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熊手を返す

オフィスの整理を少しだけした。この三連休の名古屋ラシック「サロンドパルファン2024」での店頭接客から帰ってきた翌日の今日、オフィスでやることがガッツリ溜まっていた。それらをバババと片付けたのちにふと目をやると、そこには散らかりに散らかったオフィスが広がっていた。明日以降は外出が続き、来週はずっと京都出張ということもあり、今日こそが整理整頓をするタイミングだと思ったのだ。

製造の際に出た不良品、あれこれの試作やサンプル品、使いさしのテスターなどが随所に散りばめられた、今まで見て見ぬふりをしていた段ボールの山に手をつけた。埃を被ったそれらのものを丁寧に仕分けをし、捨てるものは捨て、残すものは残した。まだ全ては片付けられていないものの、すでにほんの少しだけオフィスが広くなったような気がした。

昔から片付けがすこぶる苦手な私ではあるものの、乱雑な状態の方が好きというわけではない。すっきりした部屋の方が私だって当然快適に過ごせる。散らかっている部屋に不本意ながらとどまっているのは、整理整頓に対しての心理的なハードルが高いからという理由だけなのだ。


「手放すことで得るものがある」ということを、片付けのたびに再発見するものの、それを習慣化することができないのはどうしてなのだろう。年末は「来年こそは片付けのできる立派な大人になろう」と心に決め、初詣では「今年こそ片付けのできる立派な大人になります」と神様の前で誓うのだが、残念ながら効果は今一つ。それでも継続しているからかほんの少しずつではあるが、私の部屋はきれいになっているような気がする。

気のせいかもしれないけど…


そんな中、今月はあるものを手放そうと思っている。

それは、熊手だ。


「酉の市」の存在を知ったのは、学生時代にしていたベンチャー企業でのアルバイトを通してだった。11月のある日、社長に熊手を買ってくるように頼まれた。何も知らないまま神社に向かうと(そういえばどこの神社に行ったんだっけ…10年以上も昔のことだから忘れてしまった)、その雰囲気に圧倒された。熊手の売り子たちが大声を張り上げて呼び込みをし、購入者の商売繁盛を盛大に祈る姿が、なんだか懐かしくも新鮮に見えた。

私のセンスで予算ギリギリの熊手を選び、電車でオフィスに持って帰った。以来その熊手は私がバイトを辞めるまでずっとオフィスに鎮座していた。


日本で会社を立ち上げてからは、毎年新宿の花園神社で熊手を購入した。3年前、とある出店で見た、中央にはめ込まれたおかめをしめ縄でぐるりと取り囲み、その周りに稲穂やら俵やら小判やらで装飾を施したもの買ったのを皮切りに、同じようなデザインで前年よりも一回りほど大きくした熊手を手にするようにしていた。購入時に火打石で散らしてくれる火花を感じながら、また来年は一回り大きな熊手に相応しい会社にしよう、と誓っていた。


それが今年は気持ちが変わってしまった。酉の市で昨年購入した熊手を奉納したら、それでおしまいにして、新しいものは買わずにいよう、と思っているのだ。

それは、場所を取る大きな熊手を小さなオフィスに飾っておくことが些か不釣り合いであると感じているのと同じように、私の中で会社を大きくすることに強い疑問を抱いているからだ。このnoteではしばしば書いているが、私が正しいと信じていることをやろうとするにあたって、組織や売上を拡大することは必ずしも正解ではないように感じている。

熊手によって「来年は今年よりも大きくしたい」と願うのは、今の私にとってはきっと足枷になってしまう。それなら私はあえて熊手を手放すことによって、その足枷から自分を解き放とう、と思ったのだ。信心深い私にとっては小さくない決断だった。


「一の酉」の11月4、5日と「二の酉」の11月16、17日は行けないので、「三の酉」の11月28、29日に行こうと考えている。もちろん、あと3週間もあるので、気が変わって「やっぱり今年はもっと大きな熊手を買おう!」となるかもしれないが、それならそれで結構だと思う。

そうやって少しずつ、余計なものを手放していって、大切なものを手に入れたい。日本でçanomaをローンチしてもうすぐ丸4年。無駄なものもたくさん背負いこんでいるはずなので、そろそろスリムにするタイミングなのかもしれない。


苦手な片付け、5年目に入る今こそ、少しだけ上手にできるようになれたらいいな。


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