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イスタンブール到着までのみっつの出来事
羽田からイスタンブールに向かう飛行機の中でこの記事を書き始めた。その後は2時間弱の乗り継ぎ時間でパリに向かう。フライトは快適で、例によってフライト時間の半分以上にあたる7時間を眠りこけていた。ここ最近の多忙も爆睡のひとつの理由だろうが、私はどうやら、長時間のフライトで長時間寝ることにすっかり慣れてしまったようだ。直近いくつかのロングフライトでも同様にしっかり寝ている。
このフライト中に起こった、3つの些細な出来事を書こうと思う。
私は進行方向向かって左側の3人席の通路側にいた。窓側の席は一人旅の日本人男性、私の隣の真ん中の席には20代後半くらいのカップルの男性がいた。彼の相方はちょうど彼の真後ろの席にいた。
出発前、このカップルが席を挟んで前後で会話をしていたのだが、彼が私の方を向いて話していたこともあり、まるで私に話しかけているように私の耳には届いた。正直かなり鬱陶しかった。
「うわ、観たい映画がめっちゃいっぱいある」
彼はこのセリフを、短い時間に2回発した。思ったことをすぐ口にしちゃうタイプのように見受けられた。私はきっとあんまり仲良くなれないんだろうなぁ、などと想像した。
「あれ、ヘッドホンどこだろう」
彼がいう。
「えー、普通にあったよ」
彼女。
座席の前のポケットや、自分のお尻の下あたりを探すが、見つからない。観たい映画がめっちゃいっぱいある彼は焦っていた。
ふと、ヘッドホンが彼と私の席のちょうど狭間にあることに彼が気づいた。ただ、彼にはそれが彼のものなのか私のものか確証がない。
私はそこにヘッドホンがあることも、それが彼のものであることも、実はちゃんと知っていたが、その頃には彼の大きな声にだいぶうんざりしていたので、あえて何も知らない、何も聞こえていないフリをした。そこには“noteのネタのにおい”があった。
彼はしばらく躊躇ったのち、徐にそのヘッドホンを手にした。そして彼女に、
「バレずに取れたわ」
といった。
彼はてっきり私が外国人であると思ったのだろうが、それにしたって、日本から出るフライトに乗る外国人の中で日本語がわかる人がいる可能性には全く想像が及ばなかったのだろうか。私はその点を含めての彼のデリカシーのなさに苛立ちを覚えずにはいられなかった。
これがひとつ目の話。
そんな彼は彼女の横の席が空いていたのでそちらに移動し、私の隣は空席となった。フライト中ずっと私に向かって話しかけられる心配はこれでなくなった。
窓際に座っていた男性はあまり旅慣れていないようだった。黒いプリントTシャツとツバを後ろに回したキャップ、小太りの体型。30代と思われるが、もしかしたらもっと若いのかもしれない。
最初の機内食の配膳前に配られたメニューを穴が開くほど見ていた。そしてCAさんの「Fish or chicken?」の問いに、きっとその回答を頭の中で何度もシミュレーションしたのだろう、「Orange juice」と答えた。英会話レッスンでの発音のようだった。先生からは「Excellent!」と返ってくるような発音だった。ただ残念ながら、それはCAさんが求めていた回答ではなかった。CAさんが繰り返し同じ質問をしても、まだリスニングのクラスはちゃんと受講してなかったのか、うまく聞き取れないようだった。助けてあげようかとも思ったのだが、このも“noteのネタのにおい”につられて放置することにした。
彼はどうやらFishは聞き取れたようで、最終的には食事とorange juiceを手にすることができた。
食後に私は映画を観ることにした。友人が出演していて、前から観たいと思っていてDVDまで購入したのだが、観るタイミングを逃し続けていた。まさかターキッシュエアラインズの機内の映画リストに入っているとは思わなかった。
私が映画を観ている途中、窓際の彼が「ソーリー」と私に声をかけた。こちらの発音はきっと英会話の先生に訂正されるだろう。
お手洗いに行きたいようだったので、私は立って道をあけた。
通路に出た彼は、私に向き直って、両手を合わせてお辞儀をした。彼のそのお辞儀の仕方のせいだろうか、私はなんだか拝まれた仏像になった気分だった。いずれにしても、彼も私のことを外国人だと思っていたのだろう。
これがふたつ目の話。
7時間睡眠から目が覚めたところで、ちょうど朝食が配膳されてきた。CAさんは「Omelette or noodles?」と尋ねた。窓際の彼は例によって聞き取れなかったが、CAさんが「Japanese noodles」と口にした際、Japaneseは聞き取れたのだろう、「Japanese」と返してnoodlesをゲットしていた。
私はオムレツを選んだ。あまりお腹が減っていなかったので、半分ほど残してしまった。
私たちのエリアは男性CAさんが担当していたが、その少し前の席は背の高い女性CAさんだった。彼女の仕事ぶりをぼんやりと眺めていたが、あまり手際がよい方ではなさそうだった。同僚と会話しながら、ゆっくりのんびり仕事をするタイプだった。
彼女がお客さんと話しているのを見ていたら、彼女が笑顔が多いわけではないが、チャーミングな人であることが伝わってきた。私は彼女に、好感を抱き始めていた。
そんな矢先、彼女が押していたワゴンが私の座席にぶつかった。もし私の脚に当たっていたら相当痛かっただろうが、幸いにもぶつかったのは座席部分だけだった。
「Sorry, are you ok?」
彼女は私にそう尋ねながら、腕をさすってきた。
大丈夫だよ、と答えながら、私は、なぜ彼女が私の腕をさすっているのかがよくわからなくなっていた。と同時に、そんなに悪い気もしなかった。
彼女はなぜ私の腕をさすったのたろう。きっと彼女にしてみれば、咄嗟の行為だったはずだが、私はとても不思議な気持ちになった。そもそももしぶつかっていたとしたら脚だし。
さすさす…
これがみっつ目の話。
さて、あと1時間弱でイスタンブールに到着する。定刻通りのようだから、乗り換えも多分大丈夫だろう。
こんなふうに機内でネタを提供してくれた3人には感謝したい。おかげで到着後すぐにnoteをアップすることができる。よかった。
到着まであと少しだけ寝ましょうかね。今回も時差ボケには悩まされそうだ…
それにしても…なぜこんなにも、外国人に間違えられるのだろうか…
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