という人がいるんですけど、私はそういうのに対して、『相談が始まったらそこからもう仕事なので、そのざっくばらんな相談でもフィーが発生します』と返すようにしています」
という主旨の発言をしていた。
それ自体は特段不思議なことではない。弁護士等そのやり方が一般的な職種はいくつもあるだろうし、この発言からは、それだけ真剣に相談を受ける姿勢であることも見てとれる。
またその方は、「『ざっくばらんに相談』といいつつ、有益な情報だけを盗みにきているずるい人も多い」ということも言っていた。なんとなく想像できる。
とある人の仕事に関する相談に乗った際、「お礼はどうすればよいでしょうか?」と尋ねられ、ひどく驚いたことがある。私としてはお礼されるようなことをしたつもりはないし、その手のことは今まで色々な人に対して何の見返りもなしにやってきたことだ。だから少し迷って、「誰か困っている人を見つけたらその人に何かしてあげてください」とだけ伝えた。きっとそっちの方が世の中はうまく回るはず。
冒頭の発言に対して特段ネガティブに思うわけではない。ただ、私は自分の“無料の行動”の中で、一般的には、あるいはその発言主だったら、どのくらいのものを“キャッシュ化”するのだろうか、という考えが自然と浮かんできた。香り制作に関する相談はそれなりの頻度で受ける。その中で実際に仕事になるものはごく一部なので、それ以外のあれこれの相談における経済的なメリットは一切ない。冒頭の発言の方は、きっとこういう場面において、「1時間◯円です」というのだろう。「◯円」の金額次第だが、まとまったお金になりそうな気がする。
そういえば、このnoteにしても一度も有料化したことがない。たまに“投げ銭”を受け取ることがあるが、その度に驚いてしまう。もちろん、投げ銭をする方もきっと思うところがあってしてくれているのだろうから、それはそれで嬉しいのだが、意図せずお金をもらうというのは私を少し不思議な気持ちにさせるのだ。
noteを無料にしている背景は、私自身が“無責任”でいたい、というところにある。もちろん、公の場での発言に一切の責任が伴わないわけではないし、情報の拡散力がこうも上がり、かつ誰しもが発信できる今日においては尚更その責任は重くなっているが、いずれにしても、お金をもらわなければ、お金を払った人に対しての責任に限っては少なくともない。お金をもらえば、私はお金を払った人に対してものを書くことになるので、私の自由は大きく損なわれるはずだ。きっと書くものも大きく変わってくる。
同様のことが、仕事に関する相談に乗る際もいえる。お金をもらって相談を受ければ、そこにはその金額相応の責務が発生する。ある程度有益な話をしなければときっと思うだろうし、仮にそれができなかった時に、後から罪悪感を覚えることにさえなるだろう。それに、お金をもらうことで、話す内容も変わってくることも、noteの場合と同じように想像される。いずれの事象も、無責任な私にとっては、それなりに大きな負担になる。
ところで、どんなことであれ、お金が発生しないと仕事に関わることをしたくないと考える人は、逆にお金を払う人であれば、どんな人とでも仕事ができるのだろうか。
私は、お金をもらって嫌な人と働くより、手弁当で好きな人と一緒に何かをする方が好きだ。ここ数日、とあるセレクトショップのバイヤーたちと一緒に過ごし、パリファッションウィーク期間中のバイイングの手伝いをしている。主に道案内や通訳、ショールーム内でのサポートだが、私からしたら各アパレルブランドがどのようなことをしているのかを見学することができる大変貴重な機会だ。ショールームでのバイイングの後に、各ブランドに関する意見を交換するのも楽しい。それに、毎度バイヤーチームにご飯をご馳走になっている。お金は発生していないが、むしろ実りがあるのは私の方なのだ。
私は私の時間や知識が誰かのためになることについて基本的には無頓着だ。つまり、誰のためにならなくてもいいし、誰かのためになったとしても特段何も感じない。感謝されるのは嬉しいが、その程度だ。だから、私が有益だと思うのであれば、好きに使ってもらえればいいと思う。
それよりも、私自身が心地よく、そして楽しくいられることの方が重要である。だから私をうまく使ってもらう分には結構だが、打算的な人と一緒にいたいとは思わない。それは私が心地よくも楽しくもないからだ。
もちろん、お金が発生する部分はきちんと区切っている。実際に香りを制作する、となったらそこはプロとしてきちんと取り組むためにそれなりの対価を求めたいと思う。
ただそれ以外のことは、今のところ私が楽しいと思うことを、お金から解放されて好きなようにやるのが、私自身が一番幸せになれる近道なのだと、信じて疑わない。
自由が、一番。
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