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宿題の意味

友人宅に遊びにいったときのこと。

友人の子どもが英語教室の宿題をやるというので見てみると、それはA4縦書きの紙の上部に英語のセンテンスがいくつかあり、それらのセンテンスを下の余白に書き写していく、という内容だった。

それらのセンテンスに共通点もなければ、前後に文脈もない。文法に関する問題というわけでもなさそうだ。

黙々と書き写す子どもの横で、友人にこれがどういう主旨の宿題なのかを尋ねてみた。

彼女の説明によると、どうやらこれらのフレーズを丸暗記しておいて、それを英検2級の記述問題の解答欄に意味もわからず“ぶち込んで”おけば、その問題でほぼ満点が取れる“魔法のドリル”とのことだった。

本当なのだろうか…?もし本当にそうだとしたら、それは英検の採点がザルすぎるということを意味しているような気がしないでもないのだが…?

ちょっと気になって、試しにその子にフレーズ中のいくつかの単語の意味を聞いてみたところ、さすがに全くわからないわけではなかったが、中にはいくつか意味をきちんと把握していないものもあった。いずれにしても、彼は意味を深く考えることなく、半ば機械的にフレーズを書き写していたようだ。


友人がどこまで正しくその宿題の意図を把握していたかについては疑念がないわけではないが、もし本当にそのための宿題だったとすると、そんなに恐ろしいことはないように私には感じられるのだが、どうだろうか。

実際の英語力には関係のない、英検受験における“ピュアなテクニック”だけを伝授するのは、学びの喜び(それは場合によっては潜在的なものであるかもしれないが)を子どもたちから奪っているように思われるし、それを“正しい学習法”と認識してしまったら、将来彼ら彼女らがどうなってしまうのか不安でならない。

私の考えすぎかもしれないが。


先の友人の子どもの宿題を見て、ふと思い出したことがある。

それは私が小学3年生のこと。

担任の先生が出した漢字の書き取りの宿題がいささか変わっていた。少し大きなマス目の方眼紙の一番上の行に漢字が1文字ずつ入っている。その宿題は、縦一列で見た際に、2行目に1行目の漢字の1画目だけを書き、3行目にその1画目と2画目を書き、4行目にその1画目と2画目と3画目を書き…と続けて、漢字が完成したら、残りのマスでその漢字の書き取りを行う、というものだった。

漢字の書き順表を手書きで作成するような内容の宿題だったが、正直その意図はよくわからなかった。

その宿題を見た母も、どうやら同じような感想を抱いたらしい。彼女は私にこういった。

「こんなくだらない宿題に君の時間と労力を使うべきではない。私がやってあげる」

実際に彼女はこの宿題が出た時に率先してやってくれるようになった。当時の私は「ラッキー」程度にしか捉えていなかったように思うが、今になって考えてみると、与えられた課題に対して、一度それが本当にやるべき内容なのかどうかを検討するようになったのは、この出来事がきっかけだったかもしれない。

親が子どもの宿題をやることについての是非はあるだろうが、私にとって、母のこの行いは、「学ぶことの意味」について考える貴重な機会になったという点において、ポジティブな影響を残した。


都心では中学受験戦争が年々加熱しているらしい。私たちの頃は小学校3年生から受験用の塾に行くのでも早い方だったはずだが、今では小学校1年生から塾通いが始まるという話を聞いている。

頑張っている受験生やその家族に水を差すつもりは一切ない。ただ、受験勉強が小手先だけのテクニックばかりになってしまい、そこに学びの喜びが全くないようなものだけにはなってほしくないな、と強く思う。


学びは楽しい。そのことを身をもって教えてくれた母に、改めて感謝したいと感じた出来事だった。


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