知性のある場所
京都伊勢丹での「サロンドパルファン2024」2日目が終了後、私は地下鉄に乗り、ホテルと反対側の五条あたりへと向かっていた。
正直疲れていた。「サロンドパルファン」の2日目は初日と比べると来場者数自体は少なかったが、çanomaのブースにめがけてきてくださっている方はそれなりの数いて、ひとりひとりにきちんと対応しているとあっという間に時間が過ぎた。気付かぬうちに集中していたので、終わってからはじめてどっと疲労を感じたようだ。
そもそも慣れない店頭接客を朝10時から夜8時までの10時間行っているのだ。休憩は挟むものの、実際は休憩中もお客さんが来るかもしれないと考えるとあまりゆっくりできず、結局お昼ご飯をかきこんだらすぐにまた店頭に戻ってしまう。
そんなわけなので、普通であれば夕飯を済ませてホテルに戻り、手をつけられていなかった仕事を片付けてすぐに休むというのが“正しい選択”のはず。これがあと4日間継続することを考えれば尚更だ。
ただ今日は、どうしても足を運びたい場所があった。
ちょうど1年ほど前に、こんな記事を書いた。
昨年の京都伊勢丹での「サロンドパルファン2023」の際、五条にあるビストロ「ル サンジュ」を訪れ、その虜になった。この記事はその際のことについて書いている。
この1年の間、京都での夕飯は会食がない限りにおいてはここを訪れていた。かれこれ5回ほどは訪問しているのではないだろうか。
この1週間の京都滞在中、今日がこのお店に行く最後のチャンスだった。明日はコインランドリー、明後日と明々後日は会食、日曜日は夜の新幹線で福岡に移動の予定がすでに入っていた。
8時半ごろに到着すると、お客は私ひとりだった。カウンターの入り口に一番近い席が私の“定位置”となっている。到着後メニューを見て、「人参とカラムーチョのラペ風」、「生牡蠣」、「白バイ貝 ガーリックバターソテー」に炭酸水を注文した。毎度注文してしまう定番メニューだ。
ちょうど注文を伝えたあたりで、中年男性がひとり入店してきた。どうやらこのお店にははじめて来た方のようだ。少し遅れてその方の奥さんもやってきた。ふたりはカウンターの私と反対の端に陣取った。
最初はそれぞれがシェフと会話を交わしながら料理を楽しんでいた。しばらくして私がお手洗いに立った際、男性がシェフに、私が話しかけても大丈夫なタイプかどうかを確認したらしく、私が席に戻ったタイミングで会話がはじまった。
このお店では、いつも初対面の人との交流がある。それはいつも素敵な内容で、私はそれを楽しみにまたそこに足を運ぶということを繰り返す。今回ももちろん楽しい夜になった。
ふたりが帰った後少しして、私もシェフにおやすみを言ってLUUPでホテルに戻った。部屋に着いたのは日付が変わる3分ほど前だった。
この記事を書きながら、なぜ「ル サンジュ」での夜はいつも素敵なのかをぼんやりと考えていた。
それはきっと、私の話を面白がってくれる人がいるからだ、とふと思った。
「ル サンジュ」で会う初対面の方とは、まずはフレグランスやフランスの話題になるが、私の話はあくまでも私見に基づいたもので、“一般的に”いわれていることとは違う。それゆえに、私の話を理解してもらうには、それが実際に正しいかどうかということとは関係なく、その主旨を汲み取るためにそれなりの知性が必要とされるものと思料する。
このレストランで会う方々と話していてると、毎回私の話をきちんと理解してもらっているような「実感」を得ることができる。それはその他の場所ではいつも得られるものではない。
「ル サンジュ」で出会う方々はその知性を持ち合わせているので、私の話の主旨を理解してもらった上で、それを面白いと感じてくれているような印象をいつも受ける。それは話をする側からすると「強い肯定」を意味している。嬉しいものなのだ。
そして、そういう知性のある方々がする話は、それに伴って当然面白いものとなる。今日はキャンピングカーの話でひと盛り上がりした。私の全く知らない世界だったが、その魅力の一端を知ることができ、大変興味深く感じた。
「話を理解してもらう」ということは案外難しい。店頭接客中も、「どこまで私の話、きちんと伝わっているかな…」と不安になることが時々ある。丁寧に言葉を選んでいるつもりだが、なかなか上手に伝えらずに悶々としてしまうのだ。
そんな中でそれが伝わった実感を伴うとやはり嬉しい。そのために私はまた店頭に戻るのだ、京都に来るたびに「ル サンジュ」に戻るように。
さて、明日も朝から店頭接客。「ル サンジュ」で話を面白がってもらう“予行演習”ができたから、あとは実践に移すのみ。
また次に「ル サンジュ」に戻ってくる際には、もっと話を面白がってもらえるようになっていたい、もっと知的になれるよう日々を丁寧に過ごしたい…そんなことを思わせてくれる「ル サンジュ」のように、çanomaもなれたらいいな。
明日も、来てね。待ってるよ。
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